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嫌な上司、給料の上がらない職場...「いつも不満をこぼす人」に見えていない一つの要因

大愚元勝(住職・慈光グループ会長)

2024年10月07日 公開

嫌な上司、給料の上がらない職場...「いつも不満をこぼす人」に見えていない一つの要因

「上司のせいで仕事がうまくいかない」「パートナーが家事をやってくれない」このように身近な人の言動にイライラすることはありませんか? 他人への不満が募っている状態は苦しいものです。どうしたら心のモヤモヤを解消できるでしょうか。書籍『自分という壁』より、住職の大愚元勝さんのお話を紹介します。

※本稿は、大愚元勝著『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』(アスコム)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「おいしくない食事」を食べ続けていないか

他人への不平不満を持ち続けることは、あなた自身のストレスにしかなりません。また、「あなたが不満を持っていること」を相手が知らなければ、ただ自分のなかで悶々としているだけなので、相手にとってはまったく関係のないことです。

「今の職場、上司が全然使えなくてありえない!」「うちの夫は(妻は)家事も育児もなにもやってくれない」「〇〇さんは、いつも自慢話ばかりで鼻につく」などと、つねに他人への不満ばかり言っている人は、いわば「おいしくないとわかっている食事をずっと食べ続けている」ようなものなのです。

本気で今の状況をなんとかしたいと願っているのであれば、不満に思っていることを相手にはっきりと伝えて改善できるようにしていくか、「おいしくない食事」から離れる、捨てる、あるいはあなた自身が割り切ることでしか変えることはできません。

また、多くの方が実感されていることだと思いますが、他人を変えるのは非常に難しいことです。使えない上司、頼りにならない夫や妻、感じの悪い友達にあなたの正直な気持ちを伝えるのは悪いことではありませんが、それによって劇的にあなたへの対応が良くなるということは、なかなかないでしょう。

お互いに「我」があるので、あなたが「こうしてほしい」と思っていても、相手には相手の「こうあるべき」があるわけです。改善が見込めないことに対して、あなたの大切な時間を費やしたり、心を消耗したりしてしまうのは、非常にもったいないことです。

不満の内容が軽いグチ程度であれば、人に話すことで発散できたり、気持ちを共有し合うことで仲間同士の絆を深めることにつなげられたりしますが、強い不満はストレスとなり心身を蝕んでしまいます。「どうにもならないこと」に心を消費してしまわないよう、離れる、捨てる、時には割り切るという判断をしていくことも大切だと思います。

 

「自分は正しく、相手が間違っている」が苦しみのもと

他人や周りの環境に対して不満を感じやすい人と、あまり感じない人がいます。その違いはどこにあるのでしょうか。

これは、「我」が強いことに原因があります。現代風の言葉であれば"エゴが強い"ともいえるでしょう。あらゆることにおいて「私は悪くない! あいつが悪い!」と考えてしまう。つねに「自分は正しい」と思ってしまっている状態です。この世で最も大切にされるべき「私」が不利益を被っている......。その現実を受け入れることができない苦しみですよね。

「私の常識からすると、あなたは道理を外れていて間違っている」

こういった思考に陥ってしまう人は、自分に対しての「貪(欲)」が強すぎるといえるでしょう。一生満たされることのない欲に毒されている状態なのです。自分は絶対に悪くないわけで、一方的に被害を受けたと感じてしまう。しかし、「悪いのは全部○○だ!」と言ったところで、それは責任転嫁にすぎなかったりします。

仏教には「知足」を大事にする教えがあります。"足"ることを"知"る―自らの分をわきまえて、必要以上に求めないということです。

不満は「我」という人間の基本的な欲求を刺激する感情なので、他人や周りに対して不満がありすぎる人の心は、ずっと苦しい状態のままになってしまいます。とらえ方の問題になるのかもしれませんが、自分は絶対に悪くないと思い込んでいるからこそ不満がどんどん増えていくともいえるでしょう。

たとえば、会社からもらう給料についての不満。「まだこれだけしか給料がもらえていない」と思うのと「会社が給料を全然上げてくれない」と思うのは似ているようで違います。「なぜ給料が安いのか?」という不満に対して、前者は自分の能力が足りていないのかもしれないと真摯に向き合っていますが、後者は自分の能力に原因があるとは1ミリも思っていません。

「自分は高い給料をもらえて当然の存在だ」

その勘違いに気づいていない。すなわち、無知であるということですね。もちろん、能力があり一生懸命に努力しているにもかかわらず、あえて安い給料で働かせているというブラック企業の場合はこの限りではありませんが、まずは「自分は本当に給料に見合う仕事ができているか?」ということを客観的に見つめ、自省することが大切だと思います。

業績不振により、「会社をリストラされた」という話は昨今よく聞かれます。「なんで私がリストラされなければいけないんだ?」と会社に対して強い不満や憤りを感じてしまう方が多いかもしれませんが、正確にいえば「会社があなたをリストラした」のです。

会社をクビになったあなたと、あなたをクビにした会社。本当の意味で不利益を被っていたのは果たしてどちらなのか? あなたが会社にとって本当に必要な人材であれば、リストラなどされなかったかもしれません。

厳しい言葉になるかもしれませんが、自分に対する自分の評価と、自分に対する会社の評価が、まったく違うことに気づいていなかった......その可能性も否定できません。

 

「他人の心」はどうにもできない

先ほどもお話ししたとおり、「自分から見えている自分」と「他人から見えている自分」のズレが、満たされない欲求を生み出してしまっています。

「あなたが自分をどう思っているか」ではなく、「他人があなたをどう思っているか」を知らなければ、この差を埋めることはできません。自分自身が無知であるがゆえに、自分にとっても残念な結果を生んでしまうのです。

本気で解決したいのであれば、誰に対する不満なのかを改めてしっかりと考えなければいけません。それが自分に対する不満であれば、向上心となって高みを目指していくことに利用しましょう。

しかし、それが他人に対するものであったとしたら、自分の「我」に端を発した不満でしかありませんので、捨てる、対象から離れる、割り切るなどの判断をしていきましょう。

自分のことは自分で努力できますが、他人のことは自分には努力できませんので、「どうしよう?」と考えたところで仕方がないですよね。どうにもならないことに不満を漏らす。その労力のほうがもったいないと考えて、あなたの心が楽になるように導いてあげましょう。

著者紹介

大愚元勝(たいぐげんしょう)

僧侶

佛心宗大叢山福厳寺住職。僧侶・作家・事業家・セラピスト・空手家と4つの顔を持つ。YouTubeのお悩み相談チャンネル「大愚和尚の一問一答」は、登録者60万人を超える(2023年10月現在)。著書に『自分という壁』(アスコム)などがある。

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