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とつぜん会話を襲う「沈黙」。この小悪魔をどうやって撃退すればいい?

野口敏(グッドコミュニケーション代表取締役)

2018年02月06日 公開 2022年06月14日 更新

とつぜん会話を襲う「沈黙」。この小悪魔をどうやって撃退すればいい?


 

あなたをそそのかす、沈黙のワナ

会話中にやって来る小悪魔。沈黙。多くの人はこのいたずら者の仕打ちに耐えられない。もがき、冷や汗をかき、そこから逃れるためにどうでもいいことを口走る。そして人生をピンチにおとしいれる失敗を犯すのも、この小悪魔のなせるわざなのか。

ある男性は、アラフォーの女性先輩との会話中、ふと訪れた沈黙に耐えられず脳裏をよぎった質問を吟味もせずに口から出してしまった。
「先輩、どうして結婚しないのですか?」
ああ、どうせなら沈黙のままでいればよかったのに。そのあとの気まずさは、沈黙の比ではなかったことは言うまでもない。

別の男性は自分の妻と同い年の女性と会話中、沈黙に耐えかねて
「うちの嫁さんがゴルフなんかはじめて。あの歳で」と口走り、
「あら、奥さん、私と同い歳じゃなかった?」との詰問に、
「はあ、いえ、あれ、あのう年配っていう意味でいいました」
「年配って、フォローになってないわよ!」
沈黙に浸っているべきでした、あなたも。

沈黙は悪いこと。いつからそんな決まりが生まれたのか。歴史の本を紐解いても、そんな資料はどこにも載ってはいません。そうです、沈黙は悪いことではありません。それが証拠に、家族や長年付き合った友人、恋人とならば黙ったままでお互いに好きなことをしていられるでしょう。

沈黙の小悪魔の作戦は、
「沈黙があると、話が下手だと思われるぞ」
「嫌われるぞ」
とあなたをそそのかすことにあります。その作戦にまんまとのっかった人が、焦って恐い顔になったり、いらぬことを言ってしまったりするのです。

そもそも沈黙とは、たまたま話すことがなくなったわずかなひと時。それはそれでのんびり過ごしていいはずなのに、人間関係にゆとりを失った人々は沈黙の小悪魔のささやきに負けて、「沈黙は嫌われる原因」と誤解しジタバタしてしまうのです。
 

沈黙は、本当に悪いことなのか?

コミュニケーションの専門家としてここは力を込めてお伝えしましょう。

沈黙は悪いことではありません。安心してください。沈黙で、あなたが相手から嫌われることはないのです。

「でも」とみなさんはおっしゃるでしょう。

「話に詰まると、とっても気まずいですよ」とも言うでしょう。

まず、あの気まずさは沈黙から生まれるのではないことを強く言っておきましょう。

あの気まずさは、沈黙は悪いことと誤解して互いが、
「嫌われる」
「会話が下手だと思われる」
「相手から責められる」
と、自分を責めることから生まれています。あなたが相手から責められているのではと思うとき、相手もあなたから責められているのではと心配しているのです。

あのときのあなたの表情を想像してみましょう。

視線は相手から外れ、顔は強張っている。無表情の人もいるでしょう。その表情を見て、相手はあなたから責められているように感じてしまうのです。

話に詰まったときにまずしなければいけないのは、ゆっくりすることです。それを悪いことと思わないこと。相手をゆっくり見ることもいいでしょう。視線を外に向けて穏やかにしているのもいいです。

「こういうのって気まずいですよね」
と見つめ合って言えたら、それだけでリラックスできるでしょう。大事なのは会話をすることではなく、

「話をしていなくても大丈夫なんだ」
と相手に思ってもらえることです。

沈黙のときに、あなたが相手に送るメッセージは、
「会話していなくても、私たちは大丈夫。私は慌ててはいませんよ。でも、あなたへの気づかいは忘れませんから」
と態度で伝えることです。

具体的に言うと、ときどき目があって、少しほほえんで、ゆっくりしていること。そうすることで、
「気持ちは、とぎれていませんよ」
「あなたとの、この時間を楽しんでいます」
と相手に伝わります。

これで相手は安心し、緊張を解くことができます。一緒にいて疲れない人とはこういう人を指します。話をしていなくても許しあえる雰囲気をかもし出している人です。

反対に沈黙を恐れて、早口でしゃべりまくる人は疲れる人です。あなたが目指すのはもちろん前者。

沈黙に襲われたら、まずは、「会話をしていなくても大丈夫。気持ちはとぎれていませんよ」
という気持ちが相手に伝わるようにしましょう。
 

※本記事は、野口敏著『マジで会話が苦手でも、「楽しい人」になれる本』(PHP文庫)より、一部を抜粋編集したものです。

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