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「ジャガイモ」を愛したマリー・アントワネットの悲劇

稲垣栄洋(植物学者)

2018年07月11日 公開 2023年01月10日 更新

バラと散った王妃

悪名高いマリー・アントワネットと、その尻に敷かれていたというルイ16世。贅沢三昧を尽くした二人は、国民の怒りを買い、ついにはフランス革命で処刑されてしまう。しかし、最近の研究では、その悪評の多くは中傷やデマであり、マリー・アントワネットは本当は国民思いの優しい人物であったと彼女を再評価する動きが見られる。

冒頭の「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」という言葉も、実際にはマリー・アントワネットの言葉ではなく、ルイ16世の叔母であるヴィクトワール内親王の言葉とされている。しかも、正確には「ブリオッシュを食べればいい」であり、現在では高価なお菓子であるブリオッシュも、当時はパンの半分の価格の食べ物だったとされている。

ルイ16世やマリー・アントワネットがどのような人物だったのか、今となってはわからない。しかし、国民を飢饉から救うために、ジャガイモの普及に尽力した人物であることは明らかである。

歴史は勝者たちによって作られる。

そして、人々を飢えから救うためにジャガイモの花を愛した王妃は、ギロチン台でバラの花びらのように散っていったのである。

(『世界史を大きく動かした植物』より一部再編集)

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