日本有数の消費量! 京都人はパンを深く愛する
2018年06月06日 公開 2019年03月20日 更新
京の町にパン屋さんがあふれる理由は諸説あるが
全都道府県で京都はひとり当たりのパンの消費量一、二を争うといいます。
その永遠のライバルである兵庫(神戸)ならいざしらず、京都にパンのイメージを持っている方はどのくらいいらっしゃるのか。
たしかに、京都の街を歩けば、しばしばパン屋さん。あたらしもん好きの一面も持つこの都の人々は、昔からパンに親しんでいたようです。
喫茶店が多いとされる理由と同じく、自営業の人が多いから、手軽に食べられるパンが重宝されるとの説もあるみたい。
ともかく、おいしいパンは、うれしいもんです。今、思いつくまま、羅列します。
学生時代から好きな、ボンボランテ、フリップアップ、今はなきhohoemi(のキャラメルラスクは、ひつじドーナツに現存)。カフェコチの、オレンジレーズンのパンのフレンチトーストが好き。二号店アネではクロックムッシュをいただきます。
柳月堂ならくるみパン。ある夜、閉店間際の厨房でおじいさんがヴァイオリンを弾いていたの、あれ夢だったのか、なんやったんやろう。
予約でほぼ売り切れるという(予約したといって分けてくれた友達は、どーんと一斤買っていた)ベイカリー白川の食パンは、白くてきめ細かくて美しい。
末富(すえとみ)のカフェのあんぱんは、餡が主役。高貴なあんぱん。全粒粉好きの身としては、パンスケープは外せない。クロワッサンも全粒粉で、新しい境地。
京都三大製パン所であるところの、まるき、大正、天狗堂海野。
ハムロールやカレーパン、クリームパン。どれもなつかしい、近所にあるとうれしいパン屋さん。京都のそこここにある街のパン屋さん志津屋は、看板商品カルネとホワイトキャラメルロールを思い出したように食べたくなります。
そして外すことのできないル・プチ・メック。クロワッサンもサンドイッチもハード系もデニッシュ系もおかずパンもおやつパンも食べたい。元祖・今出川の赤メック、烏丸御池の黒メック、大丸地下のプチメック、もうすぐできるという新しいお店は何メックになるんでしょう。
京都では"サンライズ"がメロンパン?
まだ行けていないけれど、訪れてみたいパン屋さんも増えていきます。
開店当初、不定休で幻のパン屋と化し、今は人気で売り切れ次第終了のために幻のように感じられる、鞍馬口のチップルソン。週に二日、夜にだけオープンするMAIPAN。水曜と第一土曜のみ営業、しかも午後三時半には閉店というジェムルブルー。難易度が高い。
それから、レストランで食べるパン。それだけで主役になるようなパンもいいけれど、意外と印象に残るのはお料理の引き立て役に徹するパンだったりします。
かつて堀川今出川の南西角にあったブラッスリー、小屋。モロッコやフランス、タイやウイグルなど多国籍料理のエスカピ。パンがおいしければ料理もおいしいのは言わずもがなです。
パンの思い出。毎月一回、ある会を一年ほど開催していたことがありました。メロンパンならいろんなお店のメロンパンを買い集めて食べる、という会。クリームパン、クロワッサン、カレーパン、食パン、あんぱんなどオーソドックスなパンを十二種類十二か月。
一回あたりの個数は五〜八個くらい、三人で分けて食べるのでものすごく多いというわけではないのだけれど、バター、クリーム、あなどるべからず。楽しくも(おなかが)苦しいパンの会でした。
メロンパンのことを京都(関西?)ではサンライズとも呼びます。ラグビーボールのような両錐型(りょうすいけい)で白餡の入ったメロンパンがあるからでしょうか。
サンライズは幼少期の好物で、自分の顔より大きい円いパンに果敢にかぶりつく写真が多数残されております。
今は亡き大正生まれの祖母の話によると、パンのことを人々は昔「餡なし饅頭」と呼んでいて、したがってあんぱんは「餡入り餡なし饅頭」だったのだ、とのこと。
本当なのか、ごく一部での呼び名だったのか、それとも祖母のたわむれだったのでしょうか。
本記事はミシマ社刊『京をあつめて』(丹所千佳著)より一部抜粋・編集したものです。