ホーム » 仕事の心得 » 経営者になったつもりで仕事をしよう

経営者になったつもりで仕事をしよう

2014年09月11日 公開

瀬戸 薫(ヤマトホールディングス会長 )

《『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾2014年9・10月号Vol.19より》

松下幸之助と私

松下幸之助の生誕120年、および没後25年の今年、PHP研究所ではPHPビジネス新書で「松下幸之助ライブラリー」を刊行中。松下の著書の装いを改め、よりビジネスパーソンが手に取りやすいシリーズにラインナップされ好評を得ている。

本記事はこの機会に、各界で活躍中の方々に松下幸之助の著作や哲学に対する思いを語っていただくシリーズ。今回は、19万人の「クロネコヤマト」社員に刷り込まれている「全員経営」の考え方とその実践から、松下の「社員稼業」の考え方を読み解いていただいた。

<取材・構成:坂田博史/写真撮影:山口結子>

 

松下さんの「社員稼業」とヤマトグループの「全員経営」

 松下幸之助さんとは、残念ながら面識はありませんが、松下電器(現パナソニック)さんとのあいだには忘れられない思い出があります。

 実は、私は課長時代に、松下電器とヤマト運輸の合同研修を受講したことがあるのです。神奈川県の葉山にある私たちの研修センターで初回を行なった数カ月後に、滋賀県草津市の松下電器の研修センターで2回目を行うという本格的なものでした。それぞれの会社から課長クラスの社員が20名ずつ集められたこの研修で、企業文化の違いを実感したのを覚えています。

 私たちヤマト運輸の課長たちは、会社全体のことばかり話しました。一方、松下電器の課長さんたちは、自分たちの事業やセクション、専門分野について真剣に話してくれました。

 どちらがいい、悪いという話ではありません。私たちは、松下電器の課長さんたちの専門にこだわる意識の高さや知識量、事業への責任感などに圧倒され、逆に松下の皆さんは、会社全体を考える私たちの姿勢や自由な発想、実行力などを賞賛してくれました。

 このときは、お互いに相手のよい点を学び合いつつも、発想や思考の違いを感じたものですが、今回、「社員1人ひとりが、“社員という稼業”の経営者であれ」という松下幸之助さんの「社員稼業」の考え方を知り、ほんとうに驚きました。というのは、ヤマトグループが大事にする「全員経営」の考え方と、非常に深く相通ずるものがあると感じたからです。

 松下幸之助さんも「衆知を集めた全員経営」ということを言われていたそうですが、私たちヤマトグループの社員が大切にしている「全員経営」という言葉は、創業者の小倉康臣(やす おみ)の時代からある「ヤマトは我なり」という社訓を、「宅急便」の生みの親で当時社長だった小倉昌男が現代風に言い換えたものです。「社員全員が経営者になったつもりで仕事をする」ことを意味しています。

 「社員稼業」も「全員経営」も、独立自営の意識で仕事をすることで、社員が自分の頭で考え、創意工夫し、自分から動くようになるととらえている点で同じとみていいでしょう。

 「全員経営」の考え方が染みついている弊社の社員は、部下指導の際も、部下が自分で考えるよう促すことが多いように思います。私も、社員が提案してきたアイデアに対して、頭からダメと言うことは、まずありませんね。また、社員が創意工夫して実行したことが仮に失敗に終わったとしても、それを咎(とが)めることもしません。自由にやっていいと言われて自由にやったら怒られた、というのでは、次回から萎縮してしまい、新しいことに挑戦しようという人がいなくなってしまいますからね。

 代わりに弊社では伝統的に、失敗したことについて、何が悪かったのか、どうすればうまくいったのか、とことん考えさせます。

 部下の提案に対しても最初から否定はせず、「この点については考えましたか」「メリットとデメリットは何ですか」「どういう結果を求めて提案していますか」など、部下の頭を整理する質問をくり返し行うのです。

