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小説『コレキヨの恋文』―泣いて、笑って、経済がわかる!



2015年03月03日 公開

さかき漣:著/三橋貴明:企画・監修

《PHP文庫『コレキヨの恋文』より》

PHP文庫『コレキヨの恋文』/泣いて、笑って、経済がわかる!ベストセラー小説

 世相が酷似する大正・昭和と現代を巧みに交錯させつつ、政治経済の仕組みわかりやすく解説し、日本人を勇気づけるメッセージが込められた傑作小説『コレキヨの恋文』。

 舞台は201X年、青天の霹靂で日本初の女性首相になった霧島さくら子。彼女を待ち受けるのは難題ばかりだった。長引くデフレ、財政破綻論の蔓延、自由貿易推進の声……。そんなさくら子の前に、ひとりの老人が現われた。その老人は、やたらと古めかしい言葉をつかい、しかも経済と歴史にめっぽう詳しい。そんな謎の老人の話を聞くうち、さくら子は大胆な経済政策を打ち出していく。

 しかしやがて、さくら子は、ふと気づく。この老人、まさかあの名蔵相、高橋是清? しかも、バブル崩壊、大震災、次々と代わる総理大臣、世界的な恐慌……。是清の時代と現代は、あらゆるパーツが同じ……。そして、老人が本当に高橋是清だとしたら、2・26事件の日は大変なことが起きてしまう! 果たして、さくら子はどうするのか? そして、現代の日本を救えるのか?

 では、本文から「第3章 さくら子、国家を知る」の一部をご紹介しましょう。


 

さくら子、国家について学ぶ

 「今年の桜も美しいな、未来の総理大臣殿」

 「はい。日本の桜は、わたしの生きている時代でも、綺麗に咲いています。先生のお隣に座ってもよろしいですか」

 「うん」

 是清は無論、さくら子が未来から来たなどという戯言は信じていない。単純に、社交上の遊びとして受け取っているのだ。

 「今日はまた、一転して愛らしい装いだな、さくら子さん」

 「ありがとうございます」

 頭を下げたさくら子は、是清の右隣に座った。樹下のベンチに、白く小さなさくら子と、淡い緑の着流しに茶の羽織を重ねた、上背の高い是清の姿が並ぶ。時折、柔らかな風に吹かれ、はらりと桜の花弁が落ちてくる。

 「先生」

 姿勢正しく、ベンチに浅く腰かけていたさくら子は、是清に話しかけた。

 「日本国内閣総理大臣の大先輩として、わたくしの悩みを聞いてくださいませんか」

 「無論、構わんよ」

 「ありがとうございます」

 さくら子は静かにお礼を言い、続けた。

 「わたくしは現在、TPP、日本語で言うと環太平洋経済連携協定という、太平洋をまたがった自由貿易協定について、決断をしなければならない立場にあるのです。環太平洋とは言っても、実質的には日本とアメリカ、2国間の自由貿易協定です。しかもTPPに加入すると、日本国内の社会制度やシステムを、ほとんど革命と呼んでも構わないほど、劇的に変えなければなりません。……わたくしには理解できません。日本の“国の形”を変えてまで、自由貿易協定を推進しなければならないという考え方には、わたくしは賛同できないのです。ところが、わたくしがTPPに慎重な姿勢を見せると、すぐに『総理は自由貿易に反対するのか』という批判が飛んできます」

 「自由貿易なあ……」

 是清はさくら子との“思考遊び”に付き合い、続けた。

 「ところで、さくら子さんの言う未来の日本とは、どのような状況かね。背景が分からないと、答えようがない。特に、政治や経済の分野に興味があるのだが」

 なるほど、もっともだ。さくら子は頷き、頭を整理しながら説明する。

 「ええと、今は実質的には2大政党制になっているのですが、政界では政権交代や首相交代による政治混乱が続いています。例えばこの15年間で……」

 さくら子は指折り、数えてみた。

 「あ、12人です。わたしを含めて、12人の内閣総理大臣が誕生しました」

 困惑気に語るさくら子の姿に、思わず是清は吹き出してしまった。全く、この若い婦人は迫真の演技をするものだ。



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