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出でよ、突拍子もないベンチャー!

2013年08月02日 公開

蓑宮武夫 (TNPパートナーズ会長)

《『出でよベンチャー!平成の龍馬!』より》

 

 『日経ビジネス』特別編集版「次代を創る100人」(2012年10月8日号)に、私が伝えたい思いが「『ベンチャー大国』に日本がなるための五つの方策」として明示されていた。

 1 有能な「人材」を大企業から引き離す
 2 自分で人生を切り開く「気概」を国民が持つ
 3 リスクを負う者に「カネ」を回す文化を
 4 大企業がベンチャーを育む「仕組み」を作る
 5 起業家は最初から世界「市場」で勝負する

 まったく同感である。

 歴史を見れば、最初は「突拍子もない」と思われていた研究が、後に巨大市場を形成した例には事欠かない。
 1903年12月17日、米ノースカロライナ州でライト兄弟が世界初の有人動力飛行を成功させたとき、当時の科学者の多くが実験の信憑性を疑う声明を出したのは有名な話だ。その後の1世紀紀で航空機産業は急速に発達し、現在、世界市場規模は約 50兆円を超えた。
 半導体の性能と集積度は18カ月から24カ月ごとに2倍になる――。1965年、米インテル創設者の1人、ゴードン・ムーア博士が「ムーアの法則」を提唱した時、現実にそうなると確信した人は少数派だったはずだ。実際には、ほぼ法則通りに半導体産業は発展。IT(情報技術)の飛躍的発達の礎となった。 
(同、
『日経ビジネス』特別編集版「次代を創る100人」より

 突拍子もないベンチャーがどのくらい存在するかが国の未来を映す鏡だとすると、「出でよ、突拍子もないベンチャー!」と呼びかける前に「突拍子もない研究」が必要だろう。動力で空を飛ぶというような発想は航空機のない時代には突拍子もない考えである。エジソンの発明もいまでこそ原始的に思われるくらいだが、実験段階の当時はすべて突拍子もないものだった。

 私の周りにも、あいにくとものづくりではないが、「小田原の人は二宮金次郎のほんとうの功績を知らない」という歴史小説家がいる。小田原藩藩主で老中首座の大久保加賀守忠真が亡くなったとき、二宮金次郎、川路聖謨、間宮林蔵の3人が嘆いて述べたメッセージを「暗号」とみなし、解読して「二宮金次郎は日光御神領復興をやるという名目を利用して、陰でこっそり幕府財政再建をやり遂げた」と結論づけた人だ。もちろん記録にないし、判断がつかないから、いまのところだれもが半信半疑でいる。

 ましてや、

 「日本史の全面改訂は避けられないから、それが現実となったときには、ものすごいビジネスチャンスが生まれる」

 ここまでいわれると、かえって疑わしくなってしまう。

 「いまのところ気づいているのは私だけだから、ビジネスチャンスはゼロ。だから、早く気づいて、そのときに備えた人ほどチャンスが大きくなる」

 予言者という評価でもいいから、みのさん書いてくれというから書いているが、率直なところ、私などは教科書の日本史しか知らないし、それを「要改訂」とされたら判断のしようがない。結局、判断ぬきにして「教科書日本史」の書き換えが現実になったらという仮定でいうと、関連する印刷物はことごとく刷り直しになるから、ビジネスチャンスがかなりのレベルで生まれるのは確かである。

 なるほど、突拍子もないというのは、こういうことなのか。

 お陰でそれが実感できた。

 考えてみれば、

 「ほほ80パーセントが健康だとされる高齢化社会のどこが問題なのか。むしろ、ものすごい可能性を秘めているというべきではないのか。パラダイムをちょっとシフトするだけでよい。課題イコール即ソリューションである」

 私が本書『出でよベンチャー!平成の龍馬!』で提示した考えも突拍子もないことかもしれない。けれども、それが現実になったらどうだろうか。

 日本のみならず、アメリカでも小さなベンチャーが第二のアップル、第二のソニー、第二のホンダになろうかという動きが加速されている。それとは異質な動きとして、ユヌス博士が提唱したソーシャルビジネスが加速している。利潤の追求を目的としてスケールアップを目指すベンチャーと社会問題解決を目的としたソーシャルビジネスベンチャーでは展開の仕方が異なるから、これから起業しようとする人には選択肢の幅が広がってよい。ソーシャルビジネスは規模が小さいから、ユヌス博士のように1人で50を超すビジネスモデルをつくり出すことも可能だ。

