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生き方

他人との比較をやめて、自分らしい人生を送るための「2つの問い」

関屋裕希(東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員)

2026年07月16日 公開

他人との比較をやめて、自分らしい人生を送るための「2つの問い」

SNSを開くたびに、誰かのキラキラとした日常が目に入り、自分の毎日が色あせて見える...そんな経験はないでしょうか。他者と自分を比べ続けていると、いつの間にか「自分はどうしたいのか」という感覚まで見失ってしまいます。大切なのは、誰かの基準に合わせることではなく、自分の軸に立ち返ることです。書籍『自分に優しい時間の使い方 仕事が終わらないのはだれのせい?』より解説します。

※本稿は関屋裕希著『自分に優しい時間の使い方 仕事が終わらないのはだれのせい?』(日経BP)より一部を抜粋・再構成したものです。

 

「他者と自分の違い」に注意を向けるのは自然なこと

私たちは日々、気づかないうちに「他者と自分を比べる」という行動を繰り返しています。

特にSNSの台頭によって、それまでは出会うことのなかった人たち、垣間見えることのなかった時間の過ごし方まで見ることができます。

目覚ましい成果や素敵なライフスタイル、充実した日常が並ぶのを見ると、ふと自分の生活が色あせて見えたり、「もっとがんばらなければいけない」、「自分はいったい何をしているんだろう」という考えがよぎることもあるでしょう。

「比較する」という行為そのものは、本能的な側面もあります。

心理学では「社会的比較」と呼ばれています。社会心理学の分野で研究されている概念です。

人類が生存競争の中で、環境や仲間とのバランスをとりながら進化してきた歴史を考えると、「他者と自分との違い」に注意を向けるのは自然な行動です。

私たちが他者と自分を比べるのには、理由があって、一概に悪いことというわけではなく、一定の機能を果たしています。

ひとつ目の機能は、「自分のことを正しく理解したい」という欲求を満たすためです。

「自分は○○が得意」というのも、他人と自分を比べて初めて気づけることです。

ふたつ目の機能は、他者を見て新しいことを学んだり、社会的な規範やルールを身につけることです。

3つ目の機能は、自尊心を守る機能で、自分が苦しいときに「もっと大変な人もいるのだから、自分はまだ大丈夫」と言い聞かせたり(これだけ聞くと嫌な感じかもしれませんが、それで心を守れることもあります)、自分より少し優秀な人や幸せな人と見比べて、「あの人みたいになれるようにがんばろう」と思うことで、自尊心を高めようとしたりします。

「他者と自分を比べる」というと、よくないことのように聞こえるかもしれませんが、ここで紹介したように、私たちにとって、大事な機能・役割も果たしているのです。

 

「他者との比較」を手放してみる

けれど、現在のように情報が過剰に流れ、SNSなどで他人の「切り取られた部分的な時間」が可視化されている社会には、比較が加速して、苦しみを生みやすくなっています。

他者との比較は自分の価値を「誰かの基準」に預ける行為でもあります。

しかも、その「誰か」は実態のない「世間」や、「社会の理想像」であることが少なくありません。他者と比較することは知らず知らずのうちに、自分の軸を他者に明け渡すことになるのです。

自分が大事にすると決めたこと、自分の感覚を優先して選んだことならば、他者と比較したときに、中途半端のように思えたとしても、続けていいのです。自分がやっていて満たされるのであれば、他者と比べて中途半端な面があっても、がっかりしてやめる理由にはなりません。

SNSの自分の見たいもの、好きなものだけが表示されるアルゴリズムによって、フィルターバブルと呼ばれる現象が起こり、同じような情報ばかりが集まり、「これが普通」、「これが成功」、「これが幸せ」といった価値観が偏って強調されていきます。

さらに問題なのは、比較することで、自分のことも他者のことも正しく見られなくなるというところです。

誰かの表面的な成果や明るい瞬間だけを見て、「この人はすごい」、「自分はだめだ」と判断するとき、私たちは、その人の努力や痛み、失敗や悩みといった多様な側面を見ることなく、「見せている面」や光の当たっている部分だけで理解してしまいます。

そして、自分に対しても同じように、一面だけを見て「自分には価値がない」と決めつけやすくなってしまうのです。

比較は、自他双方への認知を濁らせます。

他者比較をしているとき、表面的には「他人のことばかり気にしている」ように見えるかもしれませんが、実際には「自分がどう見られているか」を気にしているのかもしれません。

社会の中での自分の立ち位置、評価、期待......その目線の根っこには、自分に対する不安があるともいえます。

まずは、自分自身の軸に立ち返ってみましょう。

他者の光と自分の陰を比べるのではなく、自分がどうしたいのか、どんな時間に満たされるのか、何に喜びを感じるのか。それは他者の基準とは関係がありません。

誰かに認められることではなく、「自分にとって大切なことを、自分で知ること」、それが比較を手放して、人生に本当の意味での自由と納得感をもたらします。

他者との比較から抜け出す問いがあります。

「今従おうとしているのは誰の価値観?」
「"こうすべき"と思っているのは、自分? 社会? 過去の誰か?」

比較していることに気づいたら、こう問いかけてみてください。

 

プロフィール

関屋裕希(せきや・ゆうき)

東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員

博士(心理学)・臨床心理士・公認心理師。早稲田大学文学部心理学専攻卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了後、2012年より現所属にて勤務。働く人のメンタルヘルスを専門に、研究・カウンセリング・企業支援を行う。学生時代は、マインドフルネスを専門とする研究室に在籍し、大学院時代は感情の研究を行う。現在は、ポジティブ心理学、組織心理学、認知行動的アプローチ、マインドフルネス等をベースに、ワーク・エンゲイジメントやウェルビーイング向上プログラムを開発。現場で多くの「ちゃんと休めない」、「時間に追われる」悩みに触れる中で、時間を“効率”だけでなく“体験”として整える重要性を探究している。著書に『感情の問題地図』(共著)、『モチベーションの問題地図』(いずれも技術評論社)ほか。

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