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「雑用は新人の仕事」の常識は通じない 地道な作業を嫌がる若手への接し方

ひきたよしあき(コミュニケーション コンサルタント)

2025年04月07日 公開

「雑用は新人の仕事」の常識は通じない 地道な作業を嫌がる若手への接し方

明治大学や早稲田大学などで述べ1万人以上のZ世代の指導に関わり、300以上の企業や行政機関でコミュニケーションスキルを教える「伝え方のプロ」である、ひきたよしあきさん。ひきたさんによれば、若手を動かすカギとなるのは、リーダーの「伝え方」だといいます。

本稿では「地道な作業や雑用を嫌がる若手」への伝え方を、書籍『若手はどう言えば動くのか? ~相手を「腹落ち」させたいときの伝え方~』よりご紹介します。

※本稿は、ひきたよしあき著『若手はどう言えば動くのか? ~相手を「腹落ち」させたいときの伝え方~』(日経BP)を一部抜粋・編集したものです。

 

「経費処理は人を観察する仕事。必ず武器になる」

●地道な作業や雑用を嫌がられます
→「雑用に隠された本当の意味」と「メリット」を語ろう

地道な作業や面倒なタスク、雑用などは、「つまらない上に身につくものが少ない仕事」と判断されがちです。若い人に地味な作業などを任せたいときに、「こうした雑用は新人の仕事だ」という、上意下達の態度を取っては絶対にいけません。彼らのなかには、「この会社で得られるスキルはできる限り身につけて、3年後の転職に備えよう」などと考えている人もいるからです。

「雑用は新人の仕事」は、定年退職まで同じ会社で働くことを前提にした言葉のように感じられて、全く納得できないでしょう。

では、どう言えばいいのでしょうか。

地道な作業や面倒なタスク、雑用をやってもらう声かけは、

仕事の隠された意味(相手の隠れた欲求を満たす内容)
仕事のメリット(この仕事で身につけられること、得すること)

を組み合わせていくことです。

以前働いていた会社に、社員の乗ったタクシー代の精算や経費処理を積極的にこなしている経理担当の女性がいました。経費処理というと、地味で退屈な作業だと考える人もいるかもしれません。

しかし、彼女は経理担当になったばかりの頃、当時の上司から、「 経費処理はお金を見る仕事ではない。人がどのようなお金の使い方をするかを観察する仕事だ。お金の使い方には人の性格が出る。お金を通して、社内の人間を観察すれば、君が次の仕事に移るときに必ず武器になる」と言われたそうです。

彼女の上司は、

● 経費処理は、人を観察する仕事 ( =この仕事に隠された本当の意味)
● 人間観察は、次の仕事の武器になる( =この仕事をやるメリット)

を語ったわけですね。

これを、地道な仕事や面倒な作業を若手に頼むときに応用していきましょう。

【例1】
「この資料整理は、あなたのタイパを上げるトレーニングだと思ってほしい(仕事に隠された本当の意味)。いかに効率的に作業を進められるかを考えながらやれば、今後どんな仕事が来ても、『効率重視』を最大限に生かして対応できる( 仕事をやるメリット)」

【例2】
「ただ単に、みんなのスケジュール調整をしてほしいと言っているわけじゃない。この作業を通して、新人のあなたの名前と顔を売るのが目的だ(仕事に隠された本当の意味)。あなたの存在感を高めておくことは、何をやるにも人間関係をスムーズに運ぶようにする秘訣なんだ( 仕事をやるメリット)」

ただの「雑用」ではなく、この雑用の「隠された意味」と「具体的なメリット」をセットで語る。これくらいきめ細かく、雑用や面倒な仕事をする意義を伝えることが大切なのです。

 

「隠された意味」は、相手によって変わる

ここまで読んできた方は、「そうは言うけど、『隠された意味』を見つけるのが難しいのでは」と思われたのではないでしょうか。「雑用はただの雑用。隠された意味なんてあるのか??」と悩んでしまう人も多いかもしれません。少し解説をしておきます。

「 隠された意味」といっても、その仕事の「本質」とか「真の意味」というような哲学的な話ではありません。私たちの目的はあくまで、「言葉の力」で相手に行動変容を起こすことです。

だから、「隠された意味」は、相手によって変わります。例えば、子どもが英語の勉強をする「隠された意味」を考えてみましょう。その子が引っ込み思案で悩んでいたら、「英語を学ぶっていうのは、世界中の誰とでも話せる度胸をつけることだ」と言う。

また別の子が、友だちが少ないことを気にしていたら、「英語を学ぶっていうのは、日本ばかりを相手にせず、世界に友だちをつくることなんだ」と言ってあげる。

つまり、相手の様子を見て、「この部分が自分に足りていないと思っているだろうな」「こんなところを変えたいと思っているだろうな」と思われる点を探すのです。

今の部署が面白くないと思っている人には、「この仕事は、この部署以外の考え方を知るもの」、仕事に自信がない人には「小さな成功を重ねるきっかけ」、承認欲求の強い人には、「あなたの実力をみんなに知ってもらうこと」といったように、さまざまに変化していきます。

世の中全体が、「なんのためにこれをやらなければいけないのか」「私にどんなメリットがあるのか」などを追い求める時代であることを意識して、丁寧に語りかけてください。きっと、若手は動いてくれます。

 

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