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生き方

「ウツウツ、イライラ」から抜け出すたった1つの方法

枡田智(森林療法士・マインドフルネス瞑想指導者)

2024年06月28日 公開 2024年12月16日 更新

「ウツウツ、イライラ」から抜け出すたった1つの方法

不安で憂うつ、イライラ、頑張ってもなぜか空回りばかり――。誰もが忙しい日々を送る中で、「生きづらさ」や「メンタルの悩み」を抱えている人は多いと思います。自身もそんな悩みに長年苦しんできたという枡田智さんは、メンタルが不安定になる原因は「左脳と右脳の使い方」が関係しているとしています。

※本稿は枡田智著『瞑想メソッドで始めるメンタル強化法 もう“左脳”に振り回されない』(大和出版)より、一部を抜粋編集したものです。

※左脳・右脳の特徴については、ジル・ボルト・テイラー博士の『奇跡の脳』の内容がベースになっています。

 

「思考」が重視され、「感覚」が軽んじられる現代

人間は不安を感じた時、その賢い頭を使って、まだ起きていない未来の危険を予測したり、起こりうる出来事にネガティブな意味づけをしたりします。そして、何かを決めたり、行動したりする時に強い不安を感じると、慎重になり、思考を強化して不安を取り除くための理由を探そうとします。

なぜ、そうするのか?本当にそれでいいのか?
どんな計画を立て、どんな段取りでやるのか?
その決断は正しいのか?失敗したらどうするのか?

その一方で、感覚は思考よりも軽く扱われがちです。

「言葉でハッキリと説明できない感覚に惑わされるな」
「あいまいな感覚は無視して、頭でよく考えるべきだ」

ビジネスの現場でも、「様々な情報を分析して成功する確率やリスクをきちんと示せ」などと、論理的に考えて明確な言葉で説明するように求められます。

端的に言えば、現代社会は「思考重視」な社会なのです。「頭で考えることが何よりも大事だ」と教えられ、言葉で説明できなければ、取るに足らないこと、無視してもいいこととして扱われてしまいます。

このような体験を積み重ねていくうちに、私たちは自分の気持ちや感覚を抑え込むようになり、頭で考えたことが重要だからと強い思考で予測や意味づけを行い、余計な不安や禁止事項を作り出し、やがてそれらに縛られるようになります。

しかし、よく考えてみてください。私たちの人生は思考だけで成り立っているのでしょうか。

例えば、皆さんは子どもの頃、何かを選んで買った時、「なんでそれを選んだの?」と聞かれて、「言葉で説明できないけれど、なんとなく欲しいから」と答えたことがあると思います。本来、「好き」「やりたい」「欲しい」というのは感覚的なものです。頭で考えて理由をしっかり決めた上で、そうした感覚になることなどありません。

ところが、大人になるとそれでは納得してもらえません。「そんないい加減なことではダメだ。もっとよく考えなさい」と言われて、何をするにも理由を頭で考え、言葉で説明しなければならなくなります。そして、言葉で説明できなければ、その気持ちや感覚は不要なものとして切り捨てるようになってしまうのです。

はたして、そんな状態で私たちは幸せに生きることができるのでしょうか。

この状態から抜け出すには、過剰に働く「思考」を静めて、「感覚」に意識を向けていく必要があるのです。

 

ウツウツ、イライラが生じる仕組み

ご存じの通り、思考を司るのは左脳であり、感覚を司るのは右脳です。

左脳の特徴は、「自分と自分以外」「A、B、C」というように、境界を切り分けて物事を処理すること。もう一つは時間の認識、つまり、出来事に時間を付けることで時系列に並べて処理するという働きです。そして、言葉を理解して処理することも左脳の大切な役割です。境界線、時間、言葉などを組み合わせて論理的思考を成り立たせているのが、左脳なのです。

一方、右脳は物事を細かく分けず、全体として処理することが得意です。五感を使いながら、雰囲気や空気感といった言葉にできない感覚を感じ取ります。

例えば、景色を眺めて美しさを感じたり、音楽を聞いて感動したり、お気に入りの場所でホッと安らいだり。そうした美しさや感動、安らぎを言葉で論理的に説明することはできませんが、右脳は確かにそういった感覚を感じています。

