2026年9月5日(土)より、東京ミッドタウン日比谷ホールで、平子雄一氏の展覧会『HUMAN AND NATURE』が開催されています。平子雄一氏は「植物や自然と人間の共存」をテーマに絵画や彫刻などを制作されている現代美術作家で、韓国や台湾、イギリス、アメリカなど世界中で活躍されています。
9月12日(土)、イベントの一環としてワークショップが行なわれました。PHPオンライン編集部がワークショップを体験、その様子をリポートします。
(取材・撮影/PHPオンライン編集部・次重浩子)
テーマは「ものがたりをつくる」

この展覧会は、東京ミッドタウン日比谷の「BASEQ」が「東京ミッドタウン日比谷 ホール」にリニューアルされ、こけら落としとして開催されている記念イベントです。
東京ミッドタウン日比谷に向かってみると、あります、あります!正面入口前に平子さんの作品によく登場する「人のような身体に植物の頭部を持つモチーフ」のオブジェが!どーんと設置されています。顔が描かれていないので表情はわかりませんが、なんともいえずかわいいです。
生ドーナツ専門店「I’m donut?」とコラボ。平子雄一氏が描き下ろしたオリジナルデザインの限定ボックスで数量限定にてドーナツも販売
作品が展示される「ホール」は6階ですが、ワークショップは9階で開催されるとのこと。さっそく会場へ向かいます。
今回のワークショップのテーマは「ものがたりをつくる」。まずは参加者に厚紙でつくられた白紙の絵本のようなものが手渡されます。ページ数は、表紙・裏表紙を除けば8ページ。制限時間は2時間です。絵にはまったく自信がない私ですが、大丈夫かな...?
「まずは展覧会を一緒に観に行っていただきます。いろいろなモチーフがありますので、“これは”と思うものを選んでいただいて、それを使って自分なりにお話を拡げていってください」と平子さん。参加者のみなさんと6階の展覧会場へ移動します。
人間は自然とどう付き合っていくのか

会場の中央に置かれた集合作品
平子さんの作品は、本や車、木や花、犬、猫、野菜、果物、花瓶、カバンなど、生物・無生物を問わず、さまざまなアイテムがいっしょくたになってひとつの作品を形成しています。色合いが鮮やかで、フォルムがころんとしていて一つひとつがかわいらしいです。気になったものをスマートフォンで写真に収めていくのですが、どのアイテムを絵本に採用するか、めちゃくちゃ迷いますね...。
そこへ本展の企画・監修をされた美術評論家の秋元雄史さんが登場。「平子さんの作品は、あらかじめストーリーを設定してあるわけではないので、自由に物語を組み立てられると思います。悪夢でもいいし、ハッピーな夢でもいい。できるだけ妄想をふくらませてください」とのこと。

参加者たちは平子さんや秋元さんにお話を伺いながら、展示会場を見て回ります。会場の中央に置かれた、ひときわ目をひく集合作品は、木材として加工された厚さ2cmの桐の板を貼り合わせ、チェーンソーで彫刻したのだそうです。
展覧会のタイトル『HUMAN AND NATURE』に込めた意味を平子さんに伺ってみると、「自然に対して、人はまず人間ありきでしか考えられないですよね。人間は自然とどう付き合っていくのか。利用するのか、守っていくのか。そういうことに思いを馳せられるような展覧会にしたかったのです」とおっしゃっていました。
木をそのまま彫刻するのではなく、人間が利用するために加工された木材をあえて使用されているところに、テーマが内包されているのを感じますね。
平子雄一さん(左)と秋元雄史さん(右)
無理にストーリーを作ろうとしなくてもいい

ワークショップ参加者の方の作品
20分ほど観覧したあと、いよいよ9階のワークショップ会場へ戻り、絵本制作をスタート。しかし作品鑑賞に心を奪われてしまったので、ストーリーがなにも浮かびません!!
「無理にストーリーを作ろうとしなくてもいいんですよ。たとえば1ページ目に本を3冊書く。次のページは4冊、次は5冊と増やす。色も変えていく。3ページ目はモノトーンにする。次のページで本は消えている...そんな構成でも、見た人はなんとなくストーリーを想像するでしょ?」と平子さんにアドバイスをいただきました。ストーリーはまったく浮かばないけど、撮った写真を見ながら、かぼちゃや猫を無心で白いページに描いていきます。
作品の画像を見ながらスケッチしていると「この木の表面、けっこうぼこぼこしてたんだ」など、初見では気づかなかった細かい部分に目が行くようになってきました。また「この猫はどうしてこんな表情なんだ?」「この人に違うポーズをさせてみたい」とストーリー的な発想も湧き出てきました。
制作に与えられた時間は1時間30分ほど。みなさん黙々と絵本作成を進めています。「そういえば、大人になってから絵を描く機会ってほとんどないな」などと思いながら、ひたすら白い紙に向かって色を重ねていくと「無」になって心が洗われるようです。こういうひとときもいいですね。
イベント終了の時間が近づき、席が近い人同士で作品を披露し合います。「これを題材にしたんですか。おもしろいです」「ちゃんとストーリーになってますね。お上手!」と感想が行き交っていました。
あらかじめストーリーを作ってから作業を始めた方、「とにかく思いつきで描きました」という方、モチーフを色鮮やかにページいっぱいに描いている方、ほとんどモノトーンでマンガのように構成されている方などいろんな方がいて、作品もそれぞれです。
思考してもらう「装置」としての作品
会場内に置かれたピンボール。ボールとしてはじくカプセルにはオリジナルフィギュアが入っている。秋元さんが挑戦!
平子さんは、どうしてこのようなワークショップを開催しようと思われたのでしょうか?
平子:「みなさんと作品との距離を近づけたかったんです。観るだけじゃなくて踏み込んでほしかった。『ものがたりをつくる』を課題にした理由は、ストーリーを自分で作り出すと『自分のもの』になるから。
実際にやってみておもしろかったですね。今後の私自身の制作を考えるうえでも『伝えて終わり』じゃだめなんだなと感じました。作品に触れていただいて、みなさんが何を心に秘めて持って帰るのかも大事だと思ったんです。単純な感動だけじゃなく、感情をゆさぶられたり、思考してもらう『装置』としての作品を作っていきたいと思いました」
和気あいあいとした雰囲気のなか、ワークショップは終了。
現代アートというと「何を表現しているのだろう」と受け身になりがちですが、作品を自分の物語に登場するアイテムとして取り込むのは新鮮な体験でした。『HUMAN AND NATURE』展は10月18日(日)まで。「自分なら物語をどう作るかな?」と考えながら鑑賞してみるのもおもしろいかもしれません。

『HUMAN AND NATURE』
【会期】2026年9月5日(土)~10月18日(日)※会期中、休館日なし
【開催時間】11:00~20:00(最終入館 19:30)
【会場】東京ミッドタウン日比谷 6階 ホール
【住所】東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷
【入場料】
オンライン券:一般 2,000円/大学生・専門学生1,500円/中高生1,000円/小学生以下無料
当日券:一般2,200円/大学生・専門学生1,600円/中高生1,100円/小学生以下無料
※障がい者手帳をお持ちの方は、一般 1,500円/大学生・専門学生1,200円/中高生800円/小学生以下無料
その介助者(1名まで)は無料。(当日券のみ)
【公式サイト】https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/humanandnature.yuichihirako/







