チャンネル登録者数250万人を誇る、日本一のヨガYouTuber・B-Flow。企画・撮影・編集を担当するトモヤさん、美しいポーズで多くのファンを魅了するマリコさんのご夫婦で運営しています。2016年、二人とも無職の状態から、手探りで配信をスタート。当初はヨガではなく、「バレトン」というエクササイズの動画だったそうですが......。
※本稿は、B-Flow著『今この瞬間をどう生きるか 日本一のヨガYouTuber夫婦が歩んできた道、そしてこれから』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集したものです。
横ばいだった再生数に小さな兆しが
2016年4月に最初の動画をアップしてから2カ月後。
私たちのチャンネル登録者数は、ようやく77人になりました。
「ゾロ目で縁起がいいね」と笑い合ったのを覚えています。
ある夜のことでした。長女を寝かしつけ、キッチンではマリコが離乳食の下ごしらえ中。私はパソコンに向かって、YouTubeの「アナリティクス」という、再生回数やコメント数などのデータを確認できるページを開いて、数字をチェックしていました。
バレトン動画のグラフは、初日こそ小さな山を作るものの、その後は横ばい。
ところが、この日アップしたヨガ動画のグラフは違いました。
ゆるやかだけれど、確実に右肩上がり。
コメントや「いいね」の数も、倍以上に伸びています。
これは偶然かもしれない。
たまたま検索に引っかかっただけなのかもしれない。でも......ヒットの兆しかもしれない。
胸の奥に小さな火が灯るのを感じました。試しにヨガ動画をもう2本出してみると、やはり同じように伸びていきます。
「ヨガを中心にしてみるのはどうかな?」
3本目のデータを見た翌日、私はマリコに切り出しました。
「うーん......私はバレトンのほうが得意だし、喜んでくれる人も多いよ」
すぐに結論は出ませんでした。
そこで、私は提案してみました。
「じゃあ、ヨガとバレトンを交互に出してみない?皆さんがどっちを楽しみにしてくれているか、わかるんじゃないかな」
週1本だった配信を週2本に増やし、バレトンとヨガを交互に続けました。
半年が過ぎた頃、傾向が見えてきました。再生回数もコメント数も、登録者数も、ヨガが大きく上回っていたのです。登録者は1万人を超え、あのときの予感が確信に変わっていきました。
さらに、視聴者の方から届くメッセージが、マリコの気持ちを動かしていきました。
「リラックスできる時間が増えて、薬に頼る日が減りました」
「ジムは三日坊主だったけど、オンラインなら続けられます」
「5分のヨガでも続けていたら、体力がついてきました」
こうした声は、マリコがフィットネスジムでインストラクターをしていた頃には、ほとんど耳にしなかったものでした。
ジムに通えるのは、基本的に健康な人たち。でも画面の向こうには、体調が優れない人、人と運動するのが苦手な人、時間が取れない人、近くにジムがない人......さまざまな事情を抱えた方がいました。
「産後ママだけじゃなくて、誰もがそれぞれ悩みを抱えている。そんな人たちの力になれるなんて、本当に嬉しい」
そんなマリコの言葉に、私もうなずきました。
こうして私たちは、ヨガを中心に「誰かの悩みを解決できる動画」を作ろうと決めました。
どうせやるなら、誰かに喜んでもらえることを。「ありがとう」と言ってもらえることを。そう心をひとつにした瞬間でした。
「ダイエット」「疲労回復」......人気のキーワードに合わせて一つずつ
「B-Flow」の動画は、今では880本以上あります。
「よくこんなにたくさん考えられますね」と驚かれることもありますが、最初からすべてオリジナルだったわけではありません。実はヨガ動画も、最初は海外のお手本を真似るところから始まりました。
バレトンからヨガをメインに切り替えたのは、2017年1月頃のこと。
当時すでに海外には、不調を抱えた人が「マイナスからゼロ」に戻れるような、視聴者の立場に立ったヨガ動画が数多くありました。まずはそうした動画を参考にしながら、自分たちでも取り入れてみることにしました。ただ、多くの人に見てもらうためには、そのままではなく、少し工夫を加えることが必要でした。
まず取り組んだのが「検索キーワードを潰していく」ということ。
YouTubeでヨガを検索するとき、多くの人は「ヨガ 初心者」「ヨガ リラックス」「ヨガ 腰痛」など、ヨガの後に関心のある言葉を付けます。
「ダイエット」「疲労回復」「肩こり解消」「脚のむくみ」......キーワードは無数にあります。これらを分析して、人気のキーワードに合わせたレッスン動画を一つずつ作っていきました。こうすることで、動画が検索結果の上位に表示されやすくなるのです。
私たちは、大きなバズを狙うのではなく、悩みを抱える人の役に立つ動画をコツコツと作っていきました。初心者や体が硬い人には、難しいポーズを「簡易ポーズ」に置き換えて紹介するなど、できる限り取り組みやすくする工夫も心がけてきました。
数字というのは、視聴者の行動の足跡のようなものだと思っています。
どの場面で集中して見てくれたのか、どの場面で離れてしまったのか......"現実を映す鏡"のように教えてくれるのです。
一方で映像には、作り手が込めた思いや工夫がそのまま残ります。
「この場面は少し長めに見せたい」「ここで音楽を入れて気持ちを高めたい」といった演出や、「朝日を背景に撮ろう」というロケーションの選び方まで、すべてがその人らしさを映し出すのです。
数字ばかりを追いかけても人の心は動きませんし、逆に映像だけを大事にしすぎると、現実から離れていってしまいます。
「なぜ見続けてくれるのか」「なぜ離れてしまうのか」には、必ず理由があります。
その理由を数字で確かめながら、映像で心を届ける......この両方を意識して初めて、YouTubeで結果がついてくるのだと思いました。
だからこそ、私たちは得意分野を活かしながら分業してきました。
私はトレンド分析から企画・撮影・編集までを担当し、マリコはオリジナルレッスンの考案とナレーションを担当。
二人とも、「ここまでやれば十分」という妥協ができないタイプです。
マリコは良いレッスンをするために、毎日5〜10キロ走って体調を整え、ヨガの勉強を欠かしません。自分のインストラクションを録画で見直し、口癖まで修正します。私はより美しい映像を撮るために、撮影や編集の勉強を続けてきました。
こうした積み重ねが、きっと視聴者の方にも伝わったのでしょう。
ヨガにシフトした2017年1月、登録者は1万人でしたが、1年後には15万人くらいに増えていました。








