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「傷つきやすさ」が大きな武器に? 心理カウンセラーが教える“敏感な人の強み”

衛藤信之(心理カウンセラー)

2025年12月30日 公開

「傷つきやすさ」が大きな武器に? 心理カウンセラーが教える“敏感な人の強み”

何か嫌なことがあったときに「また傷ついてしまった...」「自分は何でこんなに弱いんだろう...」と責めてしまった経験はありませんか?でも、その"傷つきやすさ"が、あなたの"大きな武器"になると、公認心理士の資格を持つ心理カウンセラーの衛藤信之さんは語ります。

一見ネガティブにも思える"傷つきやすさ"が、なぜポジティブな強みとなるのか――本稿ではその理由を、衛藤信之さん著書『傷つかない練習』より、紐解いていきます。

※本稿は、衛藤信之著『傷つかない練習』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

傷つきやすさは実は「成功者の特徴」

「傷つきやすい自分は弱い」「もっと鈍感にならなきゃ」と思ったことはありませんか?でも、実はその"傷つきやすさ"こそが、成功している人や他人に信頼される人が持っている特徴のひとつだとしたらどう思います。

少し前に話題になったHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)と呼ばれる人たちは、音や光、人の表情や声色など、まわりの刺激をとても敏感にキャッチします。こう聞くと、「疲れやすそう」と思うかもしれません。

確かに、人混みや騒がしい環境で消耗しやすい一面はあるでしょう。でも、この感受性の高さは、いわば「高性能センサー」です。相手の小さな変化に気づくからこそ、トラブルを未然に防いだり、人の気持ちを察して行動できたりします。

たとえば、同僚が何も言わなくても、表情の曇りから「何かあった?」と声をかけられる人も「高性能センサー」の持ち主です。この声かけが、落ち込んでいる人にとって救いになることもあります。

失敗や挫折を一度も経験していない人は、失敗した人のつらさを軽く見てしまうことがあります。「なんで、そんなことで落ち込むの?」と、ひどいセリフを言ってしまいます。でも、自分が痛みを知っている人たちは違います。

同じような状況に置かれた人を見たとき、「あのときの自分と同じだな」と感じて、自然に寄り添うことができます。「共感」は、経験と感受性の2つがそろってはじめて生まれるのです。

 

「傷つきやすさ」は強みの裏返し

僕の知り合いに、大きな失敗を経てビジネスが成功した人がいます。彼は「失敗しない方法」ではなく、「失敗しても立ち上がれる方法」が大切だと笑って語ります。それは、失敗の痛みを知っているからこそ、同じ立場の人に本当に必要な言葉をかけられるのです。そうした感受性の高い人は直感力、創造力も鋭くなります。

たとえば、「相手の表情の変化」や「場の空気」を敏感に感じ取るため、「なんとなくいつもと違う予感がする」という直感が当たることも多いのです。そんなやさしい人はヅカヅカとは相手のテリトリーに踏み込まないで、そっと寄り添えます。この直感力は、芸術やビジネスの場でも発揮されます。絵画、音楽、文章、デザイン......、人の心を動かす作品は、多くの場合、この感受性と創造性から生まれます。

傷つきやすさは、確かに日常生活でつらく感じる瞬間もあります。でも、それは「気づく力」「共感する力」「直感」「創造性」という強みの裏返しでもあるのです。大切なのは「オン」と「オフ」の切り替えです。それを知り、この強みを活かせば、人間関係も仕事も、より深く豊かなものになるのです。

だから、あなたが「自分は傷つきやすい」と感じたら、こう思ってみてください。「これは弱さじゃなくて、感受性のアンテナの感度が高い証拠だ」と。そのアンテナをどう使うかを、これからのあなたが決めればいいのです。

 

傷つきやすい人は「心が開いている人」

「私って傷つきやすいな」と感じると、多くの人はそれを弱点のように思います。でも実は、その傷つきやすさは心が開いている証拠かもしれません。心が開いている人は、自分の中に余白があります。だからこそ、他人の意見や新しい考え方を受け入れることができます。それは、人生を大きく変えるきっかけにもなります。

僕がこれまで出会った成功している人たちに共通していたのは、「素直さ」でした。自分に自信がないからこそ、人の言葉に耳を傾け、「とりあえずやってみよう」と思える素直さがありました。この「やってみよう」の一歩が、道を開くのです。

ある若い女性は、営業職に就いたばかりで成果が出せずに悩んでいました。先輩から「こういうやり方を試してみたら?」とアドバイスをもらったとき、「自分のやり方では自信がないし、まずはやってみよう」と素直に取り入れました。するとすぐに成果が出て、自信がつきました。

