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「温故一新」の志で絆を深め、本物の味を追求し続ける~土井志ば漬本舗

対談:土井健資 × 鈴鹿可奈子

2018年03月27日 公開 2018年03月27日 更新

「温故一新」の志で絆を深め、本物の味を追求し続ける~土井志ば漬本舗

京都企業が明かす「うちの経営哲学」

京漬物のなかでも、大原名産のしば漬けは、赤紫蘇の香り高い風味と独特の酸味が食欲をそそり、人々に愛される。その大原伝統の味を究め、〝本物〟を追求し続けているのが、百年以上続く老舗・土井志ば漬本舗だ。直営の食事処では新たなスタイルによる“土井らしさ”を提案し、好評を博している。若くして5代目社長を継ぎ、高い目標に挑戦し続けてきた土井健資社長に、鈴鹿可奈子氏が経営哲学をうかがった。

構成:森末祐二、写真撮影:白岩貞昭

土井健資(どい・けんすけ)
株式会社 土井志ば漬本舗代表取締役社長

1963年京都市生まれ。1986年京都学園大学経営学部卒業後、土井志ば漬本舗に入社。約3年間の日本橋三越勤務を経て、1991年取締役営業本部次長に就任。代表取締役専務、代表取締役副社長を経て、創業100年を迎えた2001年に代表取締役社長に就任。社団法人京都青年会議所理事長(2001年度)、社団法人京都府物産協会理事、京都市観光大使などの要職を歴任。

聞き手:鈴鹿可奈子(すずか・かなこ) 
株式会社聖護院八ッ橋総本店専務取締役

京都市生まれ。京都大学経済学部卒業。在学中にカリフォルニア大学サンディエゴ校エクステンションに留学。信用調査会社勤務を経て、2006年に聖護院八ッ橋総本店に入社。1689(元禄2)年創業の老舗の味を守りながら、新ブランド「nikiniki」(ニキニキ)を立ち上げるなど、従来の八ッ橋の概念を超えた商品づくりにチャレンジしている。
              

“らしさ”を追求した直営の食事処「竈炊き立てごはん土井」

鈴鹿 御社では商品づくりとその販売だけでなく、大原の本店と祇園、京都駅八条口にお食事処の「竈炊き立てごはん土井」をオープンされていて、非常に人気ですね。私もよく利用させていただいています。こちらはどのようなお考えで始められたのですか。

土井 元々、創業者の曾祖父が昭和初期に大原の店の軒先でお茶漬けを出していたことから、3代目社長の父がそれを再現しようと、平成元(1989)年に「漬物茶屋花ぢり」というお店を開きました。これを平成25(2013)年にリニューアルしたのが、現在の「竈炊き立てごはん土井」です。
父が始めた時は、あれもこれもと理想を求めるがゆえ、なかなかうまくいかないところもありました。ですから、リニューアルにあたっては、「炊き立てのごはんとお漬物を美味しく召し上がっていただく」というコンセプトを明確に打ち出しました。メニューもある程度絞り込むことでスピードアップし、ありがたいことに大変ご好評をいただいています。「漬ける」という技術を応用して、西京漬けを看板商品に加えるなど、“土井らしさ”をしっかりと出せているのではないかと思っております。

鈴鹿 お漬物の天ぷらも、土井さんらしい逸品ですね。それに炊き立てごはんとお漬物、おばんざいも食べ放題で、御社の味を心行くまで堪能できます。

土井 そう思っていただけると嬉しいですね。少子高齢化が進むにつれて漬物を食べる人口も着実に減っていくので、「若い人たちに漬物をどうやって食べていただくか」というのが、これからの一つの大きなテーマです。そのため、「竈炊き立てごはん土井」を通じて食べ方のご提案をしていきたいと思い、常に改良して新しい商品をお出ししています。店舗でお客様が喜んで食べておられる姿を実際に目にすると、本当に嬉しくなりますね。
お客様の反応を直に感じて、さらに商品に手を加え、土井の味を究めていく。その意味で、「竈炊き立てごはん土井」はアンテナショップとしてもしっかり機能していると思います。
新しい味の追求という意味では、鈴鹿さんも「nikiniki」で素晴らしい挑戦をされていますね。

鈴鹿 私どもも、「伝統のある八ッ橋をこれからも多くの人に食べていただくにはどうすればいいか。どうすれば喜んでいただけるか」というテーマで商品づくりに取り組んでいます。お漬物業界でも和菓子業界でも、同じ課題に直面しているということですね。

土井 新しい商品や事業に挑戦するにあたっては、自分たちが歩んできたストーリー性をしっかり持たせて、“らしさ”のあるコンセプトを軸に据えることが極めて重要です。逆にそれさえできていれば、どんな新奇なものでも、どんどん取り入れていったらいいと思っています。

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