20歳の頃、阪神・淡路大震災で被災した経験を持つ、安田大サーカス 団長安田さん。
その体験を原点に防災士の資格を取得し、イッツコムの番組「イッツコムおうち防災のすすめ」にも出演するなど、防災の知識を伝える活動を続けています(イッツコムでは当番組をはじめ「イッツコム防災Action」と題し3月、4月に防災の大切さを発信)。
今回は団長安田さんに、震災当時に本当に困ったことや、完璧を目指さなくても今日から始められる「おうち防災」について、実体験を交えてお話を伺いました。
分からないからこそ、常に意識して備える
――イッツコムでは、3月11日を一つの契機として3月、4月に「防災アクション」という取り組みが行われます。地域イベントでのブースの出展など防災意識を高める活動も行われますが、団長安田さんから一言エールをいただけますか。
【団長安田】普段から防災を意識して生活している人って、まだまだ少ないと思うんですよね。
昔に比べれば意識は高まってきたけど、僕自身も含めて、準備が足りない部分はある。だから、もう一回再認識する機会があるのは、すごくいいことだと思います。
地域密着のケーブルテレビとして、防災への取り組みは大事だと思います。災害は、いつ起こるか分からないですから。
分かっていれば備えるけど、分からないからこそ、常に意識して準備しておく必要がある。
自転車のヘルメットも、車のシートベルトも同じですよね。
――日常の中に防災意識を取り入れる、ということですね。
【団長安田】そうですね。例えば、鍵にライトをつけておくとか。
(キーホルダーの沢山ついた鍵を取り出して)これは電池切れなんですけど(笑)。
――あ、本当ですね。
【団長安田】防災グッズは「ちゃんとしてる人が持ってるもの」って思われがちだけど、僕みたいにボーッとしてて、電池切れにも気づいてない人間でも、「持とうとしてる心がけ」が大事だと思うんです。
講演でも、それを見せて「ライトは便利ですよ。ただ、電池ないですけど」って言うと、みんな笑ってくれるんですよ。
ちなみに、ちゃんと点灯するライトも企業さんからもらったのでついています。
阪神・淡路大震災で被災して一番大変だったのは
――団長安田さんは20歳の頃に阪神・淡路大震災で被災されています。当時を改めて振り返ってみて、特に大変だったことや、足りなかった物資、印象に残っていることはありますか。
【団長安田】公演でもよく話すんですけど、やっぱり一番は「水」ですね。
給水車は来てくれるんですけど、入れ物がないんです。
今は、ビニール製で背負える給水バッグがあります。
最近はマンションも多いじゃないですか。エレベーターが止まったら、水を持ち上げて上まで運ぶのは大変なので、背負えるものがいい。
すごく小さく折りたためるんですよ。普段はコンパクトにしまっておける。
実は今、「団長安田グッズ」として、それを作ろうかなと思ってるんですよ。
配れる人には配って、買ってくれる人は買ってもらう、くらいの感覚で。すごく安く作れるんです。
よく企業がティッシュ配ってたりするじゃないですか。
あれが少しでも、水を入れられる防災用のバッグになったらいいのになって、ずっと思ってます。
実際、そういう取り組みをしているところもあるみたいですけど。
阪神・淡路大震災の頃は灯油ストーブが主流だったので、灯油のポリタンクはあったんです。でも、中には灯油が入ってる。
で、水を入れる用にと思って買いに行ったら、もう売り切れていて。
たまに売りに出ると、何倍もの値段になっている。それでも買うしかなかった。
今の給水タンクは蛇口式になっていることも多いそうですけど、あの当時は違ったのでペットボトルに水を入れようとすると、口の大きさが合わないからもう周りがびちゃびちゃになって。
サランラップから防災を始めてみる

――実体験があるからこその貴重なお話です。
防災を始めたいと思っても、あまりお金をかけられなかったり、時間がなかったりする人も多いと思います。そんな中、まず何から始めるのがいいと思いますか。
【団長安田】僕がよく言うのは、サランラップですね。
どうせ使うものやから、ちょっと多めに買っとく、という意識から始めたらいい。
いきなり「この1万円のバッテリーを買ってください」って言われても、なかなか無理じゃないですか。
だから大事なのは「意識」なんです。
僕、トライアスロンもやってますし、100キロマラソンも、数か月前に急にオファーが来て走ることがあるんですけど、ああいうのも「やり出すこと」が大事なんですよ。
100キロ走れる体を作ろうと思って、いきなり毎日10キロ走るのはしんどい。最初は歩くとか、最初は曲がり角まで走るとか。やる気になったら、もう一つ、もう一つと増やしていく。
そうやって、100キロ走れる体ができていくんです。
防災も同じで、いきなり全部そろえられる人もいますけど、そんな人ばかりじゃない。
だから、まずは何か一つ。
サランラップを一つ多めに置く。
トイレットペーパーを少し多めに買っておく。
枕元にスリッパを置いてみる。
「もうちょっと分厚いスニーカーの方がいいかな」と考える。
ライトを置いてみる。
何でもいいと思うんです。
「ちょっとプラス」から始める。
いきなり10個ドン! は、お金もしんどいし、気持ちもしんどい。
トライアスロンの時にもよく言うんですけど、「コツコツが勝つコツ」。
それは防災でも同じやと思います。
――確かに、サランラップを1本追加するくらいなら、生活の延長線でできますよね。
【団長安田】そうなんです。これを買った。「あ、これで防災できたぞ」って思えたら、次に「じゃあ枕元にスリッパ置いてみようかな」ってなる。
一つできたら、次、次って、自然につながっていくと思います。
――番組をきっかけにご自宅に置いてある防災バッグも、更新された部分はありますか。
【団長安田】トイレは、ちょっと買い足しましたね。
一番よくないのは、「どうせならいいものを買おう」と思って、結局買わないこと。
例えば100均のトイレを見て、「これ頼りないやろ」って思って、「もっといいのある?」って探しているうちに、結局何も買わない。
それやったら、100均のでもいいから一個足しとく。
そのうえで、「じゃあ次はもうちょっといいのを」って考えたらいいと思います。
(取材・執筆・撮影:PHPオンライン編集部 片平奈々子)







