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生き方

10年先を考える女 〈ひと〉 は、うまくいく

有川真由美(作家/写真家)

2013年02月26日 公開 2022年11月10日 更新

『10年先を考える女(ひと)は、うまくいく』より》

いま備えておいて「あとは、楽しもう!」

この本 『10年先を考える女〈ひと〉は、上手くいく』 でお話しすることは、あなたにとってとても大切なことです。同時に、ほとんどの女性が教えてもらっていないこと。

時にはきびしいことも書いていますが、それは人生がうまくいくための処方箋。これからの10年間を大切に過ごすために、この時代を生きる知恵を吸収し、あなた自身の未来に備えてほしいのです。

いま、日本には、「この先、よくならない」という悲観が渦巻いていて、多くの人は失敗しないよう、危険な目に遭わないように、縮こまって生きているようです。

でも、怖がることはありません。

とことん楽観的に、「こんなふうになったらいいな」と、なりたい自分をイメージして、「どうしたら、そうなれる?」と考え、一歩一歩、近づいていくのです。

10年先を考えることで、いまやるべきことが見えてくるはずです。

10年先を考えて、前に向かって進もうとしている人と、考えないで惰性で過ごしている人とでは、いまはほんの少しの差でも、10年の間に、大きなちがいとなって現れます。

ただし、わかっておいてほしいのは、楽観だけで望む未来が手に入るというわけではないということ。とことん、楽観的である一方で、「もしもこんなことになったら……」という事態のことも考えて、備えておく必要があります。

プラスの側面だけでなく、はまってしまいがちな落とし穴(リスク)も想定して、心構えや準備をし、いくつかの道筋をつけておいてこそ、大胆な挑戦ができるのです。

それは、未来を「悲観する」ということではなく、自分の未来に向き合うことで、「あとは、楽しもう!」と、本当の意味で楽観的に生きるということなのです。

私が以前、働いていた会社を辞めて、書く仕事をするために東京に出ようと決めたのは、ちょうど10年前のことでした。

「10年後の私は、なにをしていたいんだろう?」と考えたとき、10年あれば、かなり遠くまで行ける(多くのことを積み重ねられる)、動くならいまだ!と感じたのです。

うまくいく確証なんて、なにもありませんでした。

住み慣れた場所を離れ、知り合いもいない場所に行くリスクも高い。自分の能力がどの程度、通用するのかもわからない。でも、目の前のことをひとつひとつ丁寧にやっていれば、時間はかかっても、いつか自分の目指す場所にたどり着けるような気がしていました。

「現実はそんなに甘くはない」「もういい歳なんだから、落ち着いたら?」……親切心から、そんなふうに言ってくれる人もいましたが、「きっとなんとかなる!」という、驚くべき楽観に支えられて、最初の一歩を踏み出しました。

もし、どんな状況になっても、「生きていけないことはないだろう」「また振り出しから始めればいい」と思えたから、進んでこられたのです。

ただし、いつも私は進む道のその先に、リスクがあることは想定していました。

あなたが自分の人生のストーリーをとことん楽観的に描き、しかもリスクにも目を背けずに進む覚悟をもてたら、10年先の未来はきっと明るいはずです。

人生の選択肢がたくさんある時代に生きているのは、間違いなくチャンスです。

他人に人生を委ねることなく、自分の意志で、人生を切り開いていけるのですから。

これから先の10年、あなた自身が進化していく過程を、存分に楽しんでください。

 

生き抜くために、大切なふたつのこと
一生懸命がんばれば、幸せが手に入るわけではない

私がフリーライターとして東京に出ようと決めたのは37歳のことでした。

最初にやったことは、全財産を投じ、2年ほどかけて世界を見て回ること。

若い人とパイを奪い合う仕事の仕方をしても、未来はない。自分なりの視点をもてれば、仕事はあとからついてくるだろうと確信していたからです。

東京でライターの仕事が軌道に乗るまでの2年ほどは、短期の派遣社員としても多くの仕事をしました。配送会社での仕分け作業、工場での流れ作業、ウェイトレス、電話受付、秘書、マネキン……。ときには怒鳴られたり、嫌みを言われたりするつらい職場もありましたが、自分を支えていたのは「いつかここから抜け出そう」というかすかな希望と、「私には私の生き方がある」という小さな誇りのようなものでした。