この思考と感覚は、「シーソー」のような関係になっています。双方同時に優位にすることはできず、一方が増えれば、もう一方は減る。だから、思考を減らしたければ、感覚を増やすことが必要です。思考が減れば、安らかさや幸福感を自然と感じられるようになります。人間の脳はそうできているのです。

実は、怒りや悲しみ、不安といったネガティブな感情も、左脳の思考がもとになっている場合が多いのです。

左脳の働きが強いと、人々を区別・分離する傾向が強まり、次第に自分を周囲から切り離し、孤立させていくようになります。また、過去を振り返り、未来を予想するのも左脳の働きです。過ぎたことを考え続けてクヨクヨする。未来のことを予想して心配し、不安になる。「自分は他人にこう思われている」などと勝手に想像して、悲しみや怒りがわいてくる。

物事が正しいか間違っているか、成功か失敗かできっちり判断しようとするのも左脳の働きです。そして、失敗のないようにコントロールしようするほど、不安に駆られて苦しくなっていくのです。

このように、私たちの生活は左脳を主役として、常に忙しく考え続けています。一方の右脳はあまり目立たず、どちらかといえば裏方です。言葉では表現できないけれど、日々の生活で確かに感じている心地よさや安らかさ、美しさなどの感覚は、思考が強くなるほど切り捨てられていきます。こうなると、生きることがとても味気なく、つまらないものになってしまうのです。

 

右脳優位がもたらしてくれるメリットとは?

では、右脳(感覚)が優位になると、日々の生活がどのように変わっていくのでしょうか。

〈メリット1:ストレスがなくなる〉

過剰な思考が静まっていくと、ストレスが減り、楽に生きられるようになります。単純計算で、思考が半分になれば、ストレスも半分になります。
また、右脳優位になると、意識は過去や未来ではなく、「今ココ」に集中するようになります。過去を悔やんだり、未来を想像して不安になったりすることが減れば、当然ストレスもなくなっていきます。

〈メリット2:集中力アップ〉

不安に駆られて思考が強くなっている時は、目の前のことに取り組んでいても、すぐ別のことに意識が逸れてしまいます。集中力も注意力も散漫になって、まさに上の空、心ここにあらずといった状態です。
右脳優位になると、意識が「今ココ」に定着するようになるので、集中力が増していきます。そうなれば、仕事や勉強はより効率よく進み、成果を上げられるようになります。

〈メリット3:直感力アップ〉

頭の中が思考でいっぱいになっていると、直感やヒラメキが起こる余白(スペース)がありません。思考を静めて、感覚を優位にすることで頭の中にスペースを作り出せると、そのスペースで直感やヒラメキが起こってきます。
例えば、机の前で頭を抱えていても一向にアイデアが浮かばなかったけれど、気晴らしに散歩をしてみたら、よいアイデアがひらめいた。あるいは、湯船の中でぼんやりしていたら、抱えていた悩みの解決策が見つかった。そんな経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。こうしたことも、右脳優位になって頭の中にスペースができたために起こることなのです。

〈メリット4:感性が磨かれる〉

右脳優位になると、景色がいつもより美しく見えたり、芸術作品がよりすばらしく見えたり、食事がより美味しく感じられたりと、様々なことが普段よりも深く、豊かに感じられるようになります。
左脳過剰だと、景色を見ているようであまり見ていない状態になります。意識の多くが目の前にある景色とは関係のない思考に使われてしまうからです。右脳優位になると、思考に邪魔されず、目の前の景色に意識のすべてを向けることができます。すると、景色がより鮮明に見え、深く感じられ、十分に臨場感や美しさを感じられるのです。

 

著者紹介

枡田智(ますだ・あきら)

森林療法士・マインドフルネス瞑想指導者

上智大学大学院で物理学と情報工学を学ぶ。修了後、大手メーカーで新規技術の開発に従事し、特許を多数取得。その一方で、長年メンタル不調に悩まされていたが、本書で述べるあるきっかけから、たった3日で不調から脱出。
その後、森林療法を学ぶとともに、アメリカで著名なマインドフルネス瞑想の指導者に師事し、数年間かけて、瞑想の理論、実践、指導方法を修得し、独立。これまで1000名以上に瞑想を指導。
元理系研究者のスキルを活かし、わかりにくい瞑想をクリアに図解・言語化し、「とにかくわかりやすい」「あいまいさがなく明快」「他講座でわからなかったことがすんなりとわかる」と高い評価を受けている。

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