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優秀なリーダーが共通して持つ「ある特徴」 調査で明らかになった事実とは?

越川慎司(株式会社クロスリバー代表取締役社長)

2025年10月09日 公開

優秀なリーダーが共通して持つ「ある特徴」 調査で明らかになった事実とは?

越川慎司さんはマイクロソフトの業務執行役員を務めたのち、現在はクロスリバー株式会社を設立。これまでに800社以上の業務改善や働き方改革を支援してきました。著書『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』では、マイクロソフトCEOサティア・ナデラ氏とのエピソードや、優れたリーダーに共通する特徴についても語られています。

本稿では、「優れたリーダーとはどんな人物なのか」を越川さんに話を伺いました。

 

できるリーダーは「もちろん」で返す 

――書籍『できるリーダーの基本』には、優秀なリーダーは、「偶然の会話」を引き寄せるための戦略として、フリーアドレスでは少し奥まった場所や壁際に座ることが調査でわかったと明かされていました。これには驚きましたが、他にも優秀な人が共通して持っている特徴があれば教えてください。

【越川】できるリーダーの共通点は、実は「仕事」よりも「人」に興味を持っていることです。メンバーに対して強い関心を持つ。逆にうまくいっていないリーダーは、矢印が自分に向いてしまっています。「俺は忙しい」「俺の話を聞け」という状態ですね。

人は相手に興味を持つと、会話の接点を探そうとします。その接点は、物理的に近いほうが生まれやすいこともわかっています。たとえば「いつでも相談して」と言っても、実際には相談してくれないことが多い。ならば、隣とはいかなくても近くに座って様子を見てみる。そうすることで会話のきっかけが生まれます。

調査では、優秀なリーダーは週に平均2.5回以上「今ちょっといいですか」と声をかけられていました。メンバーに興味を持ち、物理的にも近づくことで、相談される環境を自然につくっているのです。

――意識的にでも、相手に興味を持つことが必要なんでしょうか。

【越川】そうですね。目の前の業務だけをこなしていてもチームの目標は達成できません。まだ開花していない能力をどう見つけ出してあげるかが、自走する組織づくりにつながります。統計的にも、他人に関心を持ちやすい人ほど成果を出していることがわかっています。

――最近は出社が増えて「今ちょっといいですか」と部下に声をかけられる回数が増え、業務が大変になったという話も聞くのですが...。

【越川】これについては3つのステップで考えていきます。

まず最悪なのは、相談したいのに相談できない状態。相談できずに問題を抱え込んでしまうので、コンプライアンス問題を招きやすく、組織として最も危険です。だから忙しくても「声をかけられる状態」であること自体は間違っていません。

2つめのステップは、声をかけられる回数をどう減らすかです。本来なら「まず自分で考える→やってみる→それから聞く」の順が理想です。「いきなり管理職に聞く」のは組織としてあまり正しくはないですよね。時計を見れば分かるのに「部長、今何時ですか」と聞くのは失礼じゃないですか。

「これってどうやればやればいいんですか」と聞かれても、部長にしてみれば「それ社内ポータルに書いてあるよ」ってことですよね。でもそれを頭ごなしに否定するとコンプライアンス問題が起きてしまいます。

そこで優秀なリーダーが行っているのが、「反応」と「決定」を分けることです。「今ちょっといいですか」と声をかけられたら、できるリーダーが言うのは「もちろん」の一言だけなんですよ。

まずは一言「もちろん」と返す。そのあとで決定、つまり代替案を言えばいいのです。「社内ポータルに書いてあるよ」とか「明日でもいい?」、「吉田さんに聞いてみて」と代替案を示すのです。

これを分けずに「そんなことも分からないのか」と頭ごなしに言ってしまうと、部下は萎縮して二度と相談しなくなります。関係を維持しながら自分で考える力を育てる。そのために「反応」と「決定」を切り分けるのが有効です。

 

これまでに出会った「すごいリーダー」

――越川さんはこれまでに多くのトップリーダーと出会ってきたかと思いますが、特に「この人はすごい」と感じたエピソードを、ぜひ教えてください。

【越川】私が「この人はすごいリーダーだな」と思う人には共通点があります。

1つ目は、任せてくれる人です。これはつまり「信頼されている」ということですよね。

マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏の言葉で、私が一番感銘を受けたのは、彼がまだ社長になる前、副社長時代の発言です。アメリカ本社で「もっとローカルに出よう」と言ったんです。映画でいうと「事件は会議室で起きていない、現場で起きているんだ」ということ。つまり「現場にもっと権限を与えよう」という意味です。

この発言が、各地域の人たちにどれだけ勇気を与えたか...誰もが「信用されている」と感じたはずです。裏でコソコソ決めるのではなく、権限を手放す――その勇気に強く感動しましたし、のちに彼が社長になった時は、本当に良かったなと思いました。やっぱり「任せられるリーダー」こそすごいリーダーだと思います。

2つ目は、人前で褒めるリーダーです。例えば、マイクロソフト在籍時の上司は、人前で「越川さんはこれまでに来たメンバーでベストだよな」と言ってくれました。盛ってくれている部分があるとは思いますが(笑)、そう言ってもらえると、1対1で褒められる以上に嬉しいものです。

その場では恥ずかしいですけど、人前で褒められることでモチベーションはすごく高まります。手放す勇気と、人前で褒める力――この2つを持つ人が優れたリーダーだと思います。

 

著者紹介

越川慎司(こしかわ・しんじ)

株式会社クロスリバー代表取締役社長

2005年に米マイクロソフトへ入社し、後に日本マイクロソフトの業務執行役員としてPowerPoint、Excel、Word、Microsoft Teamsなど、主要プロダクトの事業責任者を歴任。

2017年、株式会社クロスリバーを設立し、全メンバーが週休3日制と複業(専業禁止)を実践する独自の働き方で、これまでに800社以上の業務改善・働き方改革に携わる。教育者としても活動し、京都大学大学院をはじめとする教育機関で教壇に立つ一方、年間400件を超えるオンライン講座を展開。受講者満足度は平均98%を誇り、学んだ内容を実際の行動に移す受講者が95%を超えるなど、確かな成果を上げている。

著書は直近8年間で32冊に上り、『仕事の「ムダ」が必ずなくなる 超・時短術』(日経BP)や『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は海外でも翻訳・出版されベストセラーとなる。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」ほか、多数のメディア出演実績を持つ。数字に裏打ちされた具体的なノウハウと豊富な実績を基盤に、組織と個人のパフォーマンス最大化を支援し続けている。

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