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生き方

調査でわかった「クラスで人気者の子」の親に共通する接し方

内藤誼人(心理学者、立正大学客員教授)

2024年09月19日 公開

調査でわかった「クラスで人気者の子」の親に共通する接し方

「親はなくとも子は育つ」ということわざもありますが、それはウソ。親というものは、子どもの将来に対して責任を持たなければならないもの。学校で人気者になれるかどうかも、大人になってから健康でいられるかどうかまで親の接し方やしつけの影響が大きいという。心理学者の内藤誼人氏が語る。

※本稿は、内藤誼人著『世界最先端の研究が教える新事実 対人心理学BEST100』(総合法令出版)より一部抜粋・編集したものです。

 

学校で人気者の子の親は、家庭でこう接している

親がどんな育て方をするかによって、子どもが学校で人気者になれるのか、なれないのかが決まってしまいます。

そう聞けば、おそらく読者のみなさんはビックリされるのではないかと思います。

けれども、これはれっきとした事実です。子どもは、ほかの人とどのように付き合えばよいのかを、親との付き合いによって学んでいきます。子どもにとって、親はとても重要な「見本」(モデル)なのです。親が子どもに対してものすごく厳しく、批判的な態度で接していると、その子どもは、親が自分にするのと同じようなやり方で、クラスメートと接するようになってしまいます。そのため、ものすごく嫌われる子どもになっていくのです。

逆に、親が子どもに対して絶えず笑顔を見せ、楽しいことを口にし、子どもが嬉しくなるような言葉かけをしていれば、その子どもは学校でほかの子どもに同じことをしてあげるようになります。したがって、そういう子どもはクラスでの人気も高くなるのです。

オランダにあるナイメーヘン・ラドバウド大学のマジャ・デコヴィックは、112名の小学生と、その両親を対象にした研究をしています。

まずデコヴィックは、クラスメートで最も好きな人の名前を3人挙げてもらいました。また、嫌いな子どもの名前もこっそりと3人挙げてもらいました。

それらを集計して、子どものクラスでの人気度を調べました。次にデコヴィックは、各家庭を訪れて、子どもと親の共同でパズルをやってもらいました。このパズルは7つのピースを組み合わせて図形を作るものですが、子どもにとっては難しい作業なので、親も手伝ってよいことになっていました。ただし、親は子どもに声をかけることは許されていますが、自分で触ってはいけません。パズルを触れるのは、子どもだけです。

このとき、親が子どもに「そうじゃないって言ってるだろう!」と厳しい声をかけたり、険しい表情を見せたりしたときには、「厳しい親」としました。逆に、やさしい笑顔で微笑みかけたり、子どもを笑わせるようなことを言ったりする親を、「受容的な親」としました。その結果、厳しい親の子どもはクラスで人気がなく、受容的な親の子どもはクラスでの人気が高い、という結果が明らかにされたのです。

自分がどんなふうに子どもに接しているかによって、子どもの人気が決まってしまうわけですから、もし子どもがクラスであまり人気がないのだとしたら、その責任は親にもあるといえるのかもしれません。子どもが学校で楽しく過ごせて、人気者になってほしいのだと思うのなら、親も子どもに対して、やさしく接してあげることが重要だといえるでしょう。

 

親のしつけが、子どもの将来の健康にまで影響する

親というものは、子どもの将来に対して責任を持たなければなりません。「親はなくとも子は育つ」ということわざもありますが、それはウソです。親のしつけというものは、子どもにものすごく大きな影響を及ぼします。

子どもが生まれたら、どうやって親として接すればよいのかという問題は、非常に、非常に、もうこれ以上ないというくらい非常に大切なのです。

米国アリゾナ大学のラセック・リンダは、1950年代にハーバード大学に入学した男子学生に、「あなたのご両親は、どのような養育態度であなたのことを育ててくださいましたか?」ということを思い出してもらいました。

それから35年後、大学を卒業した彼らがどれくらい心の病気にかかっているのかを調べてみたのです。すると、大学入学時点で、自分の両親が「愛情深く」「正しく」「公平に」「勤勉に」「強く」「知的に」育ててくれた、と回想していた学生は、35年後に25%しか高血圧、心疾患、胃潰瘍、アルコール中毒などになっていませんでした。とても健康的だといえます。

子どもの頃、親がそのような態度で育ててはくれなかったという学生は、35年後には、87%が何らかの病気になっていることがわかりました。

親の子育ては、将来の子どもが健やかな人生を歩めるかどうかに大きく関係していたのです。

親としては、自分の子どもが健やかな心を持った大人になってほしいと願うのは当然です。

だとしたら、ぜひ自分の子どもには、愛情をもって、正しく、勤勉に育ってくれるように促しましょう。

考えてみると、昔の日本人のお母さんたちは、みなそうやって子どもを育ててきました。

「悪いことをしてはいけません!」「一人でも生きていける強さを持ちなさい!」「勉強をサボってはいけません、お天道様が見てるからね!」などと厳しく育てたものです。もちろん、愛情を持ってのことです。

ところが、最近の親御さんたちは、子どもを溺愛はするのですが、甘やかして育ててしまうところがあります。子どもを愛するのと、甘やかすのは別次元の問題です。甘やかすだけでは、子どもは心の強さを持つことはできません。

イヤなことでも頑張って取り組む粘り強さや、心の強さについても、親として子どもにしつけるようにしましょう。そのほうが、子どもも大人になってから、親に感謝してくれるはずです。

著者紹介

内藤誼人(ないとう・よしひと)

心理学者/立正大学客員教授

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。[有]アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ。その軽妙な心理分析には定評がある。『人は「暗示」で9割動く!』(だいわ文庫)など、心理に関する著書多数。

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