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[日本企業の実力]真の強みは重工業と素材・部品



2013年03月22日 公開

長谷川慶太郎(国際エコノミスト)

《『日本企業の生きる道。』より》

重電機をつくりたくてもつくれないサムスン

 サムスンの技術力はきわめて高い。しかしながら、それは電子技術など一部の技術に限ったことである。日本が得意とする重電分野の技術は、サムスンはもっていない。重電分野は、技術の蓄積が必要であり、サムスンにはつくれないのだ。

 サムスングループには、重工業部門もあり、「サムスン重工業」という会社が造船事業を行なっている。

 私はサムスン重工業の造船工場も訪れているが、工場内では日本語が飛び交っていた。顔をみただけでは、韓国人か日本人かわからず、ある社員に話しかけてみたところ、彼は、日本人であった。「長く石川島播磨重工業(現・IHI) の呉事業所に勤めており、定年退職後、3年契約でサムスン重工業にきた」という。

 そのような人間が何人いるか尋ねたところ、「石川島播磨を中心に日本企業を定年退職した日本人が26人働いており、さらに増える見込み」とのことだった。

 サムスンの造船部門への派遣は、石川島播磨重工業の社長を務め、のちにNTTの初代社長にもなった真藤恒氏の斡旋であった。真藤氏は、サムスンがまだ小さな企業だった時代から、よく面倒をみていた。

 サムスンは、日本初の超高層ビルである霞が関ビルが建設された当初から入居していたが、それも真藤氏の三井不動産への口利きによるものである。技術面でも石川島播磨がかなりの支援をしていた。

 これだけの支援があれば、重電部門も設立できるはずである。その点を創業者のイ・ビョンチョルに尋ねると、「それでも重電部門だけはできない」と答えた。サムスンは、重電部門をつくろうとして試行錯誤を重ねたそうだが、できなかった。石川島播磨から技術供与を受けたとしても、手がけられないのだという。

 その理由は3つある。

 1つは、人材がいないこと。

 韓国の大学の工学部には、重電機を専攻している学生がほとんどいない。重電を専攻している数少ない学生は、すべて「韓国電力公社」に入社してしまう。重電を専攻する者が、民間企業に就職することはない。日本から技術を導入したとしても、エンジニアの絶対数が足りないので、成立しないということだ。

 2つ目は、工場設備である。

 重電機の工場というのは非常に大きく、天井にはクレーンが備え付けられている。天井クレーンが工場内を移動して、重電機がつくられていく。重電概は重量が重いため、強力なクレーンが必要で、天井クレーンは150tから200tクラスが必要となる。これほどの設備は、サムスンにはできないのだという。

 3つ目は、体系的な技術力だ。

 液晶パネルのような組み合わせによってできる技術と異なり、重電の技術は、体系的な技術の積み重ねが不可欠である。日本は明治以来、百何十年も技術開発を積み重ねてきたが、韓国にはその蓄積がない。日本から技術者を引き抜いたくらいではとうてい追いつけないほど、大きな差があるのである。

 以上のような理由で、サムスンは重電機部門をもてなかった。韓国最大企業のサムスンにして、重電機をつくりたくてもつくれない。これは、日本にとって非常に好都合なことといえる。

 いま世界では、シェールガスによるエネルギー革命が起こっており、また、発展途上国の電力需要も非常に高まっている。

 世界が求めているのは、大型の発電機、大型の変圧器など重電機であり、この分野では、日本はライバル各社を寄せつけないほどの、圧倒的な競争力を誇っているのである。

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