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「会議が長くて多い会社」なのに"残業がゼロ"なワケ

吉越浩一郎(元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長)

2012年01月17日 公開 2024年12月16日 更新

「会議が長くて多い会社」なのに"残業がゼロ"なワケ

ワークライフバランスの重要性が叫ばれて久しいが、あいかわらず日本の会社は残業天国。このままでは社員はますます疲弊し、企業も衰退していくばかりです。

「早朝会議」「がんばるタイム」といったユニークな取り組みで、全社残業ゼロ&19期連続増収増益を達成した元トリンプ社長吉越浩一郎氏が、残業削減と成果向上を両立させる極意を伝授します。

※本稿は、吉越浩一郎著『君はまだ残業しているのか』(PHP文庫)の一部抜粋・編集したものです。

 

 会議こそ、残業をなくすための大きな「しくみ」

会議を大切にしてきた本当の理由。

「和をもって貴しとなす」という国民性からか、昔から会議が多いのが日本の会社の特徴でした。ところが、最近は「それこそが無駄の象徴である」といわんばかりに、どこの会社も会議を目の敵にしているようにみえます。

なかには、会議の時間を短縮するために、参加者の椅子を取り払って立ったまま行う、というところまで出てきたそうですが、そうまでしなければならないほど、会議というのは会社にとって必要悪と思われるものなのでしょうか。

そんなことは絶対にありません。それどころか、昔も今も、会社組織を健全に運営していくために会議ほど重要で役に立つものはほかにない、と私は思っています。

もし、会議なんか役に立たないというのなら、それは役に立たない会議をやっていることが問題なのであって、会議そのものが必要ない、ということでは決してないはずです。

私は社長をしていたときに、朝8時半から始める早朝会議というものをずっとやり続けていました。

早朝会議では朝8時半からの1時間で40から50くらいの議題を片づけます。1つの議題にかける時間はかかっても2分くらい。その速さが話題を呼び、マスコミから多くの取材を受け、見学者もいらっしゃいました。

早朝会議はその「時間帯」や「議題が片づく速さ」の部分が注目されましたが、この会議こそ、残業をなくすための、大きな「しくみ」だったのです。

会議と残業、一見しただけではあまり関係ないように思われますよね。では、もう一度立ち返って、会議の目的を考えてみましょう

簡単にいえば、会社の間題を顕在化し、会社にとって最適な解決策を発見して実行する、というのが会議の目的です。

だから、「ただなんとなく集まって」「そこで初めて議題を聞き」「それについて自分の知っている知識や情報に基づいた意見をああでもないこうでもないといい合って」「挙句の果てに多数決でものごとを決める」というようなものは、決して会議とはいいません。

 私がこういうと、「それなら、会議なんか開かずに決定事項だけをメールで送信すれば、そのほうがよっぽど効率的じゃないか」と反論する人がいますが、それも間違っています。会議には、情報の共有化という重要な役目もあるからです。

単に「結論はAだ」と伝えるだけでは、情報共有はできません。

「この問題に対しA、B、C、D、E という解決策が出され、こういう議論を経てAという結論に至った」という、そこに行き着くまでのプロセスを同じ場で共有することで、ようやく自分もその決定に参加した、という意識が生まれるのです。情報共有にはこの「プロセスの共有」が不可欠なのです。

 あなた自身も考えてみてください。

上司から「こうやれ」という結論だけを伝えられて、すぐにそのとおり動きますか。仕事だから、と無理やりでもやるでしょうが、本当にこれでいいのか、という疑問や不安がわいてきてモチベーションは高まらないでしょう。

また、「どうせ自分が決めたことじゃないし」と感じていることを、最後まで責任をもってやり遂げようとも思いにくいですよね。

でも、「なぜそうしなければならないのか」という経緯を最初から理解し、なおかつ「その決定に自分も参加している」という自覚があれば、すぐに動き出すことができるはずです。そう、結論だけを与えられたときとは、初速が全然違うのです。

