ルーチン化で少しでもストレスのない生活を
自律神経の乱れが、現代人の不調の原因になっていると話すのは、自律神経研究の第一人者である小林弘幸氏。では、自律神経とは具体的にどんな働きをしており、どうすればその乱れを防げるのだろうか。自律神経の仕組みと、乱れを防ぐための生活習慣についてうかがった。(取材・構成=林加愛)
※本稿は『THE21』2018年8月号より一部抜粋・編集したものです
そもそも、「自律神経」って何?
昨今、ビジネスパーソンの方々様々な体調不良に悩まされていると聞きます。だるさや疲労感、食欲不振や胃もたれ、うつなどメンタル面のトラブルも。その原因をたどると、ほとんどが「自律神経の乱れ」に行きつきます。
そもそも自律神経とは、どのような機能を果たすものなのでしょうか。まずはそこからご説明しましょう。
脳はご存じの通り、人体の司令塔。脳からは中枢神経という神経の太い束が、背骨に沿って腰部まで長く伸びています。そこから細かく枝分かれするのが末梢神経。全身に細く張り巡らされる末梢神経には、体性神経と自律神経の二種類があります。体性神経が「筋肉を動かす」など、私たちがコントロールできる範囲の働きを司るのに対し、自律神経が司るのは体温調節や血流量など、意志とは関係なく働く部分です。自律神経はこれらを随時調整し、身体を一定のコンディションに保ってくれているのです。
「交感神経優位」には大きなリスクがある!
では、自律神経が「乱れる」とはどのような状態でしょうか。
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。両者は「日内変動」というリズムに沿って、朝から日中は交感神経優位、夕方から夜中は副交感神経優位、と交替で活動します。交感神経が働くと血管が収縮して血圧や心拍数がアップ、胃腸の活動量は低くなる「緊張モード」に。副交感神経が働くときはその逆のリラックスモードになります。
この両方がしっかり働いて、かつ活動量のバランスがとれていれば理想的。アクセルもブレーキもしっかり機能する車のように、快調に過ごせます。
ところが今どきのビジネスマンは、交感神経にバランスが傾いているケースが大多数。なぜなら現代人の生活は、交感神経を刺激しやすい環境だからです。街は夜でも明るく、夜遅くまでパソコンやスマホのまぶしい画面を見る人が多数。さらには仕事のストレスや、現代社会ならではの情報過多も緊張を強いてきます。結果、高血圧や胃腸の機能低下、メンタル疾患などのリスクが高まるのです。