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ハーバード大学で実践されている 「聞き手の心のつかみ方」

2018年07月19日 公開

ジェイ・ハインリックス(訳:多賀谷正子)

 

オバマはなぜ聴衆の心をとらえたのか

オバマはキケロの教えを忠実に守り、自分のスピーチを、説得力のある伝統的な方法で組み立てている。

1.序論(聴衆の関心と好意を得る)

オバマは党大会のスピーチの冒頭で、まず自分の特質や人柄を設定した。「私がこのステージに立っているなんて、とても信じがたいことです」謙虚な姿勢をみせる素晴らしい作戦で、このあとの陳述にスムーズに移行できる出だしだ。

2.陳述(事実や数字を挙げる)

彼はまず自分の両親の話を語り――酪農を営んでいた父はアメリカに留学し、母は父の故郷から見ると〝地球の反対側〟にあるカンザス州で生まれ育った――自分の存在こそアメリカ的であると述べている。
「いまここにいる私は、自分の人生がアメリカという大きな物語の一部であることを知っています」と彼は言う。「国民のささやかな夢に誠実であること、それこそが、アメリカの真の特質なのです」

3.提議(両方の意見をとりあげる)

優れた演説者は、提議の段階で両方の意見を取り上げる。自分の意見を熱のこもった言葉で伝える。
相手の意見を、あからさまに非難するのはよくないだろう。相手の間違った考えに落胆している、と聞こえるように言うほうが、はるかにいい。
これがオバマのやり方だ。
「今夜、私はあなた方に言いたい。私たちにはやらなければならない仕事がたくさんあるということを」もっとはっきり言えば、「ブッシュとチェイニーが率いていた4年間のあとなので、やらなければならない仕事がたくさんある」ということだ。
提議の部分で「自分たちのほうがはるかに理性的だ」と示して、自分こそが適任だ、と暗示したわけだ。

4.立証(議論のポイントを述べる)

やらなければならない仕事がたくさんある、ということを裏付けるために、オバマは伝統的な手法を使った。
事象を羅列するという方法だ。海外に流出した仕事、アメリカを身動きのとれない状態にしている石油会社、安全という名のもとで犠牲にされる自由、〝私たちを区分けするくさび〟として使われてしまう信念、そして泥沼の戦争。

5.反論(相手を論破する)

ここで、オバマはキケロの教えから少し離れた。直接的に共和党を非難するのではなく、アメリカを分断しようとしている〝情報操作屋や中傷専門の広告屋〟を非難したのだ。
そのあと、このスピーチの一番の聞かせどころである一文を語る。ここまで彼は声を一定に保ち、理性的で早口で歯切れのいい口調で話してきた。
それがこの部分に差し掛かると、大きな声で、演壇を叩かんばかりの勢いでこう言ったのだ。
「今夜、私は彼らに言いたい。リベラルのアメリカでもなければ保守のアメリカでもない。〝アメリカ合衆国〟なのだと!」この一文は、世界中のメディアで取り上げられることになった。

6.結論(ポイントをもう一度)

素晴らしいスピーチの締めくくりには、内容の要約と聴衆に行動を呼びかけることのふたつの役割がある。
「結局のところ、これこそが選挙の目的なのです。皮肉に満ちた政治と、希望に満ちた政治、あなたならどちらに参加したいでしょうか?」(修辞的疑問文に対して党員たちが嬉々として〝希望!〟と叫ぶ)。
「ロゴス」を存分に使ったあと、オバマは「そして」という言葉を多用して、喝采の波にのっていく。彼は幸せな未来を語ることで、聴衆を行動へと駆り立てる。
「……そしてジョン・ケリーは大統領に、さらにジョン・エドワーズは副大統領に就任することでしょう。
そしてこの国は希望を取り戻し、長く続いた政治の暗闇から……」一言言うたびに聴衆が歓声を上げる。
歓声は次第に大きくなってホール全体に広がり、オバマの声が聞こえないほどになった。最後には彼が「ありがとうございました。皆さまに神の祝福がありますように」というのを、口の動きから読み取らなければならなかった。

ケリーは大統領に就任しなかったものの、オバマのスピーチは大成功だった――オバマにとっては。

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