Voice Books 編集者の読書日記
2011年09月23日 公開 2022年09月29日 更新
『太平洋戦争 最後の証言 第一部 零戦・特攻編』
門田隆将 著
小学館/1,785円(税込)
あの大東亜戦争を実際に戦った末端の兵士たちも、いまや90歳前後。本書は、そのような生き残りの兵士たちの貴重な証言を丹念に積み重ねた一冊である。 南京攻撃から真珠湾、ミッドウェー海戦、ガダルカナルまでを戦い続けた猛者から、学徒出陣して何度も特攻に出撃した者、あるいは敵艦に突入しながらも九死に一生を得た航空兵まで、想像を超える壮絶な体験の数々が採録されていることに驚かされる。そして、「現場」の兵士たちの目線でみるからこそ、軍指導層の驕りや怠慢、無責任が強烈な印象として際立つ。 特攻も、従来の指揮官クラスの体験談では、とかく美談としてのみ語られがちであった。だが、「現場」の兵士たちが、苦悩と怒りと悟りがないまぜになった精神状況のなかで、いかに自らの宿命を受け入れていったかを知ると、万感の想いが込み上げてくる。長く読み継がれるべき「真実の記録」である。(T・K)
『為替占領』
岩本沙弓 著ヒカルランド/1,680円(税込)
誰もが日本売りで円安になると思った東日本大震災直後、なぜ為替は急激な円高に振れたのか。その後の協調介入は、どうしてあれだけ素早く行なわれたのか。ドル/円が市場最安値に迫り、通貨に関する関心が一気に高まるいま、ミルトン・フリードマンが理想に掲げ、ニクソン・ショックから始まった固定変動相場制自体を、本書は「罠だ」と喝破する。 そこで語られるのは、「現状は円高ではない」「円高で企業が困っているという大きなまやかし」「日本国債は暴落できない!」「日本に次のバブルが迫っている!?」など、まさに目から鱗の指摘だ。その一つひとつが緻密なデータに裏打ちされているさまは、著者ならではの手際といえるだろう。 はたして今後、「最強通貨」ともいわれる日本円はどうなるか。「日本の資産喪失シナリオ」までを描ききった本書が個人に、そして企業に与えてくれる示唆は大きい。(T・F)
『特攻の真意』
神立尚紀 著文藝春秋/1,890円(税込)
「特攻の生みの親」と称される旧海軍の大西長官。最後まで徹底抗戦を呼びかけながら、終戦後、責任をとり自刃。その遺書には、世界平和を願う言葉が綴られていた。はたして、彼の真意はどこにあったのか――。戦後の日本人が特攻を犬死になどということは、決して許されない。それと同時に、永遠の平和を願うことも、また英霊の思いに報いることになる。読後、自然と涙が流れた。(T・N)
『教養としてのゲーム史』
多根清史 著筑摩書房/777円(税込)
インベーダー、スーパーマリオ、ドラクエ、ラブプラス......数々の名作は「発想力」や「創造性」に溢れている。とくに、本書が中心的に扱う1980~90年代は、ハードウェアのポテンシャルがそれほど高くなく、ソフトウェアの創意工夫こそがものをいう時代であった。名作ゲームの歴史は「発想の進化」の歴史でもあり、現代のデジタル社会を生き抜く際にも、大いに参考になる。(E・T)
『ラーメン屋バカ一代』
内海啓比己&鈴木靖人 著幻冬舎/1,050円(税込)
経営の成功談は世に数多あれど、失敗談というのはなかなか語られない。本書は、ラーメン屋経営の失敗経験なら誰にも負けないと豪語する著者らによる、失敗談だけを集めた物語。従業員の失敗、店長の失敗......なかには信じられないほど程度の低いものもあるが、それが経営の盲点だとわかる。イラストとともに語られる五十五編の話のインパクトは強烈だ。(M・T)