この女性が最初から「このやり方で私はやりますから」と自己を信じ過ぎていたら、結果は違っていたかもしれません。自分の考えや方法にこだわり過ぎると、新しいことに挑戦しなくなります。「失敗したらどうしよう」という気持ちも強くなり、やがて行動が止まります。特に「プライドが傷つくのが怖い」と思う人ほど、守りに入ってしまいます。

でも、心が開いている人は違います。「自分の考えはこうだけど、他のやり方もあるかもしれない」と思える。その素直さが、新しい経験や成長を連れてきます。心が開いていれば、人の意見や他の分野のアイデアも受け入れられ、それらが組み合わさって新しい発想が生まれます。いいこと尽くしです。

僕が知っているデザイナーさんは、自分の専門以外の話にも興味を持ちます。料理、スポーツ、歴史、子どもの遊びまで幅広く話を聞きに行きます。そのやわらかい心が、独創的なデザインの源になっているのです。

確かに、心が開いていると傷つくことも増えます。でもそれは、人の意見や気持ちに接触できる能力がある証拠です。感じやすいからこそ、人にやさしくでき、チャンスをつかむことができると言えます。

だから、自分の傷つきやすさを単なる「弱点」としてとらえないでください。それは、あなたが心を開いて生きている証。その素直さとやわらかさを、これからも大事にしてください。それは必ず、あなたの未来を広げてくれます。

 

「そのままの自分で愛されている」実感ワーク

①記憶を探す

静かな場所でノートとペンを用意します。次の問いに答えてみてください。

・子どものころ、ただ笑っているだけで笑顔を返してくれた人は誰ですか?

・うまく話せなくても、一生懸命聞いてくれた人はいますか?

・失敗しても「大丈夫」と言ってもらった瞬間はありましたか?

・病気やケガのとき、ただそばにいてくれた人は誰ですか?

思い出せるだけ書き出します。いくつでも構いません。大事なのは、「何かをしたから」ではなく、「そのままの自分」を受け入れてもらえた瞬間を探すことです。

②その場面を体で感じる

書き出した中から、ひとつを選びます。目を閉じて、その瞬間をできるだけ鮮明に思い出してください。相手の表情、声のトーン、手の温もり、部屋のにおい、空気のやわらかさ......。

そのときの自分は、何をしていましたか?何を考えていましたか?ただそこにいるだけで、安心できた自分を感じてください。

③セルフラブ&セルフハグ

今度は、自分自身にやさしく触れてみます。両腕で自分を抱きしめる、頭を自分で撫でてあげるでもかまいません。触れながら、声に出してこう言ってみます。「よくやってるよ」「そのままで大丈夫」「今日まで生きてくれてありがとう」

ポイントは、言葉をただ頭で理解するのではなく、体で感じることです。人は温もりに触れると、安心を感じるホルモン(オキシトシン)が分泌されます。それが心の鎧をゆるめ、やさしい感覚を受け入れやすくしてくれます。

④日常に取り入れる

このワークは特別な日だけでなく、日常の中でもできます。

・朝、顔を洗ったあとに顔に手を当てて「今日もよろしく」と声をかける

・昼、注意されても笑って「ありがとうございます」と反応したね。頭をそっと撫でる。

・夜、寝る前にセルフハグをして「今日もお疲れさま」とつぶやく

・つらいことがあったとき、手首や腕にやさしく触れて「いつもありがとう。あなたたち(身体のパーツ)がいるから大丈夫」と言う。

たった数秒でも、心と体は「自分に受け入れられている」という感覚を覚えます。「そのままの自分で愛されている」という感覚は、他人からもらうものだと思われがちです。でも、本当は自分自身が一番の理解者であり、愛してくれる存在になることができます。

今日、ほんの数分でいいので、自分を抱きしめてあげてください。それは、日々傷ついた部分を癒し、インナー心理カウンセラーが自分の味方になれる方法です。

プロフィール

衛藤信之(えとう・のぶゆき)

心理カウンセラー、公認心理師、日本メンタルヘルス協会代表

幼少期に心理学に興味を持ち、アメリカで臨床心理学やサイコセラピーなど、多くを学ぶ。アリゾナでネイティブ・アメリカンと生活をし、生きる上での大切なことを知る。理論中心の心理学の学派を離れ、カウンセリングの現場で感じたことを提供している。代表を務める日本メンタルヘルス協会の卒業生は30年で5万人超え。
主な著書に、『心時代の夜明け―本当の幸せを求めて』(PHP研究所)、『イーグルに訊け』(飛鳥新社)、『今日は、心をみつめる日。』(サンマーク出版)、『「ほんとうの幸せ」の見つけ方』(サンマーク文庫)、『こころの羅針盤―人生を迷わないために…』(毎日新聞出版)など。

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