 ウイークポイントに自分で気づいて失敗を反省できるようになると、ものごとを論理的に考えられるようになります。提案レベルが上がり、成功確率も高まります。まどろっこしいですが、結果的にはこのほうが早く、よい仕事ができるようになるのではないでしょうか。

 みずから考えたことが実現できればそれだけで楽しくなりますし、ましてお客さまに喜んでもらえれば、うれしいことこの上ありません。こうした体験が、社員のやる気の源泉になり、会社のパワーのもとにもなります。

 逆に、「社員稼業」や「全員経営」という意識が薄い組織では、やらされ感が高まり、指示待ち族が増えるのではないでしょうか。失敗してもそれは他人のせいだと考えがちなので、不平不満や愚痴ばかり言うようになるでしょう。不平不満や愚痴を言う相手は、本来、他人ではなく自分でなければならないのです。

 

瀬戸 薫

(せと・かおる)

ヤマトホールディングス会長

1947年神奈川県生まれ。’70年中央大学法学部卒業後、大和運輸(現ヤマトホールディングス)入社。当時の社長小倉昌男氏のもとで「宅急便」の開発に携わり、徹底的に需要者の立場に立って考える小倉流経営哲学を学ぶ。北九州主管支店長、本社営業推進部宅急便課長、人事部労務課長、中国支社長などを経て、’99年取締役関西支社長。取締役人事部長、常務執行役員を経て、2006年ヤマトホールディングス社長。’11年より現職。著書に『クロネコヤマト「個を生かす」仕事論』(三笠書房)がある。

 

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の冒頭部分を抜粋したものです。以下、「震災における社員の自主的・自発的な行動を誇りに思う」「社員は目の前のお客さまに育てられている」「「宅急便」への挑戦は背水の陣だった」「部下に背中で教えるリーダー必読の書」などの内容が続きます。記事全文につきましては、下記本誌をご覧ください。(WEB編集担当)

 

<掲載誌紹介>

PHPビジネスレビュー松下幸之助塾 2014年 9・10月号 Vol.19

<読みどころ> 9・10月号の特集は「歓喜の経営を生みだす」
 仕事の場が歓喜で沸きかえる。あるいは、歓喜とまではいかなくても、仕事の充実を味わえる。これがどれほど大事なことか。人生において相当の比重を占める仕事の時間を、明日の生活費を稼ぐための単なる「労働(labor)」ではなく、意義ある「仕事(work)」と心得、ひいては「遊び(play)」にまで昇華させることができれば、すばらしい成果を生む組織が誕生するのではないか。
 こうした問題意識に立った本特集では、従業員が仕事の上で歓喜を味わえるようにするための考え方と、企業での実践を探った。
 そのほか、クロネコヤマトの経営理念とからめて語った瀬戸薫氏の松下幸之助論や、ある僧侶との出会いによって素直な生き方にめざめた男性の自己修養の姿を描いたヒューマンドキュメント「一人一業」なども、ぜひお読みいただきたい。

 

 

BN

 


関連記事

編集部のおすすめ

佐々木常夫・松下幸之助さんの本は平易な言葉で書かれた「修養の書」

佐々木常夫(東レ経営研究所前社長)

自主責任経営・個性派社員を暴れさせるビームスの流儀

設楽 洋(ビームス社長)

生き続ける「ヤマトは我なり」のDNA

瀬戸薫 (ヤマトホールディングス会長 )

松下幸之助 指導者に求められる最高の熱意

PHP研究所経営理念研究本部

吉越浩一郎・社長を目指せ!社長業は難しくない!

吉越浩一郎(元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長)
リッツカールトン東京 Happy Fes 女性のHappyを応援する日

WEB特別企画<PR>

アクセスランキング

WEB特別企画<PR>

リッツカールトン東京 Happy Fes 女性のHappyを応援する日
  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする

ホーム » 仕事の心得 » 経営者になったつもりで仕事をしよう