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「大人の組織」で問われる “個人のジリツ(自立・自律)”

秋山進(プリンシプル・コンサルティング・グループ代表取締役)

2014年02月25日 公開 2024年12月16日 更新

《PHPビジネス新書『「一体感」が会社を潰す』より》

 

コドモの組織と大人の組織の違い

 ご存知のとおり、時代は大きく変わっています。日本市場は成熟し、成長はゆるやかなものになりました。建前の差別化ではなく、本質的な意味での独自性が求められる時代になっているのです。

 この表は、コドモの組織と私の考える大人の組織の特徴を対比したものです。

コドモの組織と大人の組織の特徴の対比

 

個人の「自立」と「自律」

大人になるための2つの「ジリツ」

 コドモの組織が大人の組織になるために、まず考えなければならないのは、やはり組織に属する1人ひとりが、「いかにコドモから大人になるか」ということです。

 「組織は人なり」と言われるように、組織の構成要素は人だからです。まずは、その組織を形成する1人ひとりがコドモから大人に成長するためには何が必要なのかを考えてみましょう。

 私は常々、2つの「ジリツ」――「自立」と「自律」が、個人が大人になる条件なのではないかと考えています。

 自立とは、「自ら立つ」と書くように、人に頼らず自らの足で立つことを意味します。経済的に自立する、つまり、社会にとって価値ある人材として認められるだけの技術 (スキル)を身につけていることが自立の条件です。

 もう1つの自律は、「自ら律する」と書きます。広辞苑には、「自分の行為を主体的に規制すること。外部からの支配や制御から脱して、自身の立てた規範に従って行動すること」とあります。仕事を進めていくうえで、自分なりの行動規範を定め、それに従うこととなります。

 かんたんに言ってしまえば、経済的に自立できるだけの技術をもっていて、自分で必要だと認識してつくりあげた規律を守れる人が大人ということです。

 会社に勤めていれば給料をもらえますから、多くの会社員は経済的に自立しているはずで、自立していない組織人などいないのではないかと思った人もいるでしょう。確かに、会社でそれなりに仕事ができているのであれば、現段階ではそれなりに自立していると言えるのかもしれません。

 しかしながら、事業を取り巻く環境がもの凄いスピードで変わっていることを忘れてはいけません。これまでそれなりに成果を出すことのできた技術も、気がつけば陳腐化している可能性があります。グローバル化した世界市場では、自分と同じ仕事を、その5分の1や10分の1の値段でやる外国の労働者が生まれてきています。

 環境の変化にキャッチアップしながら、かつより安い労働力と比較しても優位性が高く、状況の変化に対応できる技術を保有していなければ、実際にはいつ放逐されるかもしれない不安定な状況にいることになります。

 こういった状況を不安に感じるのであれば、それは自立しているとは言えないのです。

 つまり、会社から給料をもらっている人でも、すべての人が真の意味で自立できているとは限らないのです。

 ちなみに、ここで言う「技術」とは、理科系や製造に関する技術のことだけを指すわけではありません。

 営業にも営業技術があります。人事にも研修を行う技術や就業規則をつくる技術、給与計算の技術など、さまざまな人事関連の技術があります。ですから、営業担当者は営業技術者であり、人事担当者は人事技術者なのです。ここでは、そういう意味で、「技術」という言葉を使っていることをお断りしておきます。
 

 さて、自律のほうはどうでしょうか。自らを律することができているか? 自分で自分の行為を規律できているか? と言われても、自立よりも抽象的なので判断が難しくなります。

 そこで、自律できているかを考える前に、自律の反対語である「他律」について考えてみましょう。他律とは、自律の反対ですから、「他人が律する」ということです。「他人が自分の行為を規制すること。外部からの制御に従って行動すること」を意味します。

 毎日、仕事をしているなかで、上司の指示や職場の慣習となっている行動を除いたときに、自分の独自の判断でやっていることはどのくらいあるでしょうか? 自分なりのやり方というのはどのくらいあるでしょうか? あらためて考えてみると、本当に自分が律している行為というものは驚くほど少ないものなのです。

 会社で隣や前に座っている人は、自律で動いているでしょうか? 他律で動いているでしょうか? あなた自身は、どちらが多いでしょうか?

 自律=大人、他律=コドモと単純に言うことはできないかもしれません。しかし、他律で働いている限りは、その人が組織に貢献できる質や量はある一定の枠内に収まってしまいます。

 その人にしかできない差別化された特別な貢献は、指示や慣習を超えた、その人ならではの行動や思考によってはじめて生み出されるからです。

 

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