クリープハイプの尾崎世界観さんは、2001年にバンドを結成し、2012年のメジャーデビューまで長い下積み時代を送ってきたといいます。今の環境を「恵まれている」と話す尾崎さん。読者から寄せられた悩みと正面から向き合った『尾崎世界観のおなやみ天国』の刊行を機に、現在の心境と、悩みを抱える読者へのメッセージを語っていただきました。
分かり合えないから、長く続く関係もある
――本の中にあった「人と分かり合うのってすごく面倒くさい」、「分かり合えないことを大切に」という言葉が印象的でした。尾崎さんにとって、分かり合えないことを大切にする姿勢とは何だと思いますか?
【尾崎】本当に嫌だなと思ったら関係自体をやめてしまうことが多いので、今でも続いている人には感謝しているんです。
もしかするとそれは、分かり合えないからこそ長く続いているのかもしれない。ちゃんとずれているから、ぶつかり合わずに程よく気持ちのいい関係でいられるのかもしれない。分かり合ってしまったら、相手の思っていることが手に取るように伝わってしまって、そこで嫌になるかもしれないから。そういう意味でも、無理に分かり合わなくてもいいと思います。
でも、これが職場だったらやっぱり難しいですよね。無理してでも付き合わなければいけない。
こういう仕事をしていると、周りが気遣ってくれるし、自分が常に肯定されているような感覚になりがちです。だからこそ、気をつけなければいけないと思っています。
「尾崎世界観」の名前を見て、ある程度こういう人間だというのがわかった上で、悩みを送ってみようとなる。それが、いつでもなくなるような、危うい立場だと理解していないといけない。
今の自分はすごく恵まれている
――今は負担になるようなことがそこまで多くない状態、ということでしょうか。
【尾崎】嫌なことはいっぱいあるんですけど、全部自分のこととしてやれているから、すごく恵まれているなと思います。その分、自分の名前が出ない、自分のものじゃないところで頑張ってくれている人がいる。事務所のスタッフや、その他にも、周りで仕事をしてくれる方々。そう考えると、しんどいと思うこともあるんですが、とにかく恵まれたこの状況に感謝しなければと思います。
――今、恵まれているというお話がありましたが、その感覚を踏まえて、これからどんな心持ちで生きていきたいと思いますか。
【尾崎】特にここ最近は、いろいろ決められたことをやっているだけで時間が過ぎていってしまうという焦りもあって。かといって、何かを止めて新しいものに向き合おうと思っても、なかなか器用ではないので、その通りにはいかないんですよね。
なんとなく目の前のことに向き合っているだけで、それなりに満足してしまいそうな気がするので、ちょっと怖いですね。
悩みはいろんなところに話す方がいい
――最後に、どんな人でも何かしらの悩みを抱えながら生きていると思うんですが、そんな読者に向けてメッセージがあれば教えてください。
【尾崎】自分の中でまだ言葉になっていなもの。それを言葉にして確定させることで、悩みがどういうものなのかが見えてくる。だから、まず人に話すということが大事なのかもしれないですね。誰かに話そうと思えば、自然とそのことにも深く向き合えるはずです。
――漠然としたイライラを、「何でイライラしてるんだろう」と解きほぐすことにもなりそうですね。
【尾崎】なるべくいろんなところに話すのがいいと思います。確実に寄り添ってくれるであろう人と、もしかしたら思っているような答えが返ってこないかもしれない人と。解決するつもりで話す、というより、それを確かめるため、確定させるために、悩みの底の部分に触れるようなイメージです。
――寄り添ってくれる人だけでなく、思っている答えをくれない人など、いろんな人に相談した方がいいと思うのはなぜですか?
【尾崎】単純に、相談する回数が多い方がいいと思うんです。同じ答えばかりだとつまらないので。思いも寄らぬ答えが返ってきた時にショックを受けるのは、裏を返せば、自分がすでにどうしたいかわかっているということなんですよね。
違う答えが返ってきてイライラしたり、落ち込んだりするのも、自分の本当の気持ちを確かめるという意味では、大事なことなのかもしれません。はっとしたり、むっとしたりするその反応自体が、答え合わせになっている気がします。
(取材・構成:PHPオンライン編集部 片平奈々子)








