仕事の効率が上がらず悩んでいる人が、今すぐ実践できる改善策はあるのでしょうか。本稿では書籍『会社でいちいち傷つかない 認知行動療法が教える、心を守り成果を出すための考え方と行動』より、臨床心理士の中島美鈴さんが、認知行動療法の視点から導き出した「2つのテクニック」を紹介します。
※本稿は、中島美鈴著『会社でいちいち傷つかない 認知行動療法が教える、心を守り成果を出すための考え方と行動』(日経BP)より一部抜粋・編集したものです。
仕事の要点がわからず、いつまでも終わらない
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30代会社員のヒナタさん。いわゆる要領が悪いタイプで、決してさぼっているわけではないのに仕事が遅い。仕事の要点も外しているらしく、上司からの評価もよくない。仕事が早い人と遅い人の違いはどこにあるのでしょうか。
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職場におけるストレスの中でも、働き手不足による仕事量の多さは深刻な問題です。長時間労働につながり、心身の健康を蝕みます。個人にできる解決策のひとつとして、すぐにできることは時間あたりの生産性を上げることです。「人より仕事が遅いかも」と悩んでいる方にはぜひお読みいただきたいです。
会社員のヒナタさんもまた、いわゆる要領の悪いタイプで、仕事の仕方を見直すべき時期に来ています。仕事の仕方でも、運転の仕方でも、私たちは慣れたパターンがあるわけです。まずはそのパターンに気づいて、「ああ、いつもこのやり方だから仕事が遅くなるのか」と認識して、他のやり方を試してほしいのです。
これは時間管理スキルの中でも、ゴール設定とそこに到達するための手段の選択にかかわる部分です。これらができるようになると、仕事の要点を外さずに時間も圧縮できて、予定している仕事がこなせるようになるのです。
【相談の要点】
• 仕事が遅い
• 仕事の要点を外しているので評価もよくない
認知行動療法の視点で捉える
「仕事が遅い」という悩みには、少なくとも3つの問題があります。
・仕事のゴール設定ができていない
・仕事の要点を押さえていない
・時間に間に合うための方法を選べていない
という3つです。ひとつずつ見ていきましょう。
1. 仕事のゴール設定ができてない
仕事の指示を受ける時に、仕事の完成形が浮かんでいれば、スムーズに着手できますね。完成形の解像度が高いほど、そこに到達する手段も描きやすくなり、行動に移しやすくなります。
仕事が遅い、終わらない理由のひとつには、仕事のゴールが曖昧なまま引き受けてしまうことがあります。その場で聞けない背景(「こんなことも知らなかったら、失望されそう」などの認知)についても修正してほしいのですが、仕事の指示の受け方をなるべく具体的にする、ということも大切です。
2. 仕事の要点を押さえていない
業務の中で、どこが外せないポイントなのか、どこを省略してもよいのか、なかなかピンとこないという人は案外います。こうした人たちは、いつも同じやり方で仕事をこなそうとするので、仕事が増えた分だけ残業が増えていきます。時間内におさまるように要点を意識しながら仕事をこなす方法を覚えていきましょう。要点を抽出するために、タスクを小さな要素に分ける、要素分解のやり方があります。
3. 時間に間に合うための方法を選べていない
私たちはつい慣れたやり方で仕事をこなそうとしてしまいます。これまでずっと手書きだった人に、急にパソコンを使うように言っても抵抗を示すでしょう。仕事のやり方を変えないのは、これと近いことかもしれません。時々、自分のやり方を疑い、視野を広げ、効率のよい方法を模索してみましょう。
認知行動療法のテクニックを使う
さて、ここからは仕事の遅い会社員のヒナタさんを通して、業務改善のための認知行動療法のテクニックをお伝えします。ヒナタさんは上司から「会議のためにコーヒーを50名分用意してほしい」と依頼されました。
【テクニック1】指示受けの時にゴールを明確にする
仕事の指示を受ける時は、業務内容に関するすべての質問を済ませて、受け終わる頃には、仕事の完成形が見えている状態を目指します。これまでのヒナタさんは、上司からの指示を聞いてメモを取っていても、わからな
いことを質問しませんでした。
・コーヒーカップはどこにあるのか
・大量のコーヒーを入れておく容器はあるのか
・予算はいくらなのか
確認するべきことはいくつもあるのです。
【テクニック2】問題解決技法
コーヒーを準備するのに、このような条件があったとしましょう。
・ホットコーヒー50名分
・質にこだわる
・予算はある程度かけていい
・少しカジュアルな会議であるためソーサーまではいらない
・コーヒーも大事だが、それ以上にプレゼン準備に注力してほしい
ヒナタさんは、給湯室のコーヒーメーカーが同時に10名分抽出できるので、5回抽出して、保温ポットにいれておき、紙コップで提供しようと考えました。上司の要件を満たしてはいます。しかし、ヒナタさんはプレゼンの準備もしなければなりません......。
このような時には、「問題解決技法」を使います。
これは認知行動療法の中でも代表的なテクニックです。ある問題を解決するための方法を、一旦評価せずに幅広く並べた上で選択していくというものです。この「一旦評価せず」という部分が肝心です。質より量でこれまでの自分の思い込みをとっぱらってどんどんアイデアを出していくのです。ブレーンストーミングとも呼ばれます。
そうして、アイデアが出尽くした後で、それぞれのメリットやデメリットを考えながら選択したり、いくつかのアイデアを組み合わせて解決法を決定するのです。
ヒナタさんは次のようにアイデアを書き出しました。
・となりのコンビニで買ってくる
・同僚に手伝ってもらう
・近くのコーヒーショップに注文する
・家からコーヒーメーカーを持ってきて2台同時に抽出
・Uber Eatsに配達してもらう
・コーヒーメーカーをレンタルする
・ケータリングサービス業者に頼む
いろいろ出てきましたね。こんなふうに立ち止まってアイデアを出していくと、自分がいつもやっていたやり方以外にも、たくさんの方法があるとわかりますね。
結局ヒナタさんは上司に許可を取り、Uber Eats に配達してもらうことを選び、プレゼンの準備に集中することができました。