 大きさを追求するか、多きを追求するか。

 いずれにしても、そうした違いではなかろうか。

 これまでは個人を対象にして意見をまとめてきたが、大企業も、若い社員の仮に3パーセントだけでも、積極的にアジアやアフリカに送り出して、経験を積ませて学ばせる、こういう試みをしたほうがよいと思う。それには当然失敗やミスがついて回るから、減点主義をやめて加点主義に切り替えていく。弱まっているという企業力を強化することにもなるはずである。

 さて。

 ものづくりニッポンのビジネスパターンは戦後の復興の中から「挑戦者たち」がつくり上げたものだ。NHK『プロジェクトⅩ挑戦者たち』でその一端が紹介されてきたから、いまさら説明する必要はないと思う。

 そうしたなかから反省の弁らしきメッセージを抽出すると、ソニーの創業者井探大さんの次のコメントが真っ先に思い出される。

 功なり名を遂げた最晩年の井深さんに次の質問をした者がいた。

 「いま、何を一番やりたいですか」

 「小さい会社をつくって、またいろいろとチャレンジしたいね」

 それが亡くなる直前の井探さんの答えだった。

 メッセージは言葉をつなげて成り立つわけであるが、単に単語の意味の和ではなく限りなく意味が無限大に近づくよう工夫がこらされている。言葉の意味は辞書を調べればわかるが、メッセージの意味は解読する人によってかなり違ったものになる。

 わかりやすくするために京セラ名誉会長の稲盛和夫さんのコメント「おできと中小企業は大きくなるとつぶれる」と対置し、行間を探ると、「中小企業の最大にして最高の強みは血のめぐりのよいこと」だと気づく。

 すると、どうなるのだろうか。

 ソニーもかつては「七人の侍」から出発したベンチャーだった。血のめぐりがすこぶるよくて、とうとう「世界のソニー」といわれるまでにスケールアップした。ただし、それに見合うスキルアップができていたか。

 ものは有限であるばかりでなく、ものに対するニーズもまた有限なわけだから、「盛者必衰の理」からは逃れられないわけで、井深さんと稲盛さんにはそれがちゃんとわかっているわけである。

 ベンチャーよ、永遠なれ。

 しからばベンチャーよ、ベンチャーであれ。

 すなわち、井深さんのメッセージは会社が大きくなることより、「血のめぐりのよさ」を大切にすることを優先させていることにはならないだろうか。

 規格のガラパゴス化、産業の空洞化、テクノロジーを売上につなげるのがヘタクソになったとか、日本のものづくりにとって不利なことばかりいわれるが、マルチチャンネルで方向を探っていくようにすれば、可能性はいくらでも生まれてこよう。


<書籍紹介>

出でよベンチャー! 平成の龍馬!
若者は突き出ろ、シニアは知恵を出し切れ

蓑宮武夫 著
本体価格 1,500円
 

第二のソニー、ホンダは現れるのか? 独創的な知恵や技術で台頭する平成のベンチャー企業を紹介! 日本経済復活への道筋を示す。


<著者紹介>

蓑宮武夫

(みのみや・たけお)

1944年生まれ。神奈川県小田原市出身。早稲田大学卒業。ソニー〔株〕入社後、初期のトランジスタの開発、製造を担当し、その後、ビデオ機器・パソコン機器の設計から半導体の開発まで幅広く手がける。その中には、パスポートサイズの『ハンディカム』、最後発で参入したパソコン『VAIO』などがある。
生産技術研究所所長、レコーディングメディア&エナジーカンパニープレジデントを歴任。1999年より執行役員常務としてコンポーネントや半導体事業を統括した後、2001年より執行役員上席常務として品質管理を統括するCo-CQO(チーフ・クオリティー・オフィサー)、設計・生産・カスタマーサービス・資材調達を一貫して提供するソニーイーエムシーエス〔株〕副社長を兼任し、ソニーのものづくりの根幹業務に貢献。
2005年、ソニー退社。2006年2月に〔有〕みのさんファームを設立し、代表取締役に就任。2008年、〔株〕TSUNAMI ネットワークパートナーズ(現TNPパートナーズ)取締役会長に就任。2012年、ほうとくエネルギー〔株〕代表取締役社長に就任。ソニー時代の経験とネットワークを活かし、数多くの企業の成長をサポートしている。
〔株〕タムラ製作所取締役(社外)。ソニー龍馬会前会長。小田原藩龍馬会顧問。
著書に『されど、愛しきソニー』『ビジネスマン龍馬』(以上、PHP研究所)がある。


 



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