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なぜ真面目な人ほど搾取される?「舐められやすい人」の共通点と対策

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2026年06月23日 公開

なぜ真面目な人ほど搾取される?「舐められやすい人」の共通点と対策

真面目に生き、他人のために尽くしているのに、なぜかいつも騙されたり利用されたりしてしまう。
「こんなに頑張っているのに、報われないのはどうしてなのか」――その原因は、心の中に潜む「弱さ」や「劣等感」にあるのかもしれません。
本記事では、過酷な環境を生き抜いた「レジリエンス(逆境を乗り越える力)」を持つ人々の言葉を手がかりに、ずるい人に搾取され続けるループから抜け出すためのアプローチと、人生を変える「決意」の重要性について解説します。

※本稿は、加藤諦三著『「なんとなく不安」が消える本』(PHP文庫)より一部抜粋・編集したものです。

 

「受け身の人」の人生はなぜうまくいかないのか

「自分はこんなに被害を受けた」と言ってばかりいる人がいる。
しかし、もしそれが本当なら、その被害を乗り越えて、自分が今日あることを誇れるはずである。
それだけの困難を乗り越えて今日、自分があるのは、その人の素晴らしい力の証明なのである。

そのように自分の過去を誇れないで、被害を受けたことばかり言っている人がいる。その人はもしかすると、実際にはそれほど被害にあっていないのかもしれない。
いつまでも文句をいう人は、単に神経症的愛情要求が強いから、被害にあったように思い込んでいるというだけのことかもしれない。

もう一つの可能性がある。
受け身の人である。
相手との関係を常に被害者意識で解釈する。
そうでなければ、周囲の人から受けたひどい仕打ちを思いだしながらも、「それを乗り切った私」に対する誇りがあっていい。

人生にはいろいろなトラブルがある。問題は、そこから何を学ぶかということである。
「あの人からこんなひどい仕打ちを受けた」ことから、「自分は何を学んだか」ということである。

レジリエンスのある人は、どのような経験であれ、自分の経験から多くの情緒的なものを獲得する(註1)。

ヒギンズは「レジリエンスのある人は、少ないガソリンで走行距離が長い」と言っている。ガソリンが体験である。
いつまでも文句を言っている人は、ガソリンが満タンなのに走らない車みたいなものである。エンジンが故障している。

ヒギンズの著作に出てくる少女シーボンは、いつも母親から「お前は腐っている、お前は馬鹿だ」と言われていた(註2)。
でもシーボンは、いつも聞こえてくるその声を信じなかった。

ある日本人女性は、母親に「お前は学年一のブスだ」と言われて立ち上がれないほど傷ついた。そしてそのひどい母親の支配から逃れられなかった。

シーボンは、そこがすごい。
普通の人は、その破壊的メッセージで生涯を苦渋に満ちたものにしてしまう。
おそらく、本当にひどい親だから「信じなかった」のであろう。
恩着せがましい親なら、先ず自分は素晴らしい親だと子どもに思い込ませて、その上で「お前のために、私は苦労している」という。

父親の性的虐待が始まってからも、「私はいつも私の人生を計画していた。私はいつもそこから出ようとしていた。もっとよいところに行こうとしていた」と言う(註3)。
シーボンは、7歳になる時には「どこかもっとよいところがあると知っていた」という(註4)。

健康な人は、環境の勝利者である。働き、愛し、遊び、そして生じてくる問題を効果的に解決する(註5)。
レジリエンスのある人は、自分は過去に犠牲者であったと認識しながらも、同時に自分を今は犠牲者と見ていない。
むしろ、それよりも自分は幸せのエージェント「agent=代表者」であると信じている。

 

過酷な環境を生き残った者の誇り

「私は自分を犠牲者と見ない。私は生存者だ。
最善を尽くして困難と戦い、栄えたもの以上の存在である」

これはシーボン同様、ヒギンズの著作にたびたび出てくる少年ダンの言葉である(註6)。
ダンは父親の殴打が怖かった。殺されると思った。
その過酷な環境で生き延びたダンは、「私は成功者だ、犠牲者ではない」という(註7)。
「犠牲者とは、過酷な逆境の中で立ち上がれない人である。痛みと苦しみに閉じ込められている人である。私の人生に起きたことではない(註8)」

