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「ネットサーフィンがやめられない」原因は前頭前野が疲れかも スマホ依存を防ぐ5つのコツ

名郷根修(株式会社ハイパフォーマンス代表取締役)

2026年05月21日 公開

「ネットサーフィンがやめられない」原因は前頭前野が疲れかも スマホ依存を防ぐ5つのコツ

生活する上でなくてはならない物になっているスマホ。「SNSを見ていたら数時間経っていた...」という経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。

ついついスマホを触ってしまうのは、その人の意志が弱いからではなく、脳の特性であると語る株式会社ハイパフォーマンス代表取締役の名郷根修さん。本稿では、名郷根さんにスマホと上手く付き合うコツについて紹介していただきます。

※本稿は、名郷根修著『瞬動力』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

ネットサーフィンにはまらない仕組みづくり

まずは、現代人の多くが手放せないインターネットとのつき合い方について。仕事でもプライベートでも、今やネットなしの生活というのは考えられない時代です。そんな中で陥りがちなのがネットサーフィン。SNSやネットニュース、動画サービスなどを利用しているうちに、気づけば何時間も経っていた、という経験は、誰でも身に覚えがあることでしょう。

一度ネットサーフィンをはじめるとなかなかやめられないのは、脳の特性が大きく影響しています。ひとつずつ解説していきましょう。

【次の1回がやめられないドーパミン回路】

SNSやニュースサイト、動画サービスは、スクロールするたびに「おもしろい投稿」「つまらない投稿」「気になるタイトル」「たまに『おっ』と思う情報」など、「当たりハズレのある報酬」が流れていきます。

脳は、この「たまに当たる」仕組みにとても弱く、報酬系の伝達物質であるドーパミンが出やすくなります。特に「次こそ、もっとおもしろいものが見つかるかも」という予測が、ドーパミンを強く出させます。

その結果、「あと1回だけスクロール」「もう1本だけ動画を見る」が止まらなくなります。これはギャンブルで覚える興奮と同じで、一度習慣になってしまった人にとってはなかなかやめられないものです。

【スマホが「やめる力」を奮っていく】

理性や判断をつかさどる脳の前頭前野は、「そろそろやめよう」「本来やるべきことに戻ろう」とブレーキをかける役割を持っています。ところが、スマホで次々と新しい情報をチェックしていると、「続けるか、区切るか」という小さな判断と、「目の前の情報を読むか、スキップするか」という選択を、無意識のうちに何度もくり返すことになります。

すると前頭前野が疲れてしまい、「やめる判断」より「流される選択」が強くなるのです。それが「やめないといけないのにやめられない」という状況を生み出しています。

【新しい情報への本能的な弱さ】

人間の脳は、もともと危険やチャンスをいち早く察知するために新しい情報に強く反応するようにできています。これは、生存のために備わった大切な機能です。「最新」「トレンド」「いま話題」といったワードや、SNSの赤い通知バッジや新着マーク、リアルタイム更新の表示などは、まさにこの本能を刺激します。

感情と警戒反応をつかさどる扁桃体が反応し、「見逃したら損をするかもしれない」という無意識の不安が生まれ、その不安を消すために、ついタップしてしまう。これも、ネットサーフィンをやめづらい大きな理由です。

【終わりがない設計が脳をハマらせる】

区切りがない設計もネットサービスの特徴です。SNSも動画サービスも、スクロール、自動再生、次のおすすめ表示などの機能が備わっており、コンテンツが途切れることなく流れていきます。つまり、「ここで終わり」という明確な区切りがありません。

脳は本来、区切りがある行動は終わらせやすく、区切りが曖昧な行動は続けやすいという性質を持っています。その結果、少しだけのつもりが、気づけば想定より長い時間が過ぎている――そんなことが起こります。

このように、ついネットサーフィンにはまってしまうのは、あなたの意志が弱いからではありません。脳の仕組みとサービス側の設計がピタリとかみ合い、離れづらい状態がつくられているのです。このため、本稿では「我慢してやめる」のではなく、「そもそも、はまりにくい状態をつくる」アプローチを実践していきます。

 

スマホとのつき合いを見直す5つのバリア

スマホをつい触ってしまうのは、あなたの意志が弱いからではありません。スマホが「脳が楽しいと感じる回路」と「注意のクセ」を刺激するように設計されています。つまり、ひきつけられてしまうのは、ある意味で自然なことです。であれば、対策も「我慢する」という意志に頼るのではなく、仕組みで行うのが正解です。

①物理的に届かない場所に置く(距離バリア)

スマホを見ないもっとも有効な方法が、これです。

実は、スマホは目の前にあるだけで脳に影響を与えます。視界に入るだけで扁桃体が反応し、前頭前野にも負荷がかかり、無意識のうちに「少し触れて気分転換しよう」という選択肢が浮かびやすくなるのです。机の上やポケットの中など、手を伸ばせば届く範囲にあるだけで、その誘惑はぐっと強まります。

