《『THE21』2014年7月号より》
各脳番地を鍛えるトレーニング
ベストセラー『脳の強化書』の著者でもある医学博士の加藤俊徳氏がが提唱している「脳番地」。1000億個を超える脳の神経細胞を機能別に分類し番地を割り振ったもので、全部で120の脳番地が存在する。
脳番地は大きく思考系脳番地、感情系脳番地など、8系統に分けられる。それぞれの番地の具体的な鍛え方を加藤氏に教わった。
思考系脳番地トレーニング
「1日の目標」を20文字以内で作る
朝、出勤前に1日の目標を決め、それを20文字以内で表現する。たとえば「何か1つ新しい仕事の仕方を提案する」(17文字)という具合。目標を立てる際に、1日の予定をシミュレーションしながら考える作業が、思考系脳番地の活性化につながる。また、文字数に制約かあることで、内容を端的に表現するための言葉を選ぼうとすることも効果がある。
自分の意見に対する反論を考えてみる
自分の意見に確信があったとしても、あえて反対意見を検討してみる。別の角度から自分の意見を見ることで視野が広がるとともに、複数の意見を頭のなかで戦わせることで、思考系脳番地が刺激されるのだ。また、実際に異論が出たときに、相手を説得するためのシミュレーションになるという効果も。
感情系脳番地トレーニング
出かける前に「何があっても怒らない」と唱える
怒ったり興奮したりすると、脳の「超前頭野」に大量の血液が流れ込み、いわゆる「頭に血が上る」状態になる。これを避けるために。出かける前には「何があっても怒らない。キレたらその場を離れる。人にはやさしく、やさしく……」と自分に言い聞かせよう。これだけで、超前頭野に1つの「目的」を与えることになり、穏やかな状態を維持できる。
「大好きなもの」を10日間断つ
タバコや酒、コーヒーや甘いものなど、自分の好きなものを10日間断つことに挑戦してみる。誘惑に打ち勝つトレーニングになり、もちろん健康にもよい。また、それまで無条件に手に入れていた「楽しい感情」を少しだけ制御することで、感情系脳番地にちょっとした負荷を与えることができ、それが感情系脳番地を鍛えることになる。
伝達系脳番地トレーニング
相手の話に3秒間の「間」を空けて応じる
相手の話に対して、意図的に「間」を置くようにする。たとえば、同意を求める相手に対して、3秒空けて「……そうだね」と答えれば、相手は「あれ? おかしいな」と不安になるはず。こうした違和感や感情の変化に気づくことで。相手の顔色や口調の変化に敏感になり、結果的に伝達系脳番地の働きを強化できる。
選択肢を3つ考えながら話をする
相手に質問する際、あらかじめ3つの選択肢を準備しておく。たとえば、「レポートはいつできそう? 今月中? それとも来月上旬? 下旬?」のように。相手もそのほうが答えるのが楽になるし、自分自身の伝達力を向上させることにもなる。選択肢を用意するために相手を分析したり、伝え方を工夫したりすることが、伝達系脳番地への刺激になる。
理解系脳番地トレーニング
10年前に読んだ本をもう一度読む
言語を理解する脳番地を鍛えるには読書が効果的だが、とくにお勧めなのは、10年ほど前に読んだ本をもう一度読んでみること。10年のうちに脳自体が成長し、以前とは異なる脳番地を使って読むため、新たな発見がある。また、以前は面白いと思わなかった本をあえて選ぶ、主人公以外の人物に感情移入して読むなど、さまざまな読み方を試すとよい。
電車内で見かけた人の心理状態を推測する
初対面の際、相手の表情やちょっとしたひと言から相手を理解する能力はコミュニケーションに不可欠、そのための訓練に最適なのが、電車内での人間観察である。たとえば、ブスっとした顔で座っているスーツ姿の男性がいれば、「会社で何か嫌なことがあったのかな」などと、表情から心理を想像してみるのだ。それにより、理解系脳番地を活性化させる。
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