無趣味に悩んでいる大人へ~成毛眞流「遊び」のすすめ
2016年09月08日 公開 2024年12月16日 更新
できる大人は遊んでいる!
人間は、最初はどんなことについても初心者だ。人間は、あらゆることを初体験してから経験者となっていく。経験すれば、以前より高い成果を自分も周りも求めるようになる。何についてもそのように、人間と世の中はできている。
であるから、初心者こそが最強だ。
以前よりそれが下手になることは絶対にないし、ひたすら上手くなるしかないスタート地点にいるのが初心者だからだ。これまでやったことのない遊びがたくさんあるという人は、それをラッキーに思ったほうがいいかもしれない。未体験のことを多く持っている人は、これから数多くの未知の扉を開いていける。大抵の分野に先駆者がいることは、あまり気にしなくていい。所詮は遊びなのだから、自分のペースで楽しめばいいのである。
私の知り合いに、子どもの頃からあまり映画を観てこなかったという人がいる。友人たちが映画の話を始めると、まったく話についていけず、困っていたそうだ。ところが、その友人のうちの一人に「ということは、まだまだこれからたくさんの名作を初めて観る喜びを味わえるということだね」と言われ、目からウロコが落ちたという。
遊びには、続けているからこその楽しみがあるのは確かだ。しかし、初心者には初心者の楽しみ方がある。何も知らない子どものように素直に「すごい」とか「びっくりした」とか「これは好きじゃない」と直感的に言えるのは、初心者の強みである。
だから、多くの人がすでに経験している遊びを今から始めることを、ためらう理由はどこにもない。やってみたいと思ったら、その気持ちに素直になってやってみればいいのである。
グランマ・モーゼスというアメリカの女流画家をご存じだろうか。彼女は101歳で亡くなるまでに約1600点の作品を残したが、絵を描き始めたのは75歳を過ぎてから。リウマチが悪化し、それまで趣味にしていた刺繡をするのが難しくなって、油絵に転じたのだ。
描き始めて3年経ったところで作品がコレクターの目に留まり、あれよあれよという間に有名画家となった。彼女は短期間で上達しようとも、絵で稼ごうとも思っていなかっただろう。しかし、好きだった刺繡をあきらめて涙に暮れ続けるのではなく、初心者だった絵に何の抵抗もなく取り組んだことで、数奇な人生を手に入れた。
ここで大事なのは、彼女が画家として成功を収めたということではない。新たな一歩を踏み出すことを、ためらわなかったということだ。