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生き方

ベストセラー作家・本田健「私たちは万能な神様のようにお金をあがめている」

本田健(作家/実業家)

2012年09月20日 公開 2023年01月05日 更新

本田健

お金と冷静につきあうには?

お金は、なんともとらえどころのない存在です。お金には、物を買うだけでなく、投資する、貯金する、外貨に換えるなど、いろんな使い方があります。

また、現金だけでなく、いろんな種類のお金が存在しています。昔からある金属と紙のお金や銀行預金。電子マネーだけでなく、インターネットで使えるポイントも、お金の一種だといえるでしょう。

江戸時代なら、普通の人にとってお金は今よりもっとシンプルなものでした。貯めておく以外には、物を買うしか使い道はありませんでした。

私たちがお金に関して戸惑うのは、現在のこうした多様性とともに、性質の違うお金が同時に存在しているからでしょう。たとえば、コンビニで使うお金と、ヘッジファンドで一瞬にして世界を飛び回る何千億ものお金は、どう違うのでしょう。

この2種類のお金がどう違うのかを上手に説明できる人は、なかなかいません。私たちは、稼いだお金を自分のできる範囲で、節約したり、増やしたり減らしたりして、一喜一憂しています。とりあえず貯金はしているけれど、投資には近づかないようにしている人も多いのではないでしょうか。

よくわからないことの多いお金ですが、ひとつだけ確かなことがあります。それは、だれもが「お金がもっとたくさんあったらいいのに」と思っていることです。

8歳の子どもから88歳の老人まで共通の思いかもしれません。ところが実際にいくらあればいいかと聞かれると、はっきりした数字を言える人は、ほとんどいないでしょう。

ある統計では、「年収があと20%増えたら生活が豊かになる」と、すべての所得層の人が答えているそうです。逆に言えば、年収が300万円の人も、500万円の人も、1000万円の人も、ちょっとずつお金が足りない感じがしているのです。

どうして、そんなことが起きるのでしょうか?

それは、私たちの収入が増えるにつれ、お金を上手に使わせる仕組みができあがっているからです。収入が増えれば、洋服、レストラン、車、住む場所が、増えた分に応じて、グレードアップしていきます。

それは、ふだん飲む紅茶の銘柄から、車や家に至るまで、すべてにおいて当てはまります。収入があまりないうちは、1000円の化粧品で満足していたのに、お金に余裕ができると、3000円、5000円、1万円の商品に目が行くようになります。

あなたのまわりを見渡してください。コンビニのレジ前から、電車、テレビ、新聞、雑誌の広告など、いたるところにお金を使わせる罠が潜んでいます。これでは、いくら収入が増えても、なんとなく足りないように感じるのは当然です。

 

お金にふり回されない生き方を! 

私たちは、お金を使わせるマーケティングにも踊らされていますが、お金そのものにもふり回されています。お金のことでイライラしたり、不安に感じたりして、自分らしさを失っています。

そうならないためには、ふだんから、あなたがお金に何を見ているかをよく分析しておくことです。私たちは、お金に本来の力以上のものを見ています。お金は、単なる金属と紙、あるいはデジタルの数字です。それなのに、私たちは、あたかも万能な神様のようにお金をあがめたててしまっています。

また、知らないうちに、私たちは、お金のせいで自分の心の平安を失いがちです。お金を節約するために無理をしたり、稼ぐために頑張ったりするのも、同じようなことでしょう。

残念なのは、お金のことがきっかけで愛する人を傷つけていることにすら、気づかなかったりすることです。自覚症状がないまま、お金がらみのことで、私たちは自分やまわりの人を傷つけているのです。

子どものころ、「何かを習いたい」と言ったときに、「ウチにはそんな余裕がない」とか、「どうせ、長続きしないんだから、お金の無駄よ」と母親にビシッと言われてショックを受けた人は、たくさんいると思います。