 また、議論がなかなかまとまらなかったり、決定事項に対してあとから不満が噴出したりするのは、同じ問題を考えていながら、その問題を考える各人の情報が偏っているからにほかなりません。裏を返すと、会議を通じて参加者全員に共通の情報が行き渡っているなら、結論は自ずと一致するはずなのです。

 「これをやるぞ」と決まったら、社員全員がいっせいに同じ方向を目指し全速力で走り出す。仕事の成功・失敗はまさにこれができるかにかかっています。そして、それを可能にする唯一の手段が会議、というわけです。

仕事の効率化のために会議が必要不可欠なものだ、ということが少しおわかりいただけたでしょうか。

 

会議の効率は「準備」で決まる

講演などで、「早朝会議では1つの議題にかける時間はせいぜい2分」という話をすると、たいてい、「ウチではとても不可能です」という反応が返ってきます。

私が社長をしていたとき、早朝会議には数百人の見学者がいらっしゃいました。でも、ほとんどの人が「自分の会社ではできっこない」と肩を落として帰っていかれました。

 それまでは1つのことを決めるのに何時間も議論していた人と組織が、いきなり2分で結論を出せ、といわれたところでできるわけがありません。2分で終わらせるためには、それが可能なように会議のスタイルも、参加者の会議に臨む姿勢も変えていかなければならないのです。

私は、天才ではありませんから「天性の勘」で重要な経営判断を下すなどということはできません。2分という短い時間で結論を出す、しかもその結論が会社にとって最良のものであるためには、その準備段階に秘訣があるのです。

 まず、案件ごとに担当者を決め、「完璧なたたき台」を準備してくるよう命じます。といっても、それはパワーポイントで立派なプレゼン資料を作れ、という意味ではありません。

社内向けの会議に時間をかけて見栄えのいい資料を作るなどは愚の骨頂、そんな時間があれば本来の業務に専念したほうがいいに決まっています。社内向けの資料なんて、意味さえわかればいいのです。

 私のいう「完璧なたたき台」とは、現状はどうなっているのか、何が問題なのか、どう対処すべきなのか、それにはどれくらいの時間や費用がかかるのか……、そういうことを担当者が会議に先立ち整理して解決策をまとめてくる、ということです。

 「なんだ、そんなことか」といわれるかもしれません。でも、これができていない会議がとても多いのです。

会議は発表会でもなければ、わかりきったことを確認するために行うものでもありません。完璧なたたき台さえ用意されていれば、すぐに全員が必要な情報を共有して議論に入れる、それも、より本質に近いところに入れるじゃないですか。

 結論は担当者がたたき台として用意してくる。会議はそれを いいかどうか判断するだけの場なのです。

最終的な判断を下すのに2分あれば十分、というのはこういうことなのです。

では、情報が足りなかったり、質問に対して担当者が理路整然と答えることができなかったりしたらどうするか。それは課題に対する詰めがまだ甘い、ということですから、そんな状態で長々と議論をしても仕方ありません。

そういう場合は足りない部分を指摘して、さらに「誰が」「なにを」「いつまでに」ということをみんなの前で明確にしたうえで、さっさと担当者に差し戻します。

だから、この場合もやっぱり終わるまでに2分もかかりません。そして担当者は、指摘されたところを修正して、次の会議で再び報告するのです。

 差し戻された場合には、私の指示に「できるだけ早く」や「わかり次第」はありません。原則は「明日まで」。つまり翌日の早朝会議までに与えられた宿題を片づけなければならない。いわれたほうは今日やる仕事が「どーん」と増えるわけです。

しかも、私は残業を許していませんでしたから、就業時間内に通常業務と明日の会議の準備を両方やらなければならない。そういうものすごい負荷とプレッシャーが自分に振りかかってくる。 それが嫌なので、誰もが万全の準備で会議に臨むようになるわけです。

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「長くて多い」のがよい会議

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