大切なのは感じる力か、考える力か……トップアスリートの決断の瞬間。
動物的なひらめきと「カンピューター」で常識を打ち破った長嶋茂雄。徹底した分析と言語化で「ID野球」というセオリーを打ち立てた野村克也。
対極にいる二人のスーパースター、はたしてどちらがすごいと皆さんは思いますか?
しかし、二者択一である必要はありません。
「野性で戦い、知性で守る」柔軟さが必要なワケとは...
※本稿は青島健太著『長嶋的、野村的 直感と論理はどちらが強いのか』より、内容を一部抜粋・編集したものです。
野生か知性か、すごいのはどっち...?
長嶋さんと野村さん。さて、このお二人はいったいどっちがすごいのか。みなさんは、どうお考えになるだろうか
野球界の大先輩を俎上に載せて、「どっちがすごい」などと比較検討させていただいている失礼を、お二人にはどうかお許しいただきたい。
長嶋さんに軍配を上げる方、あるいは野村さんを推す方、それぞれの好みで意見が分かれるのかもしれない。
しかし、拙著『長嶋的、野村的』を読んでくださった方々の多くは、きっと私にこう言いたいのではないだろうか?
「これはそう簡単には決められない」あるいは、こう。「長嶋さんと野村さん、どっちがすごいか? 両方すごいに決まっているだろう」
たしかに、この勝負、どう考えてもどちらがすごいとは言いきれない。それぞれにそれぞれの特性と魅力があるからだ。
長嶋さんの野性はいつも楽しくて前向きだ。そして、野村さんの知性は明解で論理的だ。長嶋さんは未来を語り、野村さんは過去を分析する。それぞれのスタイルで自分らしさを存分に発揮してきた方々だ。
そして、その揺るぎないスタイルでゾーンに身を置き、数々の偉業を成し遂げてきたのだ。
長嶋さんと野村さん、どっちがすごいのか。う~ん?????じつは、この逡巡こそが、野性と知性を意識するということだ。
この両者の存在を知った以上は、長嶋さんと野村さんのよいところを盗んで、私たちが向かう局面にもっとも適した戦いを挑まなければもったいない。
IT化が進む規代社会。数字やデータの処理も飛躍的なスピードでかなうようになっている。野村さんが苦労の末に集めたデータも、いまではあっという間にそろってしまう。こうした時代になった以上、何事においても野村さん的アプローチは必須の作業といえるだろう。
一方で、これだけ情報にあふれ、さまざまな価値観が闊歩するなか、数あるオプションからスピーディに何かを選択するのが難しくなっている。
そんなときには、長嶋さん的直感の出番だ。論理や思考を省き、己の信じる感性で大胆に事に当たっていく。こうした感覚と決断も、現代社会では重要な態度だ。