(写真提供:立命館大学)
「最上位大学」と定義される上位12校。しかしその枠組みには早慶・MARCHに匹敵する実力を持つ関関同立は入っていない。全国的にはまだ知られていない「関関同立の実力」について、立命館大学客員教授の西山昭彦氏による書籍『立命館がすごい』より解説する。
※本稿は、西山昭彦著『立命館がすごい』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。
「最上位大学」という枠
「大学生の就職志望ランキング」という調査が多数出ている。学生全体に聞くものから、東大生だけに聞くものまで様々だ。そのなかで、(株)リーディングマークが、就職活動をしている12の大学生を対象に聞いた「就職人気企業ランキング」を毎年発表している。
就職事情に精通した同社では、この12校の学生を「最上位校生」と表現している。東京大学、一橋大学、東京工業大学、早稲田大学、慶應義塾大学、京都大学、大阪大学、神戸大学、北海道大学、東北大学、名古屋大学、九州大学の12大学である。
この12大学は産業界が高い評価を続けている大学である。「2024年有名企業400社実就職率ランキング」(大学通信)では2位東工大、3位一橋大(1位の豊田工業大は1学年100名)で、この2校がトップ3の常連である。
ただし、私には、12大学は旧来からの旧帝大、国立重視の延長線上に見える。東北大学出身の友人の「地元では唯一で周囲の評価は断トツだったけど、東京に来て出身を言ってもフーンという反応で、初めて真の評価がわかった」という声もある。
国家総合職・公認会計士両方の「官民トップ5大学」に立命館が入っており、大学より学生の実力を重視するなら、12大学の拡張をすることも一考に値するのではないか。
関関同立は早慶とMARCHを合わせた存在
関関同立は関西圏にあるので、首都圏の人にはなじみが薄い。だが、関西の有力企業ではその存在はとても大き
い。
ある創業100年以上の企業と会議をしたときのことだ。部長、課長、課長代理2名が出てきた。何かの拍子に大学の話になったら、課長が「我々4人は関関同立一人ずつです」と紹介してくれた。
また、関西のプライム上場の有力企業に入ったOGが、「理系は国立がそれなりにいるけど、文系15名は国立ゼロで、全員が関関同立だった」と言っていた。
首都圏との違いは、関西には早慶がないこと。国立の次は関関同立になる。東大の次が早慶になる代わりに、京都では京大の次が同立になっている。つまり、関西では早慶とMARCHを合わせた存在なのである。
この点の評価は、一部の東京の企業も同じ見方をしている。関西圏から学生を採りたいとき、7校に焦点を当てるという。京阪神関関同立だ。大手製造業の人事部長が「関西からだと、結果を見るとこの7つからが8割以上になっている」と言っていた。
その一方、東京の大企業で、早慶は50名採用しているのに、関関同立は5名というところもある。上位ランクの学生は同等の実力を持つので、これはアンバランスに見える。日本中から優秀な学生を集めるのが企業の成長エンジンになるのに、地域差の壁を越える採用になっていない。
この4つの序列は、直近の雑誌では同志社、立命館、関西学院、関西となっている(『週刊ダイヤモンド』2023年9月16、23日号)。
同志社と立命館
京都では、同志社と立命館の2大学がある。歴史的に同志社は私大をリードしてきた名門大学である。ここでは、たまたま両校に勤務した友人がいるので、比較をしてもらった。
①出自。同志社(以下D)はキリスト教をベースにして英語、教養を身につける、立命館(以下R)は民主主義をベースに法学を学ぶことでスタートした。
②現在の運営は、Dは職員に卒業生が多いなか、教員がリードする形で進められる。Rは出身大学を問わず教職協働で進められる。Dが伝統を大切にするゆえに、それに縛られる。Rは変化を大切にし、多面的な展開をする。
③現在の学長は、Dが神学部出身で、Rは民間企業経験者。
④学生は、Dが入学時の満足度をキープしながら、自主性を重んじる。Rは入学後の成長が大きく、多様性のある学生サポートメニューが提供される。
ある立命館の教員は、「立命館は自分にとっての価値を見出し、生涯の友を見つけられる大学」と位置づけていた。中央大と同じく立地問題の影響も大きいと見られる。同志社の文系は地下鉄今出川駅(京都駅から10分)の真上にある。出口の1つを出ると、学内に入る。東京でもこんな学校は見たことがない。
同志社の方に聞いたら、地下鉄ができるとき、大学が負担して作ったそうだ。仮想になるが、「もし立命館がこの場所にあったら、評価は変わる」という声を聞く。
私は同志社の知り合いも多く、仕事を通じていつも協力してもらっており、感謝している。ここでの結論としては、高校生の志望度では同志社、在学中の成長値は立命館ということになった。