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古田敦也が実践していた「スランプの抜け出し方」

古田敦也

2016年04月20日 公開 2020年03月12日 更新

 

調子が良いときこそ「隙きや綻び」がないか警戒する

翻って、かく言う自分もバッターですから、開幕からどうも乗り遅れてしまうことはあるわけです。しかし焦ってしまうことはありませんでした。相手キャッチャーの心理を読めば、やるべきことが見えてくるからです。

要は打ちたい気持ちを抑えればいいわけです。相手捕手の心理を逆手にとって、ボール球を見逃していく。すると、打てていないバッターに対して四球を出してしまってはもったいないという心理がバッテリー間に生まれます。

積極的に打ちにくると思ってボール球でかわしていたら、振ってくれない。カウントがバッテリーにとって悪くなると、四球を防ぐためにど真ん中を投げてきます。そこまで待てばいいのです。

打率が悪くなって打たなきゃいけないと思った時ほど、フォアボールで出ようとする。打ちたい気持ちを我慢して時を待つ、という方法がこの場合のスランプ脱出法なのです。

逆に、好調な時こそ、慎重になることも重要です。危ないぞ、何かあるぞと地に足をつける。逆に落ち込んだ時は自分で自分を鼓舞する。こうしたことを習慣にすると、周りの動きにそれほど左右されることもなく冷静でいられるのではないかと思います。

これは僕がキャッチャーというポジションだったからこそ身に付いている姿勢だと思います。アマチュアの時の指導者が言ったことで、今でも心に残っている言葉があります。

「キャッチャーは9人中1人だけ反対側を向いているのだから、動きも逆のことをしなくてはならない」

チームの調子が良くて、みんなが浮足立っている時にこそ、キャッチャーは地に足をつける。逆に落ち込んでいる時は空元気でもいいから率先して声を出して周りを元気付けろ、という教えです。

実際、調子に乗って浮足立っている時に隙をつかれて逆転されてしまうなんてことがあるわけです。僕は調子がいい時こそ、きょろきょろ周りを見渡して隙や綻びはないか、相手が張っている罠はないか慎重に見るようにしていました。

この癖は個人的なことにも通用すると思います。自分が好調な時は心をひきしめ、落ち込んだ時は意識して自分を鼓舞することで、メンタルも一定に保つことができるのではないでしょうか。

著者紹介

古田敦也(ふるたあつや)

野球評論家

1965年、兵庫県生まれ。元プロ野球捕手、現・野球評論家。立命館大学卒業後、トヨタ自動車 に入社。日本代表としてソウルオリンピック銀 メダル獲得に貢献する。1989年ドラフト2位でヤ クルトスワローズ(現・東京ヤクルトスワローズ) に入団。ルーキーイヤーからゴールデングラブ 賞を獲得(計10度)、翌年には首位打者に輝く など、攻守両面にわたって活躍。「プロ野球の 頭脳」として5度のリーグ優勝、4度の日本一 にチームを導く。また日本プロ野球選手会会 長としてプロ野球再編問題に積極的に発言 し、注目を集める。2005年には2,000本安打を 達成。2006年シーズンからは29年ぶりのプレイ ングマネージャー(選手兼任監督)に就任し話 題に。2007年引退。シーズンMVP2度、日本シリ ーズMVP2度、ベストナイン9度、正力松太郎 賞1度。通算およびシーズン盗塁阻止率の日本 記録ももつ。おもな著書に『フルタの方程式』(朝日新聞出 版)『古田のブログ』(アスキー)、『「優柔決断」のすすめ』(PHP新書)などがある。

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