得体の知れない復興構想会議
2011年05月23日 公開 2022年08月22日 更新
会議なしでも大枠はみえている
震災から丸1カ月が過ぎて、被災地の支援活動や大量の募金など、力づけられる話はたくさん聞いた。一方で、社会的な影響力をもつ人びとが、パニックやデマの片棒担ぎを演じて失望させられるケースも、これまた多い。とはいえ一時の混乱を経て、いまや東北では復興の槌音高く……といった話を今回は書けるものと思っていたのだが。どうもその状況がよくわからない。現場ではもちろんいろいろ活動は行なわれているけれど、その中身や全体像があまりみえてこないのだ。
そして首相その他は原発にばかり気を取られ、被災地支援はお留守のようだ。珍しく復興絡みの話と思ったら、これが得体のしれない復興構想会議とやら。初会合などでは梅原猛がお気楽な文明論を語り、五百旗頭真は中身も決まらないうちに復興税の新設を主張。なんですか、これ。
ホント、そんな会議なしでも、いまやるべきことの大枠はみえているのでは? こんな具合……。
まず国民としては、いまは被災者の救援がどうなっているかろくにわからない。事態は着々と改善しているの、それとも泥沼の無間地獄なの? もっと募金やボランティアしたほうがいい? まだ被災地の一部は取り残されているという話も聞くけれど? そういう判断がつかないからみんな不安でしょうに。
だから被災の状況を地図でざっくりみせてよ。壊滅状態のところから、多少片づけと資金があれば自力で踏ん張れるところまで、ランク付けして塗り絵でもつくってほしい。県レベルでは、けっこうこれが進んでいるから、それをまとめるだけでも国民は安心するし、ボランティアだってどこに行こうか判断しやすいのに。それで支援進捗につれてその塗り絵地図を更新すれば、「おお、なんか復興してるぞ!」とみんなの士気も上がるでしょう。菅首相には、塗り絵のプレゼンターでもやらせてあげるよ。
個別のミクロの支援方策は、当然個別地方に任せればいい。国は御用聞きに徹して、人や物や金をばらまき、地方ではきつい道路と物流等の復旧を重視。いちおう人びとがなんとか自立して暮らせるようになって、やっと復興のスタート地点でしょう。
さて復興は、震災前から過疎と高齢化に悩んでいたところも多かったし、冷たいようだが全部完全に元に戻すのは無理。だからいくつか拠点決めて、そこに集中投資するしかないでしょう。集積確保のため、国の機関(とくに復興関連部門)はそこに置く。さらに経済活動が戻りやすいように復興地区特別規制緩和でもつくって、本社機能移したら10年間法人税免除といった、アジア諸都市の企業誘致みたいな各種優遇措置。一方、やり直す元気がない人びとからは土地家屋等を買い上げて、一部はやる気のある人に払い下げ。これで同時にまとまった国有地をつくり、将来のインフラ整備用地にする。
偉い先生集めたところで、これに毛が生えた程度のものしかできないでしょ? あとはこれを地図に落とすだけ。必要な費用や財源についていうべきことは、本誌前号で飯田泰之氏が一通り語り尽くしている。ほら、これでおしまい。高い謝礼払って変な会議をさせるまでもない。
精神論のお題目は聞き飽きた
ちなみに、原発事故の被害者は東電の責任だから、国による救済はするな、という議論もある。むろん東電にはちゃんと責任をとってほしいが、でもぼくはこの種の話は、しょせん会計上のお遊びだと思う。結局、ツケを払うのはぼくたちなのだ。すべて東電が賠償するにしても、彼らの収入は過去と未来のぼくたちの電力料金だ。料金には転嫁させないと息巻く論者もいる。でも……それならその賠償金はどこから湧いてくるわけ? 税金か料金か、国民からみれば支払う経路が違うだけだ。
あと国債発行による復興資金捻出について、後代にツケを残してはいけないといって反対する人びともいる。ばかばかしい。そのツケを上回る遺産を残せばいいだけの話じゃないか。ぼくたちにはその程度の知恵はあると思うんだけどな。
いずれにしても、とにかく早くしようよ。叡智を結集して必ずや力強く復活を、とかいう精神論のお題目は聞き飽きた。救援も復興も、とりあえずでいいからさっさと計画決めて動こうよ。いま頑張っている現場を、もっとみんなで助けられる体制つくろうよ。……と書いているあいだにいくつか法案が出てきたけれど、ほぼ似たような路線だ。わかってるじゃないか。だったらそこで現場知らずのお偉いさん会議のお墨付きなんか要らない。どうせ完璧な計画なんか無理だから、いい加減なもので始めて進捗を国民にみせつつ、少しずつ修正しながら進めようよ。原発のほうは、政治家が口出ししたところで何も改善しないし、そっちはもう技術屋に任せて、実際に政策でできることをきちんとやろうよ。