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経緯を払っているのは「立場や肩書」であって「あなた」ではない

吉越浩一郎(元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長)

2012年11月13日 公開 2022年12月01日 更新

経緯を払っているのは「立場や肩書」であって「あなた」ではない

出世のチャンスを掴むために、社内でどう立ち振る舞うべきか。また、この先10年を生き残るビジネスマンになるにはどういった行動が必要か。元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長の吉越浩一郎氏が、リーダーとして成長する為の心構えを語る。

※本稿は、吉越浩一郎著『[図解]なぜか仕事がうまくいくリーダーの習慣41』(PHP研究所)より、内容を一部を抜粋・編集したものです。

 

なりたくなくても社長をめざしたほうが面白い

会社という組織に入ったからには、そのいちばん上のポジションである社長になる気概をもちたいものです。

最近は、いろいろな理由で出世を拒む人もいるそうですが、なんともったいないことか。会社で出世するということは、それだけ多くの権限を手に入れられるということであり、自分の思うように物事を進められるということです。

新しいことにも、より大きなチャンスに挑戦することもできるでしょう。そうした機会をみすみす見逃すなんて私には到底考えられません。

当然ながら責任は大きくなります。しかし、それを重圧と感じるのではなく、爽快と感じるくらいであってほしい。仕事をゲームと考えれば、新しいゲームやより強い相手との戦いが面白くないはずがない。

会社において権限と責任が最大になるのが社長です。私自身、社長を経験した実感を述べれば、それは、なにものにも代えがたい貴重な体験であったし、充実感や満足感を十二分に味わった日々でした。世の多くの社長がその座をなかなか譲らないのは、それだけ仕事がおもしろいからです。

私も、できればもっとフリーなオーナー社長をやってみたかった。それだけ社長というのは魅力的な仕事なのです。

 

出世競争は誰にもメリットがない

だからといって、同僚を蹴落として出世しようとするのはエゴイズムでしかありません。足の引っ張り合いで会社がよくなるわけがありませんし、派閥争い、権力闘争など不毛の極みです。

会社において競争する相手は同僚など他人ではなく自分自身なのです。自分が競争している相手は自分であり、同僚が競争している相手は同僚自身なのです。

会社はその結果を比較しているのであって、決してあなたと同僚を競争させているわけではありません。その昔、営業成績を棒グラフにして競わせていた時代がありましたが、それも自分自身との競争の結果と考えれば、成績の良い同僚を素直にほめることもできるはずです。

同期のなかから選ばれていち早く昇進したい、あいつに負けたくないという気持ちはわかりますが、同僚というのは敵ではなく味方。一緒に戦っていく戦友なのです。

高いポジションに就いたときに注意したいのは、敬意は自分に払われているのではなく、その立場や肩書きに対してだということ。その立場を離れて権限を失った瞬間に、同じ敬意は払われなくなります。これは上に立つと勘違いしやすいので、ぜひよく覚えておいてください。

【 リーダーならこう考えよう!】
せっかくチャンスが与えられたなら、逃げるのではなく、真っ向から挑みたい。「失敗したらどうしよう」などと考える必要はない。失敗しても成功しても多くを学べるのだから損はないのだ。過去の自分に勝つためにも高い地位をめざせ。

変化に対応できる人が生き残れる(吉越浩一郎)

 

これから10年、身につけておくべき力

ほんの10年ぐらい前までなら、ある会社に入社すれば一生そこで働く可能性も高くありました。だから、その会社の社風や文化に慣れ親しみ、独特の仕組みややり方を覚えながら実力を発揮していくことが重要でした。

しかし、今は違います。どんな大企業であっても、経済環境の急激な変化に対応できなければ倒産します。倒産しないにしても、ライバル企業に飲み込まれて傘下に組み込まれたり、外資系企業に買われたりする企業が増加しているのは、みなさんご存じのとおりです。

自分が転職を希望しなくても強制的に転職させられる、転職しなくても会社が大きく変わってしまう、そんな人が増えるのは間違いありません。

私は、自ら変われない組織が外部圧力によって強制的に変革させられるというのは致し方ないというよりも、むしろ社会全体としては良いことだと考えています。

 

自分の価値、魅力はなにか?

とはいえ、運悪く自分が働いている会社が倒産してしまったり、買収されたらどうするか。そうなってから動きだしたのでは遅すぎます。

事前準備として求められるのは、その会社だけで通用する能力ではなく、普遍的な実力をつけておくこと。たとえば、資格をとる。公認会計士、それもアメリカのCPA資格をとるとか。

営業であれば、A市場でBという施策によりC商品の売上をX年でY倍にしましたといった具体的な数値をともなった実績。開発系であれば、開発したD商品やEサービスの特徴や斬新さとともに、売上金額や利益率、利用者数といった実績。

こうした一般的に認められる実力があれば、他社もその人材に魅力を感じますが、単に百貨店チャネルで女性下着の営業をやっていましたでは難しい。

百貨店との取引知識や人的なコネがあったとしても、百貨店自体の地盤沈下が激しいですから、その価値、魅力は乏しいですし、女性下着の知識は普遍性がないので他業界で活用できる能力ではありません。

普遍的な実力をつけるための心構えとしては、いつでも独立できる意識を常にもつこと。放り出されるドロップアウトではなく、自ら飛び出るスピンアウトをめざします。

そのためには自ら学び習う姿勢が大事ですし、自分よりもできる人のやり方をよく見て真似して盗むことも大切です。

暗黙知の知識や技術をどれだけ実践で身につけたか。それが問われるのです。

【 リーダーならこう考えよう!】
会社内の内部評価ばかりに気をとられてはいけない。本当に大事なのは普遍的な評価だ。「この実績は他社でも認められるか」「この能力は他の業界でも通用するか」。そんな視点で自分の実績や能力を再評価すると不足しているものが見えてくる。

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