残業して帰宅する頃には、疲れ果てて家事もできない...そんな人は頑張りすぎているのかもしれません。デンマーク在住の日暮いんこさんによれば、生産性が高い国として知られるデンマークの人々は、「しないこと」を決めるのが上手だと言います。日々消耗しないための生き方について、書籍『幸せな国・デンマークでの気ままな生活 北欧、暮らしてみたらこんな感じでした』より紹介します。
※本稿は、日暮いんこ著『幸せな国・デンマークでの気ままな生活 北欧、暮らしてみたらこんな感じでした』(大和出版)を一部抜粋・編集したものです。
頑張らないことを決める
「あれもこれもやらなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」と自分を責めていませんか?
実は、あなたはすでに十分頑張っているかもしれません。『北欧時間』の出版後、多くの読者の方から感想をいただきました。その中で最も多かったのが、「もっと肩の力を抜いていいのだと気がついた」「 自分が長い間休まず、頑張りすぎていたことに気がついた」というものでした。
今、あなたが頑張りすぎているのなら、あなたに必要なのは何かを増やすことではなく、減らすことかもしれません。ついつい「なんで私は頑張れないんだろう」と思いがちですが、本当にそうでしょうか。よくよく考えてみれば、すでに毎日、本当にたくさんいろいろなことをやっていて、頑張りまくっている自分がいるはずです。
例えば、帰りの電車で、毎日英語の勉強をすると決めたのに、ついぼーっと過ごしてしまう、と自分を責めているとします。しかし、1日の仕事を終えたあと、本当にその気力が残っているでしょうか? むしろ、ぼーっとする時間を持つことで、帰宅後の家事をこなす力が生まれているのかもしれません。
自分の残っている気力や体力の量を、スマホのバッテリーの充電ゲージを確認するように、確認してみてください。「もっと頑張らないと、ダメな私」から、「私なりによくやれている」と自分を労われるようになるはずです。
私も以前は「とにかく、たくさんのことをもっと頑張らないと」ということばかり考えていました。ですが、デンマークでの生活を通じて、「どうすれば、やることを減らし、よりシンプルにできるか」を意識して考えるようになりました。
デンマークの人々は「しないこと」を決めるのがとても上手です。
例えば、仕事では意味のないタスクがある場合、すぐに話し合って淘汰し、サービス業でも過剰に働きません。日常生活でも、過剰な買い物をしない、SNSに執着しないなど、不要なものを削ぎ落としています。
これは怠慢ではありません。むしろ、本当に大切なことに集中して時間とエネルギーを使うためです。これこそが、彼らの高い生産性とメリハリのあるライフスタイルの基礎となっているように感じます。
あなたも「やらなきゃ」と思っていることを今一度見直してみませんか?
全部書き出してみて、ラベル付けしてみましょう。例えば、まずは「絶対にやるべきもの」、そして迷うものは基本「やらない」、そこまで思い切れないものは「ひとまず今月はやらない」、やめたいけどすぐにやめられないものは「ゆくゆくは手放す」と、ラベルをそれぞれつけてみてください。
やりたいこと、やるべきこと、できるのであればそうしたいものですが、毎日の気力と体力、そして人生の時間には限りがあります。大切なものを本当に大切にするために、そうでないものをやらない勇気を持つことは、あれこれチャレンジすることと同じくらい大切ですが、見過ごされがちかもしれません。
私自身、友人の「絶対にやらないと生活に支障が出ること以外は、全部やらなくていい」という言葉に励まされ、やるべきことや頑張りたいことをどんどん減らしました。すると、頭がスッキリしてストレスが減り、「本当にやりたいこと」に以前よりずっと前向きに、そして生産的に取り組めるようになりました。
やることを厳選するのは、最初は不安を感じたり、不自由に感じるかもしれません。しかし、「あまり大切ではないけれど、なんとなくやっていること」に縛られるよりも、あらゆる面でずっと自由になれると私は感じています。
夏休みは何週間取る?
6月ごろになると、世間話として、天気の話(春であれば「もうすぐ夏が来てもいいのにまだ肌寒いね」、夏は「やっと夏が来て嬉しいね」、秋は「夏が終わっちゃったね」、冬は「毎日暗くて夏が恋しすぎる!」、という内容が語られることが多い)と同じくらい、夏休みは何週間取り、どこで何をするかが話題に上ります。
デンマークには長い夏休みがあります。労働者は年間5週間(25日間)の有給休暇を取得する権利があり、このうち、夏休みとして、だいたい3週間ほど連続で休暇を取ることが一般的です。
日本でも、祝日を合わせるとほぼ同じ日数の休みがあるようなのですが、1〜3日の休みだと、どうしても、仕事のことが頭の片隅から離れない気がします。その点、3週間も休めば、じわじわと仕事のことを考えなくなっていきます。この「仕事のことを一切考えない時間」を最低でも年に一度は取り、心身ともにリフレッシュすることが広く重視されています。