ヨガYouTuberとして、日本一のチャンネル登録者数を誇るB-Flow。インストラクターのマリコさんと、企画・撮影・編集を担当するトモヤさんのご夫婦が二人三脚で営むチャンネルです。人生の成功者を目指していたトモヤさんは「私は、夢なんかない」と語るマリコさんに驚きます。しかしヨガを学び、マリコさんと過ごすうちに、次第に見えてきた「幸せの定義」とは。
※本稿は、B-Flow著『今この瞬間をどう生きるか 日本一のヨガYouTuber夫婦が歩んできた道、そしてこれから』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集したものです。
思うようにいかなかったのは、成功することばかり考えていたから
若い頃の私は、「ビジネスで成功すること」こそが人生の目標でした。
大学卒業後、自衛隊のパイロット試験に合格したものの、花粉症で失格。就職したITベンチャーも倒産寸前になり、2年で退職。その後は米国公認会計士の資格を取り、語学留学をして、外資系企業でキャリアを積む......それが成功への近道だと頑張ってきました。
でも、マリコと出会ってから、私の「幸せの定義」は変わったのです。
付き合い始めた頃、お互いの夢について語り合ったことがありました。
マリコは「私は、夢なんかない」と言いました。何度聞いても、「特に欲しいものもないし、今のままで満足してる」と言うのです。
最初は不思議でしたが、そのうちわかってきました。マリコにとって未来は「今の延長線上」にあって、大切なのは「今を精一杯生きる」ことなのだ、と。
ヨガの哲学である「八支即」でも、「今に集中し、心が定まっている状態」を最も大切にしていて、まさにそれを体現していたのです。
留学先のカナダでヨガと出会い、心身がひとつになる爽快感を感じてはいたものの、ヨガの哲学にまで踏み込んでいなかった私は、「ヨガ=ポーズ」というだけでなく、「ヨガ=生き方」としても惹かれていくようになりました。
「誠実に生きる」「足るを知る」といった価値観が仏教と似ていることも、私にはしっくりきた理由のひとつです。
マリコと結婚した後、私は投資関係のビジネスを起業しようと会社を退職しましたが、思うようにはいきませんでした。それは、「新しいことに挑戦するなら、お金になるビジネスをやらなくては」と、成功することばかり考えていたからだと思います。
「やりたいこと」を探すとき、お金と結びつけて考える人は多いと思います。
私もそうで、「アナリストとして数字を読むのが得意だから、それをビジネスにしよう」と考えただけでした。
でも、日本のYouTube黎明期を盛り上げたHIKAKINさん、はじめしゃちょーさんは、お金を稼ぎたいからYouTubeを始めたのではなく、面白くて楽しいことを発信したくてやっていただけなんじゃないかと思うんです。
やがてGoogleが広告をつけるようになったから、たまたま稼げるようになった。
ある意味では、SNS時代を先取りしていたとも言えるのですが......。
「お金になるからやる」のではなく、「好きだから、楽しいからやる」「チャレンジしないと後悔するからやる」と考えるほうが幸せな生き方ができるのではないか。
そう思えるようになったのは、マリコの姿を見てからです。
バレトンやヨガをしているだけで心から幸せそうな彼女を見て、「私もこうありたい」と思いました。
そこで、お互いに「何ができるか」「何を持っているか」を見つめ直し、自分たちにしかできないことをやってみようと始めたのがYouTubeでのオンラインレッスンでした。
1年間やって、モノにならなかったらサラリーマンに戻る、と決めていましたから、最初の1年は無我夢中でした。
サラリーマン時代より働いていたくらいです。
家族3人が食べていけるくらいに稼げるようになったのは2年が過ぎた頃。
でも、お金がなくても、毎日が楽しくて幸せでした。
そしてその幸福感は、今と全く変わらないのです。
幸せの定義とは、お金の多い少ないではなく、日々「やりたいこと」「好きなこと」ができているかどうか。それに尽きるのではないかと思います。
好きなときに好きな場所で好きなことをして生きる
YouTubeの動画制作を始めて良かったと思うのは、「好きなときに、好きな場所で、好きなこと」ができるようになったことです。
ロケーション撮影のときは、日の出前のゴールデンタイムに行うことが多いので、早起きは必須。でも、サラリーマン時代のように満員電車に揺られる必要はありません。
編集作業も、自分のペースで進められます。
なかでも、この仕事を選んで一番良かったなと思うのは、家族と海外を旅しながら仕事ができること。
もともと旅好きだった私は、学生の頃から「将来は海外で働きたい」と思っていました。パイロットを目指したり、外資系企業で働いたのも、その夢があったから。
今は、子どもの長期休みに合わせて海外撮影のスケジュールを組み、できる限り家族と一緒に過ごすことを大事にしています。
そしてもうひとつ、大きな変化は「人間関係」です。
昔は人付き合いがあまり得意ではなかったので、会社を辞めて自分で人間関係を築けるようになってからは、かなり生きやすくなりました。
会社員の頃は、性格の合わない上司や同僚とも、仕事をしなければならない場面が多くありました。そんなときは「反面教師」として学びつつ、「嫌な人にも優しくできる自分ってすごいじゃないか!」と、気持ちを自分に向けることで何とか乗りきっていました。
相手にベクトルが向いていると、どうしても「あぁ嫌だ、一緒に仕事したくない」と思ってしまいます。でも、環境や相手は変えらないので、自分にベクトルを向けることで対処していたのです。
でも、今は違います。イベントでもヨガフェスでも、私たち「B-Flow」を応援してくれる人が集まってくれて、ヨガの話で自然と盛り上がる。
そんな温かくてポジティブな空気の中にいられることが、本当に幸せだと感じます。
私の好きな考え方に、「ポジティブ心理学」があります。
これは、「人生を、最も幸せに生きるためには、何が必要か」を科学的に研究したもので、アメリカの心理学者マーティン・セリグマン教授が2000年に提唱しました。
セリグマン教授は、幸福感や満足感(ウェルビーイング)を高めるために必要な5つの要素を、頭文字を取ってPERMA(パーマ)理論と呼んでいます。
Positive Emotions(前向きな感情):楽しめる趣味や創造的活動をする
Engagement(没頭):今この瞬間に生き、目の前のことに集中する
Relationship(人間関係):社会とのつながりやコミュニティを大切にする
Meaning(意義・意味のあること):世の中の役に立つことをする
Achievement(達成):目標を達成する
よくよく考えてみると私も、趣味とも仕事とも言える動画撮影に日々没頭し、世の中の役に立つ動画を作りたいと考えながら、ヨガを通して自分たちのコミュニティを作ってきました。
特にEngagement(今この瞬間に生き、目の前のことに集中する)は、ヨガの教えにも通じています。
この5つを忘れずに、意識して過ごせたら、人生はきっと豊かになるはず。
より良い人生を送りたいと思われるなら、5つの項目をチェックしてみるのはいかがでしょうか。








