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「LINEの返事がそっけない!」 何に対してもキレる妻の表に出せない本音

濱田恭子(一般社団法人日本マインドワーク協会代表理事)

2024年10月01日 公開 2024年12月16日 更新

「LINEの返事がそっけない!」 何に対してもキレる妻の表に出せない本音

伝え方一つで、相手との関係性は大きく変わります。もし相手との意思疎通がうまくいっていないようであれば、お互いが意見を言う以前に「受け止める」ことができていないかもしれません。

日本マインドワーク協会代表の濱田恭子氏は、著書仕事がうまくいく人は「人と会う前」に何を考えているのか』にて、相手を尊重しながらもきちんと意見を言うスキルを紹介します。

※本稿は、濱田恭子著仕事がうまくいく人は「人と会う前」に何を考えているのか』(青春出版社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「意見を言う」前に「受け止める」

人と人との会話の根底には、「私を認めてほしい」という思いがあります。他者との関わりから得られる刺激のことを「ストローク」といいます。

ストロークは、アメリカの精神分析医であるエリック・バーン博士が提唱した交流分析という心理療法で重視されているもので、「あなたがそこにいるのを私は知っている」という"相手の存在を認めて行う働きかけ"のことです。言葉かけや態度によって相手の存在を認めて行う、すべての人との関わりを意味します。

直接体に触れるコミュニケーション、たとえば、肌に触れる、なでる、さする、殴る、つねるなどのほかに、言葉を交わすメッセージや、表情・動作・態度・声の調子など非言語のメッセージがあります。

私たちは誰しも相手の興味を引きたい、自分がこの世に存在していると確信したい、認められたいと願っています。他者からストロークを得るということは、その証ともいえます。相手から"反応"が得られれば、うれしいものです。

人は「自分の存在を肯定的に認めてほしい」がために、常にストロークを求めています。肯定的なストローク(プラスのストローク)とは、受け手が心地よく感じる言葉や態度による働きかけです。

一方、否定的なストローク(マイナスのストローク)とは、受け手が不快に感じる言葉や態度による働きかけです。ストロークがプラスかマイナスかを決めるのは、あくまでも「受け手」のほうであることがポイントです。

いくら自分がプラスのストロークを与えたつもりでも、受け手が不快に感じてしまったらマイナスのストロークになります。また、自分はそんなつもりはまったくなくても、何気なく言ったひと言や態度が、受け手を傷つけていることもあるかもしれません。

相手にプラスのストロークを与えたいと思ったら、相手をおもんぱかり、相手の気持ちを想像してみることを大切にしましょう。

「存在を認めてほしい」「反応してほしい」という思いが根底にあることによって、コミュニケーションのパターンが生まれます。それが「脅迫者」「被害者」「尋問者」「傍観者」であり、その関係性は凸凹(デコとボコ)で表されます。

あるクライアントの女性は、自分が家庭で尋問者(デコ)で、夫にデコっていたことに気がついたそうです。「夕飯は用意しておいたほうがいい?」「今日は何時頃に帰るの?」など、仕事中の夫にLINEを連発していたそうです。夫からの返信が短いと「そっけない」と言って怒り、長いと「要点がわかりにくい」と言って怒っていたそう。

あるとき夫からの返信がまったくなくなりました。問いただすと、「何を返信しても怒られるから、もう返信しなくてよくない?」と言われ、大ゲンカに。セミナーで学んだ彼女は、自分の本当の気持ちに気がつきます。いろいろな理由をつけて夫にLINEを送っていたのは、「自分が注意を払われていないこと」が寂しかったのだと。注意を引きたいから、デコる。相手は嫌になってボコる。

人とコミュニケーションをとるときに、表面に見せている言葉や態度に反応をしてしまうと、どんどん本質からズレていきます。目の前の人はただ"私を認めて"と言っているだけかもしれません。話の内容がどうとか、話の筋が通っているかどうかということより大事なのは、「相手に存在価値を認めてもらっているかどうか」ということが往々にしてあります。

言った、言わないはあまり意味がありません。それよりも、本当は何が言いたかったのか、相手はなぜそれを言うのか。それだけに集中したほうが、ラクに生きられますし、人間関係もスムーズになります。

 

