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頼るのは弱さではない 「まだ大丈夫」と頑張りすぎる人に臨床心理士が伝えたいこと

佐瀬りさ(臨床心理士)

2026年08月27日 公開

頼るのは弱さではない 「まだ大丈夫」と頑張りすぎる人に臨床心理士が伝えたいこと

「こころのことで専門家を頼るのは恥ずかしい」――日本では「メンタル不調は自分でなんとかするもので、頼るものじゃない」と考えられがちですが、臨床心理士の佐瀬りささんいわく、「頼ることは弱さではなく、大事なセルフケアの1つ」とのこと。本稿では、相談する大切さや専門家の選ぶ上でのポイントを紹介します。

※本稿は、佐瀬りさ著『こころの「安全基地」のつくりかた』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「まだ大丈夫」の中にある、こころの未病

「私は大丈夫だと思っていました」

「カウンセリングなんて、自分には関係ないと思っていました」

これは、私がこれまで出会ってきた多くの方が口にする言葉です。私たちは、「うまくいかない」「少ししんどい」と感じても、「これくらい普通」「みんな同じ」と、自分に言い聞かせて、気づかないうちに頑張りすぎてしまうことがあります。

たとえば、いきなり熱いお湯に入れば、「熱い」と感じることができますが、少しずつ温度が上がっていくと、その変化にはなかなか気づくことができません。それと同じように、自分の思うようにうまくいかないことや、しんどさを感じていても、次第にその状態に慣れていくと、「まだ大丈夫」と思えてしまうことがあるのです。

でも実は、「まだ大丈夫」と思っているときは、すでに身体やこころからのサインが出ているとき。自分の置かれた環境が快適な状態であれば、当然、「まだ大丈夫」という考えにはいたりません。もしあなたが、日々のなんとなくのつらさを感じながらも、「まだ大丈夫」と思っていたら...。それは、「こころの未病」かもしれません。

 

1人でなんとかしようと思わない

こころにたまったものを落とし、休息や睡眠で潤し、「快」で補い、境界線で守っていく。こうしたケアを、日々の中で重ねていくことで、少しずつ「これが自分」という感覚がはっきりしてきます。どう過ごすと自分が心地よいのかがわかり、自分らしい自分が育っていきます。

こころの中の「赤ちゃん」の声(湧きあがる感情や「こうしたい」という気持ち)を受け取り、それが実現できるように「お母さん」(自分の中にある「こうしたい」という欲求と「こうあるべき」という社会的な基準の間でバランスを取る存在)が調整し、支えていく。

そうしたやりとりの中で、自分の内側が安心できる場所になっていきます。それがあるからこそ、私たちは安心して外の世界とつながることができ、何かがあっても「きっと大丈夫」と感じられるようになります。それが、あなたの中の「こころの安全基地」です。

けれど、どれだけ丁寧にケアをしていても、うまくいかないときはあります。スキンケアでは、トラブルがあれば、皮膚科に行きます。今以上によくしたいときには、エステに通ったりもします。こころも、それと同じだと思ってほしいのです。

「いつもは落とせるものが、今日は落とせない」

「眠りの質が、いつもと違う」

「楽しいと感じられない」

「境界線がいつもより緩んでいる気がする」

そんな、小さな違和感を持ったたときや、「さらに整えたい」「もっとよくしたい」と感じるときには、ひとりでなんとかしようとせず、こころの専門家の手を借りる。それが、ここでいう「スペシャルケア」です。

私たちはこころのことになると、「これくらいのこと、自分ひとりでできるはず」「誰かに頼るほどのことじゃない」「もっと大変な人もいるのに」。こんなふうに考えて、ひとりで抱え込こもうとしてしまいます。とくに日本では、「こころのことは自分でなんとかするもの」という考えが、当たり前のものとして根づいているように感じます。

一方で、もしあなたの大切な人が同じようなしんどさを抱えていたら、「1人で頑張りなさい」と言うでしょうか。それとも、「誰かに相談してみたら?」と声をかけるでしょうか。きっと、多くの人が後者を選ぶのではないかと思います。どうか、自分にも同じ言葉をかけてあげてください。

こころのケアは、一人でやり切ることに意味があるわけではありません。あなたのこころが「快」でいられること。それがいちばん大切なことです。ひとりでそれができるなら、もちろんそれでOKです。でも、こころの専門家の力を借りながら、それができるのも、同じようにOKなことです。

誰かの力を借りることは、弱さではありません。自分を大切にするための、大事なセルフケアのひとつです。だからこそ、こころの専門家を頼ることも、もっと気軽に選択肢のひとつに加えてほしいと思います。

 

あなたのピッタリを探そう

こころのケアがうまくいかないとき、「専門家を頼ることが大切」とわかっていても、「では、誰に相談したらいいの?」という疑問が出てくるかもしれません。

実は「カウンセラー」という名前は、誰でも名乗ることができます。大学院で心理学を専門的に学び、実践やトレーニングを重ねてきた人もいれば、短期間の講座で資格を取得して活動している人もいます。だからこそ、「どこに行けばいいんだろう」と迷うのは、とても自然なことです。ここでは、いくつかの見てほしいポイントをお伝えします。

①どんな学びの背景があるか?

カウンセラーといっても、どんな学びをしてきたのかは人それぞれです。これまでどのような学びを積み重ねてきたのかを知ることは、安心して関わるための大切な手がかりになります。

②学びを続けているか?

カウンセリングの技術は、一度学べば終わりというものではありません。その人が、今も学びやトレーニングを続けているかどうかも、ひとつの大切な視点です。

・研修や勉強会に参加しているか

・よりよい関わりのために、指導や助言(スーパービジョン)を受けているか

・自分自身もカウンセリングを受けながら、内面と向き合っているか(教育分析)

こうした積み重ねが、セッションの質にもつながっていきます。

③好感が持てるか?

①②の視点と同時に大切にしてほしいのは「この人となら話してみたい」と感じられるかどうかです。私たちの中には、言葉になる前の感覚があります。「快・不快・好き・苦手」といった感覚は、あなたにとっての大切なサインです。

「なんとなく安心する」

「なんだか緊張する」

そんな感覚も大切な手がかりになりますので、自分の中の小さな感覚を大切にしながら、選んでみてください。

そして、もうひとつ大切なのは「調子のよいとき」「まだ何もないとき」にカウンセラーになってほしい人を探しておくということです。セルフケアのサイクルがうまく回らなくなってから、頼れる人を探そうとするのは、とても大変です。焦って選んでしまい、後悔してしまうこともあるかもしれません。

ただでさえ少ないエネルギーを、カウンセラーを探すために使い切ってしまい、もっとしんどくなってしまうかもしれません。だからこそ、少し余裕があるときに、「もしものときに相談できそうな人」を見つけておくことをおすすめします。もし、気になるカウンセラーがいれば、講演やセミナー、体験相談などに触れておくのも、1つの方法です。

プロフィール

佐瀬りさ(させ・りさ)

臨床心理士

1970年、新潟県生まれ。幼いころから「人の心」に興味を持ち、大学・大学院で心理学を学んだ後、臨床心理士となる。約30年にわたって学校などの現場でクライアントの困難に寄り添い、2018年に「こころサロン創」をオープン。現在もクライアントが自分らしく生きていけるようになることを大切にしたカウンセリングを続けている。

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