「若者って嫌なヤツが多い」「薄っぺらい」と言い放ってもなぜ怒られない? ウエストランド井口さんに聞く“悪口の秘密”
「若者は全員ただの嫌なヤツ」「全部ダメ!」──こんな暴論とも言える過激な発言を連発しても、ウエストランド・井口浩之さんは誰からも怒られないといいます。2025年12月に最新刊『悪口を悪く言うな!』(Gakken)を刊行した井口さんが明かす、ストレスをためずに気楽に生きる"悪口の秘密"をお聞きしました。
「ヤバいですよ、本当に。あいつら全員嫌なヤツなんですよ」
――新著(『悪口を悪く言うな!』)を読ませていただいて驚きました。本の中に20回以上も「イライラ」と出てきてまして。こんなにカリカリしている本は初めて読みました。井口さんがふだんから相当ストレスをためていないかと勝手に心配してしまいました。
【井口】ストレスは全然ないですねー。やっぱりイライラをためずに言っているからですかね。中学校の寄せ書きにも先生から「愚痴ばっかり言わずにがんばれ」と書かれてましたから。昔からストレスとかメンタルとか、そういったことを考えることもなかったです。
――何かとストレスフルな世の中で、井口さんのように悪口を大々的に言えたらいいのですが...。
【井口】そんなに何がストレスなんですか?
――会議が長いとか...。
【井口】やっぱり仲間内で言ってくのが大事ですよ。愚痴を言ったり。「自分が正しい」という信念があれば絶対変えていけます。僕は昔、バイトでも店長がムカついたら会社に掛け合って配置換えを実現させたりしてました。だから、ぐちぐち言ってるだけの人を見ると「なんとかしろよ、動けよ」と思っちゃいますね。
ただ、やっぱ最終的には自分がクビになるんですよね。言いすぎて。居酒屋のバイトを長くやってましたけど、現場ではめっちゃ重宝されるんですよ。でもエリアマネージャーみたいな人が本部から来て、なんかいろいろ言ってきて、結局クビみたいな。
――多くの人が共感できるお話だと思うのですが、実際はなかなか真似できないですね...。飲みながら愚痴るまでが精一杯で。愚痴るだけじゃなくてやっぱり行動しないと何も変わらないとは思うのですが...。
【井口】みんな真面目というか、一生懸命すぎるんですよね。もっと気楽に生きりゃいいのになって思っちゃいますね。
でも飲んで愚痴れるならいいんです。それよりも最近の若者が「タイパが」「コスパが」とか、いろいろ言いながら「僕、飲み会行かないんで」「一人で」みたいなこと言うじゃないですか。
ああいうやつの方がよっぽどヤバいですよ。「最近の若い人の感覚だな」とか言われてますけど、ただの嫌なヤツなんです、あいつらは!若いことにかまけてドライぶってるけど、年齢関係なくめちゃくちゃ嫌なヤツなんですよ。
「旧世代のサラリーマンは飲んで愚痴を言ってるけど、俺は違うんだよね」みたいなこと言うのって、全員嫌なヤツ!ここからの日本、本当にヤバくなっていくと思いますね。おじさん側が「今の若者の感覚だからなあ」とかビビって遠慮してると、どんどん関係が希薄になって、嫌なヤツに支配されますよ。
――たしかに上の世代の方々も、若い人に気を遣って誘えないというような話をよく聞きますね。
【井口】それが本当に良くない! そんなビビる必要ないんですよ。いい関係なら誘って大丈夫なんだから。ヤバいですよ、本当に。あいつら、全員嫌なヤツなんですよ。若いやつって嫌なヤツが多い!
「新しい」というだけですごいと思いすぎ?
――「Z世代」といわれる世代の方々がテレビやネットでも活躍していますよね。「若者はただの嫌なヤツ」とおっしゃっていましたけど、「若いだけの人」と「本当に実力のある人」の違いって、どこにあると思いますか?
【井口】最近の風潮として、「新しい」というだけですごいと思いすぎなんですよね。AIだってそう! 普通にウィキペディア見た方が早いことを、 「AIに聞いてみた」って得意げになってるの、あれヤバいですよ! 何やってんだよって感じですよ!
――(笑)
【井口】「テレビは嘘! ネットが真実!」みたいな薄っぺらい考えが横行してますけど、それって本当にバカじゃないですか? みんなビビってるんですよ。「若いからすごい」って思いすぎ。
――たしかコロナ前後くらいから「Z世代の感性」みたいなものが世間から持てはやされていた気がしますが、そのZ世代の先頭が30代に入ってきました。若さだけでない実力も問われるようになりそうです。
【井口】「すごそう」というだけで崇めるケースが多すぎるんですよ。YouTubeとか見てても、さもそれっぽいことをうまく仕立てて、全然嘘ばっかりなのに、すごい人気だったりする。ああいうのは怖いですよね。もっと考えて生きろよ! って思います。
ただ、こういう時代だからこそ"カリスマ"みたいなのを欲してるんでしょうね。何にもすごくないやつを勝手にカリスマ視して、自分がそれにコメントして「何かになった気分」になってる。でも、何にもなってないからな、お前なんか!って思いますね。
「僕の言ってることなんてめちゃくちゃ」だから誰にも怒られない

――井口さんから見て、「この人は若いけど、この先もやっていけそうだな」と思う人は?
【井口】どうなんすかね...まあ、いない......。でも、そのうち出てくるんでしょうから。そう出てきてからでいいんじゃないですかね。
――時間を経ないと見えてこない、ということでしょうか。
【井口】僕、よく「全員ダメなんだよ!」くらいまで言い切るじゃないですか。めちゃくちゃですよね。でも、そのくらいでいいと思うんですよ。
中途半端に「この人はいいけど、この人はちょっと...」みたいに気を遣うからややこしくなる。「全員ダメ!」と言っちゃえば、逆に炎上もしないし、誰も何も思わない。
――なるほど。
【井口】どうせ僕の意見なんて誰も真剣に聞いてないですからね。「若いやつは全部ダメ!」って言っちゃえば、その方が気楽に生きられるんですよ。
大げさに言っちゃえばいいんですよ。「会議なんか全部クソだ!」「上司は全員どうしようもない!」とか。そこまで行くと、もう誰も怒らないじゃないですか。誰に言ってるのかよくわからないぐらいまで主語をデカくする。
僕なんて「テレビマン全員どうしようもない」「売れてない劇団員は全員クソだ」とか言ってますからね。それぐらい言っておけばストレスもたまらないし、誰からも怒られない方法にはなるんじゃないですかね。
相当ざっくり言ってますからね。「大阪はこうだ」「田舎はダメだ」とか、僕の言ってることなんてめちゃくちゃですよ。なのに怒られないのは、主語をデカくしているからだと思います。
(取材・編集:PHPオンライン編集部 片平奈々子)








