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2045年、AIでなくなる仕事より、新たに生まれる仕事を考えてみる

2018年02月06日 公開

藤和彦(経済産業研究所上席研究員)

ユーチューバ―
 

AIで仕事がなくなるという不安

   人工知能(AI)の導入が飛躍的に進むとされる昨今、「仕事の大半が将来失われてしまうのではないか」という不安が世界的に広がりつつある。

   生産人口は今後急速に減少する日本(「2060年に4418万人まで減少する」との予測がある)では「人手不足の状態が緩和されることからむしろ幸いである」との論調が多いが、はたしてそうだろうか。

   現在のAIは限られた領域(例えば将棋・運転など)で能力を発揮するもの(特化型AI)だが、2030年頃にはあらゆる領域で能力を発揮するAI(汎用AI)が実現するとの予測が強まっている。汎用AIはマルチタスクをこなすためOSさえあれば良い(「意識」を持つ必要はない)ので、現在の技術の延長上でも開発は可能であるということがわかってきたからだ。

   汎用AIは特化型AIに比べて格段のコスト低下につながる(かつてのワープロ専用機がWindowsのワードに駆逐されたことを想起せよ)ため、その導入の範囲やペースが桁違いとなることは間違いない。そうなれば話は全く違ってくる。

   「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」の著者である井上智洋駒澤大学准教授は「汎用AIは2045年にかなり普及しており、残っている雇用分野は1)クリエイテイブ系2)マネジメント系3)ホスピタリテイ系に限られ、就業者数は約1000万人になる」と予測している。生産能力人口が減少するとは言え、30年後の日本での雇用総数が全人口の1割になってしまったら大変なことになる。
 

AI時代に生まれる新たな仕事とは?

   AI導入により消滅する職業などの分析がさかんだが、汎用AI時代到来後に生まれる新たな仕事について考えている人はほとんどいない。

  筆者が所属する経済産業研究所では「『人と人のコミュケーションを要する職』の雇用が増加する」と予測している。人と人のコミュニケーションを要する職として対人サービスや医療・介護従事者などが既に存在しているが、具体的にどのような仕事が新しく生まれるのだろうか。

   AI研究者の間では「人間と何か」という議論がさかんになっている。「人工知能の哲学」の著者である松田雄馬は「現在のAIは予期せぬ環境への適応力がないが、人間は環境の変化に適応できるように自らの知能を進化させた」と指摘する。

   人間は身体各部から得られる情報をもとに「意味」を見出すことで想定外の事態に対応できるようになったが、汎用性を有するようになってもAIにはできない芸当である。このことから意味を求める人間をモチべートすることはAIにはできないことがわかる。

   AI将棋の申し子と言える藤井聡太が「今までのプロ棋士は『将棋が強い』というのが一番の価値だったが、今後人間同士の将棋はAIでは表現できない『人間ドラマ』という醍醐味をファンに示すことが大事になる」と述べているのは興味深い。

   情報革命の進展により仕事が細分化されたことでサラリーマンの仕事に生きがいを見つけることが難しくなった現在の若者は、衣食住よりも快感を求める傾向が強く(団子より花)、従来の発想では「遊び」としか思えない活動で生活し始めている。

   マイケル・オズボーン・オクスフォード大学准教授は「2011年度に米国の小学校に入学した子供達の65%は大学卒業時に現在存在していない職業に就くだろう」と予測しているが、ユーチューバーがその典型ではないだろうか。

  ソニー生命保険が2017年4月に実施したアンケートで男子中学生が将来なりたい職業の第3位に「ユーチューバーなど動画投稿者(17%)」がランクインしたが、ユーチューバー達は面白い企画(歌や踊り、創作料理、メイク術など)を考えて映像作品を発信し、視聴者数をマネタイズして生活の糧にしている。

   米国では2015年10代の若者に対して「セレブとは誰か」とのアンケートが実施されたが、トップ10のうちトップ5がユーチューバーとなった。日本でもカリスマ・ユーチューバーは当たり前の存在になりつつある。

   誰でもライブ放送ができるアプリ「SHOWROOM」も大人気である。現在の日本は空前の地下アイドルブームでもある。全国で活動する地下アイドルは5000人を超えると言われているが、スマホの普及でかつて憧れの存在だったアイドルが「手に届く」目標になった。

   彼女たちは個人の努力があまり通用しない世界で運やチャンスを求めて活動を続けているが、限られたファンをつなぎ止めるために「人付き合い」が大事な仕事となっており、憧れの対象というよりも癒やしの対象になってきている。

   2017年の流行語大賞は「インスタ映え」だったが、かつては「特別なイベントの記録」だった写真や動画は今や「感情や状況を共有するコミュニケーションの道具」となりつつある。「日常の中の見過ごされがちな楽しさや美しさをすくいとる」という行為が急速に拡大した。微細な変化を敏感に察知できる感性がますます重要になっている。

   情報革命の結果、ツイッターやフェイスブックなどのプラットフォームには専門家ではない一般人の手による写真や絵が膨大に流通しており、民主的かつ巨大なコンテンツ鑑賞空間がネットに広がり、あらゆるコンテンツが万人によって選び取られシェアされるようになった。自分の曖昧な気持ちを曖昧のままに画像や動画などで伝えることができるようになり、新しいことはすべて自己表現の手段になるというのがSNS時代の特徴だ。 アンデイ・ウォーホールの「誰もが15分間は有名になれる時代」が現実化したと言えるが、若者達の行動を新たな芸術活動として捉えられるのではないだろうか。

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AIは音楽、絵画など、芸術分野にも進出 >

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