
(写真:中山久美子)
イタリアと聞くと、陽気な人々、美味しいピザやパスタ、太陽の光を浴びて輝く、色彩豊かな街並み...。そんなイメージが思い浮かびます。実際、イタリアでのリアルな生活はどのようなものなのでしょう?
本稿では、トスカーナ州在住の中山久美子さんによる書籍『イタリア流。』より、「イタリア人のパスタへのこだわり」「普段の食事」についてご紹介します。
※本稿は、中山久美子著『イタリア流。 世界一、人生を楽しそうに生きている人たちの流儀』(大和出版)を一部抜粋・編集したものです。
パスタへのこだわり、週一のピッツァ
イタリア料理と聞いて、何を思い浮かべますか?
そう聞かれると、世界中の誰もが「パスタ」か「ピッツァ」と答えるでしょう。イタリア料理はそれだけじゃないよ! と思うこともありつつも、夫が料理で何か指摘する時は、決まってパスタ。私の作る料理には何も言わないか、「美味しい」とほめてくれるのに、パスタにだけは厳しいのです。
しかもソースの味うんぬんではありません。それは決まってパスタがアルデンテでないことに対してのクレームです。
50を過ぎて夫は糖質制限ダイエットを始め、パスタは週に2、3回しか食べなくなっても文句は言わないのに、その茹で加減だけは絶対に譲れない......。
来日時には和食を謳歌する夫ですが、シンプルなトマトソースのパスタを無性に食べたくなることが時々あるそうです。イタリア人にしては珍しくどんな料理も平気な夫でも、その発言にイタリア人のDNAを感じます。
もう一つのピッツァでは、味や質よりも頻度にこだわりを感じます。
わが家では自家製の天然酵母で作った生地を使い、毎週金曜日の晩にピッツァを作るのですが、生地がうまく膨らまずにあまり満足度が高くない時も。
しかしそれに対しては「これはこれで美味しい」と、とても寛容なくせに、生地を仕込むのを忘れたり、時間がなかったりして「今晩はピッツァできないのだけど」と言うと、「じゃあピッツェリアでテイクアウトしよう!」「あ、スーパーで26×38(夫が好きな市販品の冷凍ピッツァ)買ってこようか?」
こんなふうに、前のめりでどうにかしてピッツァを食べようとします。
私が作るピッツァを喜んで食べてくれますが、いやはや、ピッツァであれば基本なんでも良い、なんでも良いから週に一回は絶対に食べたいのでしょう。パスタの回数が減るのは我慢できても、週一のピッツァだけは絶対にやめられそうにありません。
そう考えると、イタリア料理を代表するのはやはり「パスタ」と「ピッツァ」。世界中の皆さんが連想するのは、あながち間違いではないようです。
手を抜く時はとことん手を抜く
天然酵母でパンを焼いたり、パスタを手打ちしていたりすると、さぞかし毎日手をかけた料理をしているのだろう、と思われることがあります。
いえいえ、そんなことはまったくありません!
やるときはやりますが、手を抜く時は抜きまくる、そんな日も多々あるからこそ、手をかけることもできるのです。
幸いイタリアでは甘い朝食なので、我が家では家族それぞれが自分の好きなクッキーを食べるだけ。
イタリアの中高生はお弁当なしでお昼の2時まで授業があります。夕方近くに食べる彼らのランチはパスタがほとんど。それさえも面倒な時や、長い夏休み中のランチは暑いこともあり、買ってきたサルーミ(生ハムやサラミなど)やチーズ、パテを並べて、パンと一緒に好きなものを食べてもらうだけです。
そして我が家の嬉しい味方は、日本から持ってきたそばやうどん。こちらも特に夏は大活躍で、茹でさえすればあとはつゆで食べるだけ! 良くて鰹節や海苔を添えるだけの素そば、素うどんで十分です。
あとあと楽をするために、詰め物の生パスタ、ミートソースや餃子も作る時は大量生産。小分けにして冷凍保存しておきます。その時は半日かかっても、いざという時に本当に楽なので、後々のためにここぞと頑張ります。
できるだけ手作りをモットーにしていても、混ぜるだけの市販品の手を借りることもあります。パスタソースは種類が豊富だし、夏はライスサラダの素に茹でたご飯を混ぜるだけ、という手も。
麺や米ばかりが気になったら、頼りになる肉屋さんへ。ハムやチーズを巻いた肉や野菜と調味料で和えてある肉は、フライパンで焼くだけです。
そして究極は冷凍ピッツァ! いろんなメーカーから種類も多く出ていて、けっこう美味しいのですよ。
日本のお母さんが苦労されているお弁当も、イタリアでは遠足などの時だけだし、何よりもとっても楽。なぜなら、それはハムとチーズを挟んだだけのパニーノだから!
イタリア在住の日本のお母さんでキャラ弁を作っている方がいましたが、基本ズボラな私は絶対に無理......都合の良い時だけ日本人となったり、ちゃっかりイタリア人化したり、罪悪感なく自分の楽なほうを選んでいます。