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社会

盛岡の小さな書店が出版社の熱視線を集める理由

田口幹人

2018年07月26日 公開 2022年08月08日 更新

 

POPやパネルをつければいいわけではない

ただ、ここで忘れてはいけないのは、一人よがりにならないことです。

自分たちの満足のためにやるのではありません。あくまでもお客さまのため。したがって、「この本をお勧めするのは本当に今なのか」ということを、理解していなければいけません。

もっと言えば、店にやってくるお客さまのことを、きちんとわかっていないといけない、ということです。

ありがたいことに、本屋の世界で取り組みを紹介していただいたり、見学にお見えいただいたりする中で、さわや書店フェザン店は地方の小さな本屋なのに、少しだけ知られるようになりました。

とにかくパネルやPOPがすごい、というイメージをお持ちの方も少なくないようです。しかし、くり返しになりますが、ただパネルやPOPをつければいいわけではない、というのも僕たちの考え方です。

僕が最初に勤務した第一書店では、POPは一切つけていませんでした。一方で、向かいにあったさわや書店本店では、どんどんPOPをつけていました。

これは、優劣をつけられるようなことではないと思っています。やり方の違いなのです。どちらもその店の個性であり、訪れるお客さまの嗜好でもあると思っています。

ただ、大型店などと競合が生じてくる中で、他の本屋との差別化をより意識しなければいけない状況がありました。限られた坪数の中で、どうやって売り上げを上げていくか。

そう考えたときに浮かんだのが、POPでした。どういうことかといえば、POPがある店を選ぶのか。何もない店を選ぶのか。それを決めるのはお客さまだということです。

実はフェザン店も、入り口付近は過剰なくらいにパネルやPOPをつけてにぎやかな店頭を演出しています。そのほうがお客さまに手にとっていただくきっかけになりやすいと思っているからです。

しかし、中に入ってみると、POPがないところにはまったくありません。過剰にPOPを飾ればいい、ということではないという想いからです。

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