全てを吞み込む洪水のような残酷さの中で、彼は殺されるよりも強くなることを選択し、生き残った。
そして彼は自分に誇りを持った。
ダンは「私はどのようなことでも向き合える」と言っている(註9)。

 

逆境から逃げる人の末路

私は以前、『人生の重荷をプラスにする人、マイナスにする人』(PHP文庫)という本を書いた。
その本に書いたことの一部を、レジリエンスという視点から考えてみたいと思う。

すべての人が周囲の人からひどい仕打ちを受けているわけではない。
自分がひどい仕打ちを受けてしまうのは、もしかしたら自分の側にも何か問題があるからかもしれないという反省が必要である。
その反省がなければ、いつまでも同じようなひどい仕打ちを受け続けることになる。

確かに世の中には、一生懸命働いても一向に経済的に楽にならない人が沢山いる。
真面目に生きていながらも、なぜか不幸が続いてしまう人も多い。

贅沢もしないでただただ真面目に働き、節約して貯めたお金を、誰かに騙されて吸い上げられてしまうような人がいる。
コツコツと働き、毎月几帳面に貯金をし、貯まったところで、親戚から「お金を貸してくれ」と頼まれて貸してしまう。そしてその後、お金は返ってこない。

またコツコツと生真面目に働いて努力してお金を貯める。
しかし今度は、事業に失敗した兄から頼まれて貯金をはたいてしまう。貸したくないのだが断われない。
一生真面目に働きながらも、財産といえるようなものはない。しかもそれだけ人のために尽くしながら、誰からも感謝されない。

親戚の人に会っても、彼らは「有難う」一ついわない。
兄に会っても「迷惑をかけたな」という言葉一つない。
こんな時に「あんなにしてあげたのに、有難う一つ言わない」とその親戚の人や兄を恨んでいても、事態は一向に改善されない。
おそらくまた同じような何かが起きる。

たとえば娘の夫が仕事を始めるに当たって、借金の連帯保証人になってくれと頼まれる。
「絶対にお父さんには迷惑をかけません」と言われて、よく調べもしないでハンコを押す。
そして結果はどうなるか。
たいていは自分たちが住んでいる家屋敷まで、借金のカタに取られてしまう。

一生真面目に働き、何も悪いことをしないで、人のためにお金を使い、その上で周囲の人に舐められて、軽く見られている人は多い。
コツコツ働いたお金を全て、人に吸い上げられて、それでいながら誰からも尊敬も感謝もされないという人がたくさんいる。

離婚した親戚の子どもの養育費を、毎月送りながら生活していた人がいる。真面目で正直で努力家である。自分は飲みたい酒も飲まないで節約しながら、姪をせめて高校だけは卒業させてあげなければと、頑張って仕送りをしていた。

それだけ日々人のために努力しながらも、姪は卒業しても感謝を表さない。
会ってもやはり「有難う」を言わない。
その母親も「有難う」を言わない。それどころか、高校を卒業してから仕送りを止めたことを不服にさえ思っている様子である。

この人はどこかで「自分の生き方に問題があるのではないか」という反省をしなければ、またこのひどい仕打ちは繰り返される。
死ぬまで働いて、死ぬまで搾取され続ける。

先に挙げた少女シーボンは、搾取され続ける側から抜け出すために大切なことを述べている。

「私の持っているものの中で最大のものは、決意である(註10)」

死ぬまで働いて、死ぬまで騙され続ける人には、この決意がない。

今、述べたような真面目な人で、働き続けて騙され続けて、その上に周りの人から馬鹿にされ続けてしまうのは決意がないからである。

「やり返そう」ともせず、被害者意識で物事を解釈している人は、もともと自分が正面から直面しなければならない困難と戦わなかった。
逆境を乗り越えたのではなく、むしろ逆境から逃げた。自分が周囲の人に気に入られたいから、無意識のどこかに自分から、ずるい人を引き寄せた部分があったに違いない。

