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『自分という奇蹟』―五木寛之の人間観のすべて、いきなり文庫化!

2015年09月04日 公開

文庫出版部

 本書の誕生は、スミセイライフミュージアム「生きる」(1997年~2003年)の内容をまとめた、17冊の冊子との出会いから始まりました。五木先生が主宰・企画監修の立場でかかわっておられたフォーラムです。この冊子、第一部に必ず「生きる」というテーマに沿った五木先生のご講演が抄録されています。

 そのころ私は、PHP文庫創刊30周年(2014年4月)の目玉として、先生の『私訳 歎異抄』(PHP文庫)を編集していました。「五木先生のご講演が載っているよ」と言って上司から渡されたのですが、とにかく面白い。滋味深く、ぐいぐい読み手を引き込む内容。それもそのはず、大ベストセラー『大河の一滴』をお出しの時期のご講演なのです。

 『私訳 歎異抄』を刊行して数か月したころ、これらが書籍未収録であることを調べた私は、ご面談の折、「生きる」の冊子を取り出し、「先生、こちらのご講演は本にされないんですか?」と訊ねてみました。五木先生はいつもの笑みを湛えた細めがちの目を丸くされ、「君、それよく見つけたね」と、かえってお褒めにあずかったのでした。

 ご講演がちょうど戦後50年を過ぎたあたりのものでしたので、戦後70年の現在の視点を加味して修整し、刊行の運びとなりました。加筆とはいえ、基本線はそのまま。変えようがあまりない。20年近くも経過しながら、日本人の心の問題も社会のあり方も、当時とほとんど変わっていないことに改めて衝撃をうけました。

 『自分という奇蹟』の書名は、本書第二章のタイトルから引いています。

 人間は誰しも充実した人生を送り、世のため人のために尽くし、輝く星のように生きたい。しかし、多くの人間はそうはなれないで苦しんでいる。けれど、生きて「自分」がいるということ、そのこと自体が自然と融和し、たくさんのものに支えられた奇蹟であり、どう生きたかは問題ではない。生きているだけで価値がある、と五木先生は説かれます。

 悲しい時は泣けばいい、強いこと、前向きなことだけがいいことではない――読む者一人一人に寄り添うような先生の言葉の数々に、自分を愛すること、許すことの温かさに包まれる。すばらしい一冊になったと思います。

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