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生き方

ベストセラー作家・本田健「私たちは万能な神様のようにお金をあがめている」

本田健(作家/実業家)

2012年09月20日 公開 2023年01月05日 更新

ベストセラー作家・本田健「私たちは万能な神様のようにお金をあがめている」

自己啓発書作家の本田健氏は、作家デビュー10周年に『あなたのお金はどこに消えた?』(PHP新書)を上梓した。

同書のなかで、人々はお金に振り回され過ぎて自分を見失っていると指摘する。お金と上手く付き合うには、どのような思考が必要なのか。

本田健氏に、本の内容についてお話を伺った。

 

これからお金とどうつきあいますか?

この本『あなたのお金はどこに消えた?』は、私の作家デビュー10周年の節目にあわせて書きました。物語の構想は10年以上前からあたためていましたが、世の中に出すベストなタイミングを待っていたのです。

「お金と幸せ」という私のライフワークのテーマは、童話タッチの物語でお伝えするのがちょうどいいと考えました。なぜなら、お金について書こうとすると、現実的でいやらしくなったり、怖くなったりするので、パロディと風刺があったほうがうまくバランスが取れるからです。

本書の登場人物 (ゾウ) は、実際にいそうな感じのキャラクターにしました。

やる気のない3代目のパン屋のナイーゾ。癒し系ですが、夫としては、はっきりせず、奥さんは、ついイライラしてしまいます。前向きで明るいヤルーゾ。調子がいいけど、ちょっとうわすべっています。優秀だけど冷徹なトルーゾ。

いつも上から目線です。彼に会うとバカにされそうな感じがするかもしれません。ダメゾウのヘルーゾ。すぐ落ち込むけど、悩みがあったら、親身に聞いてくれそうです。

4頭の同級生は、ヘッジホント事件をきっかけに、それぞれの生き方を見つめなおすことになります。カネー村が心のふるさとだとしたら、3頭にとっては、ひさしぶりに戻ってくる場所です。

ナイーゾは、住みつづけているふるさとのすばらしさに気づいていません。物語が進むにつれ、4頭は自分がだれなのか、どう生きるべきかをそれぞれの形で見つけていきます。

私は、人生で起こるさまざまな事件は、自分を知るために起きていると考えています。そういう意味では、お金がなくなるという劇的な事件は、自分の生き方を見なおすのにふさわしい機会だと言えるでしょう。

この物語には、たくさんの象徴を盛り込みました。メンター的存在(優れた指導者、助言者)のアルーゾ。まだ小さいのに、知恵と勇気のあるエンゾー。愛を取り戻したイレーヌ。ここではそのすべてを解説できませんが、簡単に説明していきましょう。

 

どの生き方がいいのか? 

本書を読み進めていくうちに、自分がどう生きたいのかについて、考えはじめた人もいることでしょう。ポジティブに生きて社会的な成功をめざすのか、社会を恐れて、ビクビクして生きるのか。

他人を蹴落としてでも能率重視で生きるのか、社会不適応でダメ人間のレッテルを自分自身に貼って、落ち込んで生きるのか。

成長志向の人は、自分の生き方が悪いなんて想像したこともないでしょう。また、社会は怖いところだと信じている人は、それが絶対的な真実だと考えています。

効率を追い求めて生きている人は、回り道はダメだと思い込んでいます。自分はダメな人間だと思い詰めている人は、自分にも才能があるなんて信じられないかもしれません。

どのタイプも、自分が今見ていたり、生きている世界が正しいと確信しています。 

しかし、それぞれの立場から見える世界が違うように、真実はひとつではありません。私たちのだれもがヤルーゾ、ナイーゾ、トルーゾ、ヘルーゾに代表される4つのタイプの生き方のどれかにあてはまります。

そして、私たちの生活は、家庭でも職場でも、この4種類の力学の引っ張りあいのバランスのなかで、成り立っているといえます。滑稽なことに、それぞれが自分の生き方は正しいと感じているのです。成功したり、能率をよくすることだけが、人生のすべてではありません。また、自分が必要以上にダメだと思い込むのも、楽しい生き方ではないでしょう。

夫婦間、家族や会社でも、「自分の生き方は正しい」というエネルギーがお互いを傷つけています。その代わりに、お互いから学びあうこともできるはずですが、なかなか私たちは「自分は正しい」という罠わなから出ることができません。

効率や成長を求めすぎず、自己卑下せず、まわりと調和して生きることが幸せの秘訣です。そういう観点から見ると、両親、兄弟姉妹、夫婦や大切な友人は、人生のバランスを取ってくれるために存在していると考えることができます。

彼らとつながりたいという気持ちが、自分と相手とのバランスを取りたいという動機を生みます。そうやってお互いを感じあうような生き方ができないと、幸せもやってきません。

人間関係は幸せの源です。私はアメリカにいたとき、幸せの研究のスポンサーをしていましたが、教授たちからおもしろい話をたくさん聞きました。その結果、幸せは人間関係のなかにしかないと考えるようになりました。

どれだけ社会的に成功していても、お金があっても、「愛し愛される関係」がなければ、砂をかむような人生になってしまいます。どうやったら、愛のある関係を築けるのか、その鍵を手に入れた人は幸せです。

相手の立場に立って、なぜそのように感じるのか、考えるのかを理解することが、よい人間関係を築くための最初のステップです。

人間関係の力学に興味のある方は、拙著 『ユダヤ人大富豪の教え ふたたびアメリカへ篇』 (大和書房)をお読み下さい。このあたりのことが詳しく説明してあります。

 

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