経済的に利用されてしまう人、心理的に虐待される人、すぐに騙される人、それらの人にはやっぱりどこか弱さがある。その弱さに、ずるい人から付け込まれるのである。

まさに、ずるさは弱さに敏感である。

 

戦わない人は舐められる

世の中にはずるい人は沢山いる。
ずるい人は皆、弱い人を食い物にして生きていこうとしている。

弱い人は、基本的には淋しい人なのかもしれない。
そこで相手の好意が欲しくて、ついつい失礼な要求にも「いい顔」をしてしまう。断わって「冷たい人」とか「利己的な人」と言われるのが怖い。

戦わないでいると、自分が舐められていることに気がつかない。嫌われることが怖くて、他のことは考えられない。
ただ「好かれよう」とばかりして、相手を見る心のゆとりがない。

淋しいから誰とでもいい関係でいたい。
そういう人は自我の確立がなくて、孤独に弱い。
アメリカの心理学者ダン・カイリーは「孤独は商業主義のカモである」と言うが、「孤独は商業主義のカモ」であるだけではない。「全てのずるい人のカモ」である。

たとえばこうして長年、人から利用されてばかりいる人が、
「自分は愛情飢餓感に苦しめられているのだ」
「自分は心理的成長に躓いている」
などと気がつかないかぎり、また同じように誰かに利用される。

これらの事態は、レジリエンスのある人が成長する過程で乗り越えなければならない逆境とは違う。
むしろ本当に直面しなければならないことは、自分はこれらの人々に軽く見られているという現実である。

困難を乗り越えるということは、人から嫌われたくない、気に入られたいという自分の弱さに直面して、それを乗り越えるということである。自分について熟知している人が、困難な環境を乗り切れる。厳しい状況を切り抜ける。

淋しい人は「お金では感謝も尊敬も得られない」ということが分からない。感謝や尊敬が欲しくて、それを求めてお金を使ってしまう。
「頭を下げても感謝も尊敬も得られない」ということが分からない。
今、述べているような人と、レジリエンスのある人とどこが違うかというと、それは劣等感があるかないかである。

いつも騙される人、いつも軽視される人には、深刻な劣等感がある。だから、相手のそれらの行動を許してしまう。

全ての行動はその劣等感を癒すための行動である。
その点に気がつき、レジリエンスのある人に学ばなければ、地獄から抜け出すことは出来ない。

カモにされて利用されていることを、仲間から頼られていると解釈する。感謝や尊敬が欲しくて、やたらに頭を下げてしまう。
周りに集まってくるのは質の悪い人ばかりである。
だからお金を使っても使っても、皆から軽く見られるのである。頭を下げても下げても、皆から心の中では侮辱されるのである。

ずるい人にとって、弱い人間は決して尊敬や感謝の対象にはならない。どんなことをしてあげても尊敬や感謝の対象にはならない。固有の人間として扱われない。利用の対象にしかならない。

(註1) “In fact, the resilient get unusually good emotional mileage out of virtually any experience they encounter.”Gina O’Connell Higgins, Resilient Adults-Overcoming a Cruel Past, Jossey-Bass Publishers San Francisco, 1994, p20.
(註2)“You are rotten, or you are stupid.” 同前、p40.
(註3) 同前、p40.
(註4)“anywhere is a better place to be.” 同前、p42.
(註5)“the healthy should be masters of environment-able to work, love, play, and be efficient in problem solving.” 同前、p55.
(註6)“I don’t see myself as a victim. I see myself as a survivor, who’s done more than just make the best of a difficult situation-someone who’s really thrived.” 同前、p59.
(註7) 同前、p59.
(註8)“I see myself as a successful person, not a victim. I think of a victim as someone who’sexperienced great difficulty and has never been able to rise above it but has remained locked in the pain and suffering. To me, that’s victim, and I’m not a victim at all. That’s not happened to me in my life.” 同前、p59.
(註9)“I can face almost anything.” 同前、p61.
(註10)“I guess the biggest things is the determination that I have.” 同前、p43.

プロフィール

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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