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グローバル企業にあって、日本企業から消えた「社員間の共感」



2018年09月21日 公開

野中郁次郎(一橋大学名誉教授)/田村潤(元キリンビール株式会社代表取締役副社長)

 

AIと人間 将来どちらが他人の共感を勝ち取ることができるのか?

(田村)ちなみにAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)によって今後、相互主観のあり方はどう変わるでしょうか。

(野中)ますます重要になるでしょう。マイクロソフトのCEO(最高経営責任者)サティア・ナデラは共著『Hit Refresh(ヒットリフレッシュ)』(日経BP社)で、テクノロジーの波が世界を大きく変えるなかで、わたしたちがもつ共感という独自の感情がこれまで以上に重要になり、人間同士をつなぐ価値がある、と述べています。

つまり、AIやIT(情報技術)が普及する時代には、人間同士の共感がテクノロジーをしのぎ、一人ひとりが実践知を発揮する全員経営がより求められる、ということです。

(田村)たしかにAIが将来、人間のように他者と共感する能力を身につけられるとは思えません。

(野中)イノベーションの本質とは、人間同士が正面から向き合って初めて浮き出てくるものです。情報共有はIT技術やAIに任せておけばいい、という発想はしたがってナンセンスといえます。

田村さんの場合は、場の連鎖を地域で終わらせることなく、全国あるいは世界へとつなげていったという点で、まさにスパイラル運動を実践したといえます。その過程で理念やビジョンをわかりやすく言語化し、メンバーに伝えたことが大きい。何度も同じことを聞かされていくうちに、メンバーのなかで田村さんの言葉が身体化されて、具体的な行動が促されたのです。

(田村)理念やビジョンと今日の仕事とのつながりをできるだけシンプルに伝えることは大事ですね。現場が理解できる言葉で伝えないと、営業マンも動けないし、その先にいるお客様にも通じない。ただしシンプルに伝えるには、徹底して考え抜かないといけませんね。

(野中)ええ。理念を考え抜いて凝縮したかたちで言語化する作業は、ものすごく難しい。実際、グローバル企業の理念はそうとう考え抜かれています。

たとえばトヨタ自動車の豊田章男社長は、"Creating Ever-better Cars(もっといい車づくり)"というスローガンをかかげています。

経営を自動車の比喩で述べれば、スピードに応じて運転席から見える「風景」が変わるなかで、ドライバーである社員一人ひとりに「もっといい車とは何か」を熟考させ、"better"の意味を深掘りさせるという、豊田社長の志が伝わってきます。

(田村)理念によって前進するエネルギーが生まれ、お客さまとの関係も強化されます。すると、理念がまた強固になる。理念が強まれば強まるほど、ますます活動のエッジが鋭くなり、井戸を掘り下げるように、深く世界に浸透する考えが生まれてくると思います。(了)



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