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大東建託前社長・三鍋伊佐雄の“弱者が勝つ戦略”~「心の納期」とは

2013年09月06日 公開

三鍋伊佐雄(大東建託 前社長)

《『弱者が勝つ戦略 「集中」と「差別化」こそがビジネスマンの勝利の方程式』より》

 

選ぶべきは「弱者の戦略」

 

 ランチェスター戦略の理論に、個人としてのビジネスマンの成功法と、あるべき生き様が見出せる。

 多くのビジネスマンは会社という組織に所属している。そして、「男は(現代は女も同じ)外に出れば7人の敵がいる」といわれるように、ビジネスは戦争である。もっとも、戦争といっても、ほんとうの敵が、ビジネス対象者や取引先だけを指しているのかどうかは大きな疑問であり、多くのビジネスマンが「上司や同僚という敵」をも相手にしなければならない現実に、日本の現代ビジネスの不幸も垣間見える。

 これを読んでいただいているある方は、こういうかもしれない。「自分の所属する組織は、業界でも圧倒的に先頭位置にあり、自分は強者の中にある」と。また、ある方は「うちの会社は弱小零細企業であり、考えるまでもなく弱者に決まっている」と。

 ほんとうにそうだろうか?

 ランチェスター戦略は「地域戦/局地戦の戦略書」といわれ、局地戦で物を考えるということを説いている。

 たとえば、トップシェア商品であっても、初めて販売所を構えた地域では実続ゼロ=その地にあっては後発の弱者である。全国シェアをもって自分は強者であると理解するなら、おおむねその局地戦での負けは戦う前から見えている。

 また、零細企業であっても、たったひとつしか拠点がないその地で、古くから地域社会に愛され続けているならば、その局地にあっては過去より継続した強者ということになるのである。この判断や理解が局地戦の出発点である。

 多くの場合、大企業やトップシェア企業のビジネスマンは、この出発点で間違う。だから「企業30年説」といわれるように、有力企業であってもいつか企業の寿命が尽きるとされている。しかしそれは、企業やビジネススキームが30年で終わるのではなく、奢った、勘違いした、「30年後の経営者や社員が企業を終焉させる逆噴射エンジン」となっているだけのことである。

 一方で、社内環境に目を落としてみると、ランチェスター戦略は実に興味深い展開を持つ。たとえば、上司・部下関係。上司は部下に絶対的強者(精神的)を演じ、その上司もまた、彼の上司に絶対的強者を演じられる。愉快な勘違い関係である。

 しかし時折、面白い上司・部下関係にも遭遇する。それは、一介の部下がその得意分野で上司をあごで使うさまである。たとえば、コンピュータが不得手な鬼上司が、その年に入社したばかりのフレッシュマンにパソコンのイロハを教えてもらい、退社後に猫なで声で「お礼に居酒屋へ行こう」などと誘うのは、滑稽を通り越す。これこそランチェスター戦略の勝利(フレッシュマンの勝ち)にも見える。つまり、フレッシュマンがコンピュータという局地戦で上司に勝利した構図である。
   

 ビジネス社会におけるランチェスター戦略の解釈・判断を、きわめて簡便にいうなら、「奢りの態度は強者の論理」「如才ない入り込み姿勢が弱者の論理」ともいえるかもしれない。ただし、この乱暴な解釈はランチェスター戦略の専門家諸氏から見れば、誤りも甚だしいといわれかねなく、先手を打って謝罪をしておく。

 すでにおわかりのように、多くのビジネスシーンで有用な戦略とは、「弱者の戦略」=自分の強みを有効に活用することでの「強み・特色の集中」と「自分差別化戦略」であり、自分を過信し勘違いした奢りからくる強者の戦略は、多くのシーンで無用のものとな

 ●新製品をつくったら、他社製品や同市場商品を謙虚に学習して、如才なく市場に入り込む。

 ●鬼上司に遭遇しても、鬼の弱点を把握して、鬼も認める自分を演じる。

 ●会社規模など無関係。自分が必要とする営業領域や市場領域だけでトップを取れば、他の地域でどれだけ他社が勢いを強めても関係無し。

 ……なのである。

 

 

「心の納期」に応える― 全ビジネスマンのための基本戦略

 

 「○○さん、ついでのときでいいけど、△△を□□日までに届けてください」

 日常的にどこでも交わされるお客様との普通の会話である。仮にあなたが「わかりました。明日またこちら方面にまいりますので、明日の夕方にはお届けできます」と返答した際、あなたとお客様の間では、この届け物の納期が「明日の午後」と約束されたことになる。

 ここからが問題である。さあ、あなたならこの約束をどう果たしていくだろう。ライバルと差をつけ、お客様の信頼をますます高める行動。結論は「今日、届けること」である。

 お客様の心理はこうである。「○○さん(あなた)は信頼できる人だから、明日の夕方に持ってきてくれるのは当然のこと。けれどもあの人(あなた)は、夕方ではなく明日の午後一番でわが家から先に回ってくれるかもしれない」。つまり、黙っていても約束以上のことをしてくれるだろうという期待である。

 したがって、あなたが約束通り翌日の夕方に届けたとしたら、お客様は期待外れを感じ、約束通りだから仕方がないかと考えて、「ありがとう」というお礼の言葉を“儀礼的”にあなたに発することとなる。

 仮にあなたが翌日の午後一番に届けたとしても、お客様から見れば単なる“期待通りの納期”であり、お客様は“やっぱり早く来てくれた”という予想通りの行動に対しての「ありがとう」を返してくるのである。

 ここでよく考えてみよう。ここまでのあなたは、お客様の予定の範囲・期待の範囲内の行動を行ったにすぎず、何らライバルと差別化する行動にはなっていないのである。

 あなたを差別化する……。これを実現するには「今日、届ける」ことである。それによって、あなたの行動はお客様の期待をよい意味で裏切るものとなるのである。それを行ったとき、初めて真の評価をあなたはお客様から得ることができる。

 お客様の心にある「期待する納期」。これこそが真に求められるお客様の持つ「心の納期」であり、それに応えたとき、初めてあなたへの真の評価がやってくるのである。

<<「心の納期」の達成に集中せよ。そして差別化せよ。>>

 


<書籍紹介>

弱者が勝つ戦略
「集中」と「差別化」こそがビジネスマンの勝利の方程式

三鍋伊佐雄著
本体価格1,200円

どうすれば弱者が強者に勝てるのか? 長年にわたりランチェスター戦略を実践してきた著者が、ビジネスマンへ生き残りの秘策を伝授!

<著者紹介>

三鍋伊佐雄 (みなべ・いさお)

1952年、愛知県生まれ。73年、国立豊田工業高等専門学校土木工学科卒業後、広告代理店等を経て、84年に大東建託入社。取締役テナント営業統括部長・能力開発部長、常務取締役営業本部長、専務取締役業務本部長・経営企画室長等を経て、2007年に代表取締役社長就任。2013年6月退任。現在、フリー。賃貸不動産経営管理士。

米国経済誌『Institutional Investor』IRランキング「2013年 日本住宅・不動産部門ベストCEO」に選出される(セルサイド・バイサイド両部門)。



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