鈴木杏樹 日本とトルコの友情。エルトゥールル号のお話は心が震えます
2013年02月13日 公開 2018年12月12日 更新
《 『歴史街道』2013年3月号 総力特集[エルトゥールル号の奇跡]より》
ラジオで話すたびに、どうしても涙を流してしまいます
「エルトゥールル号のお話は間違いなく心が震えて、人間にとって何が大切かを、私たちに教えてくれます」
ご自身のラジオ番組で何度かエルトゥールル号を取り上げ、毎回反響が大きかったと語る鈴木杏樹さん。
感動や感謝の心を忘れがちな現代人に、届けたいメッセージとは。
心打たれたトルコ人の心意気
私は今、ニッポン放送で朝の5分間ラジオ番組「鈴木杏樹のいってらっしゃい」をやらせていただいています。現在、9年目になりますが、その中でも特に反響が大きく、私も強く印象に残っているのが、エルトゥールル号のお話、そしてイラン・イラク戦争でのトルコの方々の「恩返し」を紹介した放送でした。
番組では定期的に心あたたまるお話を紹介しているのですが、5年前、その中のひとつとして構成作家さんが挙げてくださったのが、エルトゥールル号のお話でした。この時、私の頭にまず浮かんだのが、トルコ旅行での記憶です。
以前、私は旅番組の収録でトルコを訪れ、現地の方々にはとてもよくしていただきました。初めての訪問で「どんな国かな」と思っていたのですが、私が日本人と知ると、日本語で話しかけてくれたり、本当に親切なのです。マーケットでも、お店の方々が、皆さん本当によくしてくださって。「トルコって本当にいい国だな」と驚いた一方、「なぜこんなに日本人を大切にしてくれるのだろう」と不思議に感じました。
その疑問が解けたのが、エルトゥールル号のお話を知った時でした。色々なことが腑に落ちるとともに、「なぜこんな大事な話を知らずに、今まで生きてきたのだろう」と思ったのです。残念ながら、私の周りの日本人も誰も知りません。ところが、トルコでは教科書でも取り上げられています。私はその違いに驚きました。そして、日本でも是非多くの方に知って欲しいと感じ、ラジオ番組で紹介したのです。以来、エルトゥールル号の話だけでも何回か取り上げています。反響が毎回大きくて、私自身も思わずエルトゥールル号の話をするたび、どうしても涙を流してしまいます。
中でも、私が一番心を打たれたのは、イラン・イラク戦争の時のトルコの方々の心意気です。イランに取り残された日本人に対して、まだトルコ人も避難できておらず、自分たちの命も危ない状況でした。それにもかかわらず、「日本人を助けよう」と、トルコ航空機を用意して、優先して乗せてくれるというのは、本当に大変なことです。
トルコ人はエルトゥールル号の事故の「恩返し」として日本人を助けてくれました。私たちですら忘れていたことを、トルコの方々は100年近く経っても胸に留め続け、命懸けで行動を起こしてくれたのです。しかも彼らは、和歌山県の串本町の方々も同じだと思うのですが、「友人が困っていれば、助けるのは当然じゃないか」と決して特別なこととは考えていません。見返りを求めず、気持ちだけで動く「心のあたたかさ」に触れて、私は深く感動しました。