それがどれだけ悲しかったか、大人になった今は忘れてしまったかもしれません。しかし、じつは心の奥深くに、そのときの傷が残っていたりします。

それは、ひどいことを言ってしまった親も同じです。母親から涙ながらに30年前のことを謝られたという人がいました。言われた当人はすっかり忘れていたそうですが、厳しいことを言わなければならなかった親にとっても、その体験は、苦しく悲しいものなのです。

もし、お金がなくて、習いごとをさせてあげられなかったとしても、感情をマヒさせて、一方的に子どもをしかるのではなく、「ごめんね。パパもママも本当は習わせてあげたいけど、今は難しいの」と心から伝えることはできるでしょう。

そして、どれだけその子のことを愛しているかをしっかり伝えられたら、その子は習いごとができないことぐらい気にならなくなるでしょう。お子さんがいる方は、どうか気をつけてあげてください。

 

仕事は本来楽しいもの 

本書は、お金だけでなく、親子関係や仕事もテーマにしました。私は、青年会議所やロータリークラブなどの会合で講演させていただくことがあります。

そういう団体の会員のなかには、祖父母や両親がはじめたビジネスを受け継いでいる人がたくさんいます。講演後のパーティーで、「2代目で好きでもない家業を継いだ。いやいや仕事をしているので、いつやめようかと悩んでいる」という相談をよく受けます。いつもすごくもったいないと私は感じます。

親子代々受け継いできたビジネスの周辺には、いくつもの運命的な物語があります。ナイーゾのように、親子のあいだに流れるテーマのようなものをしっかり受け止められると、人生が奇跡的に変わります。私は、たくさんそういう例を見てきました。

同じ仕事をやるのでも、自分から望んでその仕事をやるのと、いやいややるのとでは、精神的にも、事業としても、まったく違った結果を生みます。

祖父母や両親がなぜそのビジネスをはじめたのか、想像してみてください。彼らがどういう気持ちで働いていたのか。そういうことを考えると、また違った角度から、今の仕事が見えてくると思います。

本書をきっかけとして、あなたが見失っているかもしれない、父親や祖父との絆を思い出していただけるとうれしいです。親子3代でビジネスをしていなくても、きっと、あなたのところに流れるものがあるはずです。それがなにかを理解して受け止められたら、彼らに心の応援団になってもらえるのです。

私は、「お金と幸せ」をライフワークのテーマにしていますが、それは祖父、父、私という3代の人生の結晶だと考えています。それは42歳で亡くなった実業家の祖父から、頑張ったけれど途中で自分を見失った父、そして私へと受け継がれました。

2人からもらったものは、現在私が「幸せに生きるすばらしさ」を発信する原動力となっています。もし、祖父が早くに亡くなっていなかったら、もし、父が頑張りつづけられていたら、私の人生は今とはまったく違ったものになったでしょう。今、私は、祖父と父からの応援をしっかり受け取っている感じがしています。

仕事は、本来楽しいものです。どういう経緯であれ、緑あって今の仕事をやっているわけですから、ぜひ楽しむ工夫をしてください。もし、楽しめない場合は、どこかのタイミングで仕事を変えるということも考えてみましょう。いずれにしろ、きっと今より幸せになれると思います。

 

 本田健 (ほんだ・けん)
 神戸生まれ。経営コンサルティング会社、ベンチャーキャピタル会社など、複数の会社を経営する「お金の専門家」。独自の経営アドバイスで多くのベンチャービジネスの成功者を育ててきた。育児セミリタイア中に書いた小冊子『幸せな小金持ちへの8つのステップ』(サンマーク文庫)は、世界中130万人を超える人々に読まれている。ベストセラー『ユダヤ人大富豪の教え』(だいわ文庫)をはじめとする著書は累計で500万部を突破した。
他の著書に『20代にしておきたい17のこと』『ユダヤ人大富豪の教えII』(以上、だいわ文庫)『ユダヤ人大富豪の教え ふたたびアメリカへ篇』(大和書房)『お金と人生の真実』(サンマーク出版)『読むだけでお金に愛される22の言葉』(フォレスト出版)などがある。

 

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