行動科学の研究でも「物理的な距離を離すだけで衝動的な行動は大きく減る」と報告されています。おすすめとして、作業中にスマホは「手の届かない場所」に置きましょう。

②スマホを誘惑の少ないモードにする(通知バリア)

通知は、脳の「新しい情報に反応する本能」を強く刺激します。画面に表示が出るだけで、「今すぐ確認したほうが良いかもしれない」という感覚が生まれ、注意がそちらへ引き寄せられます。

だからこそ対策は、とてもシンプルです。「目に入らない状態をつくる」ことです。アプリの通知やロック画面の表示は、原則オフにする。仕事に直接関係のないアプリはフォルダにまとめるか、ホーム画面から外して視界に入らないようにします。

さらに、メールやメッセージは1日のうちチェックする時間を決めます。通知が減るだけで、脳は余計な判断をしなくて済むようになります。その結果、集中力は自然と回復します。

③アプリを開きにくい状態にする(アクセスバリア)

行動は「簡単さ」に大きく左右されます。ワンタップで開ける環境にある限り、無意識のうちに手が伸びてしまうのは自然なことです。このため、アクセスにひと手間を加えます。

・SNSやニュースアプリは2ページ目以降に配置する。

・スマホからSNS、YouTubeなどのアプリをアンインストール。パソコンでしか閲覧できないようにする。

・パスコードを少し複雑にする。

④代わりの行動を最初に決めておく(置き換えバリア)

禁煙のために煙草の代わりにガムを噛む、休肝日をつくるためビールの代わりに炭酸水を飲む、といった具合に、行動科学では、やめたい行動をなくすために「別の行動に置き換える」ことが効果的だとされています。

同じ考え方をスマホにも活用します。スマホに手が伸びそうになったら、あらかじめ決めておいた行動を行うのです。たとえば、

・5秒ルールを取り入れる。

・深呼吸を1回する。

・姿勢を正す、肩を回す。

・タイマーで5分だけ作業する。

こうした置き換え行動をひとつ決めておくだけで衝動が弱まります。

⑤ネットを見る時間を「枠」で決める(行動バリア)

私は、情報収集が必要な仕事柄、ネットを見る時間はゼロにはできません。大切なのは、「見るか・見ないか」ではなく、「どう管理するか」です。そこで意識しているのは、枠で時間を管理することです。たとえば、

・情報収集は「1日合計◯分まで」と上限を決める。

・ニュースチェックは朝と夕方の決まった時間帯に行う。

・15分後を知らせるように、スマホのタイマー機能をかけておく。

このように、使う時間を先に決めてしまいます。枠があるだけで、脳は自然にここまでと区切りをつけやすくなります。その結果、ダラダラと続く時間が減り、情報収集も目的ある行動へと変わっていきます。

 

「未来の自分にプラスになるか?」という視点を持つ

ネット上には膨大な情報があふれています。それ自体が悪いわけではありません。問題は、「すべてを拾おう」としてしまうことです。これが脳を最も疲れさせます。

そこで私は、情報に触れるときにひとつの問いを持つようにしています。「これは、未来の自分にプラスになるだろうか?」この問いを挟むだけで、情報との距離が自然と整います。たとえば、

・ブックマークは「具体的な行動につながりそうなもの」を選ぶ。

・SNSのフォローは「見たあとに前向きな気持ちになる人」にする。

・スクロールを始める前に、「何を探しているのか?」を一度確認する。

情報をすべて遠ざける必要はありません。選ぶ意識を持つだけです。この基準があるだけで、ダラダラと流される時間は大きく減ります。不要なノイズが減ると脳のメモリに余白が生まれ、本当に必要な情報が入りやすくなります。

プロフィール

名郷根修(なごうね・しゅう)

株式会社ハイパフォーマンス代表取締役

エグゼクティブコーチ。Rotterdam School of Management, Erasmus University 経営学修士(MBA)
米国戦略コンサルティングファーム、グローバル医療機器メーカーで勤務経験後、起業家育成の第一人者であり、Strategic Coach社を創設したダン・サリヴァン氏に師事し、同社が提供している10x Ambition Programを卒業した唯一の日本人。
現在は、「コーチング」と「認知科学」を掛け合わせた再現性の高いコーチングを提供する株式会社ハイパフォーマンスほか、3社の経営に携わっている。続かない人でも結果が出る独自の「3週間メソッド」を提唱。先延ばしグセに悩むビジネスパーソンに対し、短期間で行動習慣を定着させる実践的アプローチに定評がある。著書に、『10x 同じ時間で10倍の成果を出す仕組み』(日本実業出版社)、『英会話は3週間だけ続けなさい』(アルク)など多数。現在はYouTubeでもコーチングや生産性を上げるコツを発信している。
X:https://x.com/shunagone

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