そして、あるとき、ふと「自分ほど多くの職場を見てきた人間はいない。ならば、どこでも通用する『働く女のルール』が書けるではないか」と思ったことから、本を書くことになったのです。

それは、バタバタともがいているうちに、やっと、泳ぎ方のコツがわかったというような感覚でした。自分ではコンプレックスだった転職の多さが、人の役に立てると思った瞬間、すべてが報われたようで、ほっとした気持ちになったものです。

フリーターの立場から、本を書くようになり、「働く女性について、もっと学びたい」と、台湾の大学院に留学し、大学で教えたり、講演をしたりするようになるまで10年弱くらいです。

そう考えると、「10年」というひとくくりは、短いようで長い。ずいぶん、多くのことができ、可能性を広げられる時間なのだと実感しているのです。

さて、「努力しているのに、報われない」「やる気が空回りばかりしている」という人でも、あるとき、ふと歯車が回り始めるときがあります。

それは、「自分のやれること」と「求められていること」が一致したからです。

ただ、どれだけやっても、なかなか実を結ばないということもあるでしょう。

日本の女性は、英会話、資格取得、自分磨き……と本当に熱心ですが、それによって、自分の目的がかなえられているかというと、そうでもない場合もあるはずです。

現代社会を生き抜くためには、その前にもっと大切なことがあるのです。

1 自分のことをわかること
2 世の中の仕組みをわかること

つまり、このふたつがわからないから、「力のいれどころ」がわからないのです。

「自分のことをわかる」というのは、「自分になにができるのか」を見つけるということです。

自分のことがわからない人は、「とりあえず、みんなと同じことをしよう」と、安心できる状況を求めて大勢と同じ方向に流されたり、コーチングや啓発セミナーなどを渡り歩いたりという状況になることもあります。

世間の基準でうまく生きようとすると、自分を見失ってしまいます。

でも、自分を知るためのカギは、足元に転がっているものです。

いまいる場所で、やれること、喜んでもらえることを見つけること。

そして、与えられた仕事に精一杯、取り組むこと。

小さいことからでも構わない。おいしいお茶をいれること、データ分析をして報告書をつくること、企画書に工夫を加えで説明すること……。「自分なりに極めて、いい仕事をする」という試みを、あれこれやってみるといいでしょう。

すると、まわりが褒めてくれたり、さらに大きな仕事を任されたりということが起きてきます。チャンスも舞いこんでくるようになります。

自分がどんな人で、どんな能力をもっているか、なにを伸ばしていけばいいかは、他人が教えてくれるはずです。

そして、もうひとつ重要なのは、「世の中の仕組みを理解すること」。「なにが求められているのか」を知り、自分なりの人生の挑み方を見つけるということです。

いくら自分にやる気や能力があっても、「現代社会とはどんなものか」という仕組みやルールがわかっていないと、それを発揮することはできません。

人生にはさまざまな落とし穴がありますが、その存在を知っていれば、対策を立てて進んでいけます。世の中の性質を正しく理解できれば、解決方法も導かれるはずです。

恋愛、結婚、家族、人間関係などにおいても同じ。自分の場所からだけでなく、相手の立場、全体の構図を俯瞰する目が、自分を守ってくれるようになります。

「いかに自分が満足する生き方ができるか」を軸に、主体的に「自分のできること」と「求められること」の接点を探っていく。

その「力のいれどころ」のポイントは、「希望」となって、私たちを導き、支えてくれると思うのです。

 

有川真由美

(ありかわ・まゆみ)

作家・写真家

鹿児島県姶良市出身。熊本県立熊本女子大学卒。化粧品会社事務、塾講師、科学館コンパニオン、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、新聞社編集者など多くの転職経験をもち、マナー講習指導、新人教育の経験から、働く女性のアドバイザー的存在として書籍や雑誌などで活躍中。旅行作家としても台湾を中心に約35カ国を旅し、エッセイやドキュメンタリーを執筆する。
著書に、『仕事ができて、なぜか運もいい人の習慣』『30歳から伸びる女、30歳で止まる女』『感情の整理ができる女は、うまくいく』(以上、PHP研究所)『こころがフワッとする言葉』(廣済堂出版)『あたりまえだけどなかなかわからない 働く女のルール』『働く女! 38才までにしておくべきこと』(以上、明日香出版社)などがある。

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