所属するものとアイデンティティを同一化しようとする
自己肯定感の持てない人は、自分の内側に充足の土台がないので、所属する会社や団体、出身大学などと自分自身を同一化しやすい傾向があります。所属するものに誇りを持ったり、愛情やロイヤルティを持ったりすることは、喜ばしいことですが、度を越すと、そのアイデンティティを同一化して、切り離せなくなることがあります。
その団体や会社が順調なうちはいいのですが、調子が悪くなると、自分まで調子が悪いと感じたりします。会社に誇りは持っているけど、会社は会社、自分は自分という切り離しができていないわけです。
多様な意見を受け容れられない
「自分の意見は常に正しくなければいけない」と強く思い込んでいる人は、「正しくない意見には価値がない」と思ってしまいがちになります。このため、自分の意見が正しくないということになれば、「自分には価値がない」というような極端な自己否定までしてしまいます。
「自分には価値がないと感じる場面を作りたくない」という恐れから、「自分の意見が正しいと信じたい」という気持ちも自ずと強くなります。このため、他の人が自分とは違う主張をしてきた時の受け容れの許容度が低いのが特徴です。
ひどい場合は、自分とは違う意見を出してきた人を激しく攻撃することもあります。これは、潜在意識下にある“恐れ”による攻撃反応です。人は恐れの感情が過度になると、防衛本能から、人を攻撃するようになるのです。
このように、自己肯定感の低さは、時に攻撃性となって現れ、争いの元にまでなってしまいます。争いにまで至らない場合でも、他人からの多様な意見を受け容れられず、会議や、仕事仲間との協調が必要なシーンで、対立的な言動や行動を取ってしまいがちになることもあるのです。
とはいえ、自分の意見の正当性を徹底的に信じるがゆえ、相手から出てくる反対意見を認められない場合もあります。こんな場合、自己肯定感の低い人は、その恐れの感情から、相手の意見という範疇を超えて、相手自体を否定しようとします。「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」というように、「相手の意見が憎ければ、相手まで憎い」という感じです。一方、こういう場合でも、自己肯定感をしっかり持っている人は、相手の意見と相手自身をちゃんと切り分けることができます。
自己顕示欲が強い
よくいうオラオラ系の人、肩で風切っている系の人、こういったタイプの人たちは、一見自信満々に映ります。しかし、こういった自己顕示欲が強い人たちも、自分自身をちゃんと受容できないことの欠乏感を、外からの承認をもらうことによって埋めようとしているのです。だから、オラオラやりながら、他人にアピールすることが必要なのです。
身なりがド派手だったり、やたらブランド物で身を包もうとしたりする人なども同様。一方、自己肯定感をちゃんと持っている人は、オラオラとアピールしたり、派手に演出したりする必要もないので、いたって穏やかだったり、たとえ高級なものを身にまとっていたりしても、控えめな感じの見え方だったりするのです。
自分は相手のことを分かろうとしないのに、「気持ちを分かって欲しい」と相手に期待する
自己肯定感を持てない人は、何かにつけて意識が自分ばかりに向きます。自分を守ることや、自分をアピールすることに必死で、エネルギーのほとんどを自分に費やさずにはいられないのです。だから、精神的な余裕がなく、結果、他の人のことをちゃんとおもんぱかることができません。
コミュニケーションをしていても、意識は常に自分中心で、相手のことをちゃんと理解しようとする意識が薄いことが多く、この辺りは、こういう人の傾聴力の弱さにも現れます。相手の話がちゃんと聞けないのです。
反面、コミュニケーションをしている相手に対しては、「私の気持ちをちゃんと分かって欲しい」という欲求がとても強いので、相手が自分のことをちゃんと理解してくれようとしないと、すぐ腹を立てたりします。このように、コミュニケーションにおける双方向性のアンバランスがあり、たとえ、話がとても上手くても、本質的にコミュニケーションは上手くありません。
結局、自分のことばかり考えている
自己肯定感の持てない人は、自ずと自己中心的になります。なんだかんだいって、結局自分のことばかりを考えているのです。
先ほどのように、相手のことをちゃんと分かろうとしないのに、「誰も自分のことを分かってくれない」などと言い出します。このため、人とのつき合いも表面的になりがちです。友達がたくさんいて、宴会やパーティーなどにもよく顔を出し、周りから〝社交的な人〟と見られるような人でも、実は、本当のつながりを感じる友達がいなかったりします。
さて、自己肯定感を持てない人の特徴ということで書いてきましたが、これらを読んで、もしかしたら、「多くが自分に当てはまる!」とショックを受けている方もいらっしゃるかもしれません。
でも、安心してください。1つも当てはまらない人などおそらく誰もいません。
これらは程度の問題で、大小はあれども、誰しも持っている傾向です。ただ、極端にその傾向が出ていると、その人の自己肯定感の低さが反映されているということです。
自己肯定感を持てるようになると、こうした特徴は消え去っていきます。
※本記事は、三浦将著『コーチングのプロが教える 「できる自分」を呼び覚ます一番シンプルな方法』(PHP研究所刊)より、一部を抜粋編集したものです。