「相手を受け止める」リアクションで関係が変わりだす

もう一つ、社長と部下がデコ同士だった例を紹介しましょう。

社長からの依頼でコンサルに入った会社で、社長と直属の部下のBさんがしょっちゅう言い争いをしています。ひと言でいうと、「雰囲気が悪い会社」でした。

社長からは「給料を払っているのに、いつも自分が否定されているように感じる。どうか教育してほしい」と言われましたが、部下のBさんのほうに話を聞くと、「何をしても否定される。話を聞きもしないで論破してくる」と言います。

Bさんから、「常に戦っている感じになってしまうので、社長との効果的なコミュニケーションのやり方を教えてください」と頼まれました。

私は「ものは試しなんですけど、社長が何か言ったら、とにかく最初に"はい、なるほど"と納得したふりだけしてください」と提案しました。これは、「あなたを受け止めています」というストロークを返すことを意味します。いったん受け止めたら、そのあとは思いっきり反論してかまわない、ただその前に受け止める、という作戦です。

実は、社長のほうにもBさんと話をするときに、いきなり畳みかけるように話をしないで、一拍置いて「なるほど」と言ってみてください、と提案していました。お互いにそのルールを徹底してもらったのです。

そうしたら、どうなったと思いますか。急に関係が変わったのです。まず、「急に耳が聞こえるようになった」と言いました。どういうことかというと、相手の話を一拍置いて受け止めるルールにした途端、相手の話を咀そ嚼しゃくすることができるようになったのです。「なるほど」と言うだけで、話しているほうは攻撃されていないと感じるため、話しやすくなります。

今まで二人はデコ同士でお互いに引くことができませんでした。だから、同じパターンを繰り返していたのです。でも、相手の話をいったん受け止めることで、展開が変わり、いい方向につながりました。いつものパターンと違うやり方はなんだろう?と模索してみることも、大切なコミュニケーションの方法です。

 

「問い詰める」質問から「安心感を与える」質問へ

上で紹介したデコタイプ、ボコタイプの組み合わせは社長と部下でした。このようにたいていの場合、上司がデコで部下がボコですが、逆のパターンもあります。

専務が「尋問者(デコ)」、社長が「傍観者(ボコ)」のケースです。専務は有能な方で、常に社長に確認していました。「今日のスケジュールはどうなっていますか」「誰と会うのですか」「手配はどうしたらいいですか」と。もちろん、専務は社長のために手配をしようとして確認しているわけですが、社長からすれば、まさに「尋問」だった(デコだった)のです。

そのため、社長は「傍観者」としてどんどんボコっていきます。つまり、情報を開示しなくなっていったのです。まるで夫の予定を問いただす妻と、家に帰りたがらない夫のような構図が、会社で繰り広げられていました。そこで、企業研修の際に、専務に「なぜ社長に次々に問いただしてしまうのか、理由を示しましょう」とお伝えしました。

専務には、社長の予定がわからないと、どう動いていいかわからない「不安」の気持ちが根底にあります。予定がわからないと、不備が生じて社長が困る。だから、確認しているのだということです。

ところが、今の伝え方のままでは、どんなに丁寧に聞いているつもりでも、受け取る社長のほうには、「いったい予定はどうなってるんだよ、ちゃんと言えよ!」というふうに聞こえます。

ポイントは最後に付け加える言葉。最後に「助かります」「ありがたいです」を付け加えることです。

「来週の予定を教えていただけると、会議室の予約ができて助かります」
「何時にお戻りですか?時間がわかると準備ができるのでありがたいです」

誰だって、尋問されるより感謝されるほうがうれしいものです。そして、なぜそれを尋ねられるのか理由がわかれば、気持ちよく答えることができます。

一方の社長のほうには、「責められているように感じたかもしれませんが、尋ねるほうは不安や恐れから確認しているのです。不安を払拭するように情報を与えてください」とお伝えしました。

社長がスケジュールを開示してくれるようになると、専務も根掘り葉掘り尋ねることはなくなりました。

この問題は「安心感を与える」ことだけで解決してしまいました。根底にあるのは専務の「不安」でした。その不安を払拭するだけでよかったのです。それだけで、複雑に見えた人間関係や、ギスギスしていた人間関係があっけなく変わってしまうケースがあります。これは職場だけでなく、家庭でも、恋愛関係でも、すべてに応用できます。

相手がとる不快な言動や行動。腹が立つ、うっとうしい、などと思うこともあるかもしれません。でもそのときに、「もしかしたら、相手は不安なだけなのではないだろうか」と想像してみるだけでも、関係性が改善するでしょう。

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